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映画評

2024年の映画トップ10

今年は前半はどうかな、と思ってたけど後半になって面白いインディペンデント系の作品がいろいろ出てきたような?以下は順不同で。 「哀れなるものたち」 ランティモス作品としては「憐れみの3章」よりもこっちのほうがずっと面白かった。大人の寓話。 「マッドマックス:フュリオサ」 「デス・ロード」ほどではないとはいえ、アクション満載で満足。トム・バークがかっこええ。 「デッドプール&ウルヴァリン」 個人的に20世紀フォックスの作品でいろいろ仕事に関わった経験があるので、いまは亡きフォックスにささげるエンドクレジットに感謝。 「I SAW THE TV GLOW」 90年代のチープなTVシリーズにまつわる不条理なホラー、というのが俺の世代にはハマるのです。 「ドリーム・シナリオ」 全人類に嫌われる中年男、という設定が他人事とは思えず涙を禁じ得ない。 「THE SUBSTANCE」 往年のクローネンバーグを彷彿とさせる、エグいけど面白いホラー。 「教皇選挙」 最後のオチはちょっと余計だったかもしれないけど、選挙結果に至るまでの展開の描写が秀逸でした。 「Hundreds
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「CONCLAVE」鑑賞
映画評

「CONCLAVE」鑑賞

日本では「教皇選挙」の題名で3月に公開。その名の通りバチカンを舞台にした、新しい教皇の選出にまつわるスリラー。 比較的リベラル寄りだった(らしい)教皇がバチカンで突然崩御する。彼の死を嘆く間も無く枢機卿のローレンスは新たな教皇を選出するための選挙(コンクラーベ)の手配を仕切る役目に就く。選挙のために世界中から枢機卿たちが集まるなか、リベラル派のローレンスたちは前の教皇に批判的だった保守派の候補が新教皇に選ばれるのを阻止しようと画策するものの、自分達が推す候補にもなかなか票が集まらない。そして他の候補や、今まで存在を知られていなかった新しい枢機卿が加わることで選挙は混乱を極めていく…というあらすじ。 あまり内容ついて深く語るとネタバレになるので書かないが、保守派の候補の当選を防ぐためにローレンスたちが裏で手回しを試みて根比べ(失礼)を行う一方で、他の候補も裏工作を試み、さらには前の教皇が死の直前に何をしていたのか?という事実が暴かれていくという上質のサスペンスになっている。 実際のバチカンも内情はドロドロしているというのが世間にも漏れ伝わってきているけど、こちらも候補同士で相手の醜
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「IN A VIOLENT NATURE」鑑賞
映画評

「IN A VIOLENT NATURE」鑑賞

評判の良いカナダのスラッシャー映画。以下はネタバレ注意。 舞台はどこかの山奥。そこのキャンプ場にきていた若者たちが火の見やぐらの跡地にあったペンダントを盗んだことから、それによって封印されていた殺人鬼の怪物ジョニーが復活、母親の形見でもあるペンダントを取り返すために彼は若者たちを執拗に殺していく…というあらすじ。 手っ取り早く言えば「13日の金曜日」のパスティーシュなのだが、特徴的なのが話がジョニーの観点で進んでいくこと。ゲームで言えば「ドゥーム」のようなPOV形式ではなく、「グランド・セフト・オート」みたくジョニーを背後から眺める形で、彼が森のなかを歩き回り獲物たちに近づいていくさまを観る人は体験していく。画角はほぼ正方形で劇中は音楽が流れず、淡々とジョニーの背中を見せられる展開は人によって好みが別れるだろうけど個人的には興味深かったです。 昔の消防士のマスクを被り、材木用の鉄の鉤を使って黙々と若者たちを血祭りにあげていくジョニーは一言もセリフを話さず、水中でも行動できて銃で撃たれても死なない怪物。まあ「13日の金曜日」のジェイソン君だね。彼にまつわる伝説は他の登場人物の口から
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「THE SUBSTANCE」鑑賞
映画評

「THE SUBSTANCE」鑑賞

今年のカンヌ映画祭とかでいろいろ話題になったボディホラー。以下はネタバレ注意。 エリザベス・スパークルはハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにも星が飾られているほどの有名スターだったが、50歳になったのにつれて人気は低迷し、ホストを務めるフィットネス番組からも切られようとしていた。そんな彼女はふとしたことから「サブスタンス」と呼ばれる謎の若返りの薬のことを知り、ダメ元で自分に試してみる。すると彼女の背中を破って出てきたのは、若く美しいもう一人の自分であった。スーと名乗ることにしたその美女とエリザベスはあくまでも同一人物であり、お互いの体のバランスを保つために1週間ごとに体を入れ替えなければならない。そして美しいスーはまたたくまにハリウッドの注目の的になってスターの座を満喫するのだが、年取ったエリザベスの体に戻ることを拒否したことで両者のバランスが崩れていき…というあらすじ。 ストーリーそのものは「ジキル博士とハイド氏」や「ドリアン・グレイの肖像」みたいに古典的なもので、新しく手に入れた快楽を堪能する自分の第二人格が暴走していく内容であり、オチもなんとなく見えてしまうけれどもそれに至
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「THE PENGUIN」鑑賞
海外テレビ番組

「THE PENGUIN」鑑賞

個人的には何の思い入れも抱かなかった「ザ・バットマン」のスピンオフシリーズ。 舞台となるのは映画の出来事から1週間後のゴッサムシティ。ザ・リドラーのテロ行為によって街は深刻な被害を受け、裏社会もマフィアのボスだったカーマイン・ファルコーネが亡くなったことで混乱に陥っていた。カーマインの息子アルベルトが父親の跡を継ぎ、主人公のオズワルドも彼の下で働くことになるものの、二人きりでいる際にアルベルトに嘲笑されたことから逆上したオズワルドはアルベルトを射殺してしまう。焦った彼は死体の処分を試みるものの、アルベルトの妹でアーカム・アサイラム帰りのソフィアに疑いの目を向けられて…というあらすじ。 ここでのザ・ペンギンことオズワルドは独自のギャングのボスではなく、ファルコーネ一家に仕える中間管理職という立場。上司からは自分のシマでの麻薬ビジネスの縮小を命じられ、家に帰れば認知症の母親に叱られ、障害のある足を抱えてヨチヨチ歩きながらボスの死体を処分しようとして四苦八苦するハゲでデブのオッサンの姿は哀愁をそそるものがあるのです。オズワルドはファルコーネ一家のライバルであるマローニ一家にも顔が効くよう
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「ドリーム・シナリオ」鑑賞
映画評

「ドリーム・シナリオ」鑑賞

ニコラス・ケイジ主演の不条理コメディ。日本公開は11月。以降はネタバレ注意。 ポールは小さな大学で進化生物学を教えているしがない教授だったが、自分の娘をはじめとして他の人たちの夢のなかに彼が登場するということが話題になり、彼を夢のなかで見たという人が何百人も出てきたことで彼は一躍有名人になる。夢のなかの彼はただ突っ立って出来事を眺めているだけという役割だったが、彼の存在は宣伝に使えると考えたマーケティング会社にポールはコンタクトされる。それが自分の研究書の出版につながるかもしれないと考えた彼は会社の話を聞くことにするものの、人の夢のなかのポールがあらぬ行動をとるようになってしまい…というあらすじ。 元ネタは都市伝説の「THIS MAN」だろうし、プロデューサーとしてアリ・アスターが関わっているもののホラーの要素は殆どなくて、むしろチャーリー・カウフマンの作品のような不条理コメディのような内容になっている。自分の知らないところで勝手に人の夢のなかに登場させられて、やがて気持ち悪がられて世間一般から拒絶されるポールが不憫すぎて泣けてくるのよ。カフカ的とでもいうんだろうか。 そんな哀れ
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「シビル・ウォー アメリカ最後の日」鑑賞
映画評

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」鑑賞

アレックス・ガーランドの新作で日本では来月公開。 大規模な内戦状態に陥ったアメリカを舞台にした物語だが、なぜそういう状態になったのかの説明は劇中で殆ど行われない。大統領の任期が(強権的に?)3期目にまで入り、従来なら政治志向が異なるカリフォルニア州とテキサス州が大統領に反発して結束し、反政府軍としてワシントンDCに攻め込んでいることはセリフの端々から推測できるものの明確な説明はなし。主人公である新聞社のフォトグラファーとジャーナリストたちは大統領へのインタビューを試みようとニューヨークから遠回りしてホワイトハウスへ向かうものの、その道中でさまざまな戦時中の光景を目にすることになる、というあらすじ。 主人公たちは報道機関の関係者ということで、武器を持たず戦闘にも参加せず、あくまでも中立という立場で道中の出来事を目撃していく。彼らが遭遇する兵士や一般人たちも、政府側なのか反政府側なのかはっきりしないまま、ただ戦時下における混沌とした状態が映し出されていく。一部の地域では自警団となった市民が同じ住民をリンチしている一方で、ある町では戦火を避けて普通の日常生活を送ろうと試み、別のところでは
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「KINDS OF KINDNESS」鑑賞
映画評

「KINDS OF KINDNESS」鑑賞

日本では「憐れみの3章」の邦題で9月27日公開。以降はまあ一応ネタバレ注意。 ここ最近は「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」と監督作が次々とアカデミー賞女優を出してすっかりメインストリームの監督になった感のあるヨルゴス・ランティモスが、「籠の中の乙女」から「聖なる鹿殺し」まで一緒に脚本を書いていたエフティミス・フィリップと久々に組んで脚本を書いた(ただし執筆はずっと前から取り掛かっていたらしい)作品で、明らかに初期のランティモス作品っぽい不条理劇になっている。 邦題から分かるように3つの話から成るアンソロジー形式になっていて、最初は職場のボスに日常生活まで支配され、彼の言うことを聞かなければならない男性の話。次は無人島に漂着していた妻が奇跡的に生還するものの、以前と違う彼女の振る舞いに困惑する警察官の物語。そして最後はカルト教団に属している夫婦の話。これらにおいて、エマ・ストーンやジェシー・プレモンズ、ウィレム・デフォーにホン・チャウといった役者が話ごとに違う役を演じるという構成になっている。実は3つの話で同じ役を演じている人がいるけど、ここでは明かしません。 これらの3
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映画評

機内で観た映画2024 その1

また海外出張したので、機内で観た映画の感想をざっと。 * 「マダム・ウェブ」:評判通りのゴミ。観てる側は主人公の能力にとっくに気づいているのに、主人公がオロオロするだけで時間が過ぎていくというダメなパターンの典型。ソニーはスパイダーマンのキャラクターの切り売りをするにしても、もっと良いキャラクターやアレンジの方法はいくらでも考えつくと思うのだが。シドニー・スウィーニーは着痩せするタイプなのですね。 * 「I SAW THE TV GLOW」:逆にこっちは評判通りの傑作だった。90年代に「バッフィ」っぽいTVシリーズのファンだった少年少女が、自分たちの現実にTVシリーズの内容が侵食してきているのではないか…と感じるようになるホラー。この監督の前作「We're All Going to the World's Fair」も似たような設定だったがこっちはもっとストーリーが明確で、不気味な感触がより強調されているというか。こういうジュヴナイルホラーをさらに捻ったような内容は好物なのよね。あとジャスティス・スミスがいい役者だなというのが実感できる。 * 「THE MINISTRY OF
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「THE BIKERIDERS」鑑賞
映画評

「THE BIKERIDERS」鑑賞

日本ではそのまま「ザ・バイクライダーズ」の題で11月公開? 原作はあるのだが小説などではなく60〜70年代のバイカーギャングの姿を撮った写真集で、それをもとにジェフ・ニコルズが想像を膨らませて脚本を書いたらしい。ストーリーも極めてルーズな作りになっていて、シカゴのバイククラブで寡黙なベニーというバイカーと偶然出会ったキャシーという女性が彼とすぐさま結婚。クラブの姐さん的な存在になった彼女に、上記の写真集のカメラマンが取材するのが狂言回しとなって話が進んでいく。 そもそもこのクラブ「ヴァンダルズ」の結成の理由が、妻子もいる中年男性のジョニーがテレビでマーロン・ブランドの「乱暴者」を観てバイカーギャングに憧れたから、というもので反体制・反権力とかいったメッセージ性はゼロ。青春群像でもなくいい年した男たちが昼間から酒飲んでバイク乗って近所に迷惑かけているという、まあ個人的にはあまり共感できないキャラクターたちであった。馬鹿でかいバイクに乗ってヘルメットも被らずに道路を疾走している姿は流石にカッコ良いけどね。 ポスターではベニーを演じるオースティン・バトラーが主役並みの扱いだが、感情で動
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「MONKEY MAN」鑑賞
映画評

「MONKEY MAN」鑑賞

デヴ・パテル監督・脚本・製作・主演のアクション映画。日本は8月公開かな?以下はがっちりネタバレ注意。 舞台はインド。非合法の闘技場で猿のマスクをかぶった「モンキー」として闘っている主人公は、高級ホテルのオーナーにうまく取り入って料理人として働くことになる。森の中の村で育った彼は、悪徳政治家の手先である警察署長によって村が襲撃されて母親が殺されたため、その復讐としてホテルの秘密のクラブにやってくる警察署長を狙うのだが…というあらすじ。 なんかパテルが「最近のアクション映画は気合が足らん!」といった意気込みで携わって、最初はニール・ブロムカンプに監督を頼んだらしいけど断られたので自分で監督したらしい。低予算の環境のなか本人もいろんなところ骨折しながら撮影したそうで、よくも悪くも荒削りな出来になっているかな。寡黙な主人公の復讐劇が生々しく描かれる一方で、ストーリーの流れや撮影が必ずしも洗練されていないというか。特に「ジョン・ウィック」とか「ザ・レイド」のようにスタイリッシュでぶれのないアクションシーンで目が肥えているとちょっと物足りないと感じるかも。 ストーリーについても、主人公の動機
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「HIT MAN」鑑賞
映画評

「HIT MAN」鑑賞

リチャード・リンクレーターの新作だよ。以下はネタバレ注意。 ニューオリンズの大学で哲学を教えるゲーリー・ジョンソンは、電気技師として地元の警察をアシストするバイトもしており、ある張り込みの現場で警察の担当者が参加できなくなったことから代わりに潜入操作を実施するように命じられる。彼の任務は殺し屋に扮し、彼を雇いたい人物に会って動機を聞き出すことだった。ゲーリーは度胸とハッタリで依頼人との打ち合わせをすませ、彼の録音した会話が証拠となって依頼人は逮捕される。その手腕が評価されたゲーリーは引き続き潜入操作に関わることになり、彼自身も別の人格を演じることで今までなかった自信を持つようになるのだが、虐待する夫の殺害を相談してきた女性と恋仲になってしまい…というあらすじ。 題名からはアクションっぽい内容を連想するがそういうシーンは皆無で、もっとコメディに近い出来になっている。ジョンソンは実在した人物だそうで、実際に80年代後半に潜入捜査に関わってたらしいが、作品の時代設定は現代になっているし結構な脚色が含まれているんだろう。そもそも警察の張り込みにバイトで参加できるのか?と思うけど、驚いたのは
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「マッドマックス:フュリオサ」鑑賞
映画評

「マッドマックス:フュリオサ」鑑賞

評判通り普通に素晴らしい出来だったので、特に言うこともないのだが忘備録的に感想をざっと。 * 前日譚って各キャラクターのその後が明らかになっているなかで話が進むため、概してストーリーが予定調和的になるのが好きではないのだけど、「デス・ロード」では個性的なキャラクターたちについての説明がろくにされてなかったのが功を奏して、今回はフュリオサを含む彼らの過去を掘り下げることで「マッド・マックス」の世界を奥深いものにすることができていた。原題に「マッド・マックス・サーガ」とあるように、世界観を補填する外伝のような立ち位置ですかね。 * その反面、いきなり訳の分からないキャラクターたちがぞろぞろ出てきて、なんだこいつらは?と思った前作の衝撃が無くなっているのは仕方のないことか。 * 話を5章に分けてフュリオサの成長を描くのも、歴史の絵巻物みたい。正体がバレないままそんな長く要塞で暮らせるのか?とかツッコミいれたくなる箇所もあったが。あと4章の終わりあたりでディメンタスとの40日戦争に突入したのは話の勢いが削がれたかな。その前、空から攻めてくるオクトボスたちをジャックとともに撃破するところ
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「フェラーリ」鑑賞
映画評

「フェラーリ」鑑賞

マイケル・マン久しぶりの監督作品…というか個人的に彼の作品ってあまり観てないな。以降はいちおうネタバレ注意。 イタリアのエンツォ・フェラーリの伝記映画ではあるのだが、彼の生い立ちを若い時から描くようなことはやってなくて、いきなり彼の人生の一場面から話が始まり、そこから無理やり話に付き合わされるような作りになっている。彼に愛人がいることや、最初の息子がどうなったのかなどは明確に説明されないので、話を追って出てくる会話からいろいろ情報を組み立てていく必要があるのはちょっとしんどいかも。 いちおう彼が自動車会社の社長で資金繰りに苦しんでおり、自社の車をアピールするためにレースで勝たないといけないプレッシャーをエンツォが抱えていることは分かる。それがじゃあもっと優秀な車を開発しようね、とかレーサーを鍛えようね、といった「プロジェクトX」的な流れにならず、エンツォは周囲にイラついているだけだし奥さんに資金を無心するなど、なんか爽快感のない陰気な展開が続くのよな。 話の題材的には傑作「フォードvsフェラーリ」の相手側の物語というか前日譚にあたるのだろうけど、アダム・ドライバーがイタリアの名門
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「THE MISSION」鑑賞
映画評

「THE MISSION」鑑賞

昨年公開されたナショジオのドキュメンタリー映画。島の住民たちが外部との接触を一切拒否しているため、完全な未開の地として知られるインド洋の北センチネル島に上陸し、キリスト教の布教を試みた福音派の宣教師ジョン・アレン・チョウの物語。 チョウについては日本語のウィキペディアの記事が詳しいのでそっちを読めば彼の経歴がよく分かるが、中国の文革から逃れてきた移民の父親を持つ彼は子供の頃から冒険心に満ちた人物で、ロビンソン・クルーソーなどの冒険小説を読み漁り、無人島の生活に憧れ、実際に活発に登山などに励む冒険家でもあった。父親の影響でクリスチャンとして育った彼は福音派の大学を卒業し、原住民たちをキリスト教に改修させた過去の宣教師たちに憧れて未開の地を探して北センチネル島のことを知る。 布教に没入することを懸念した父親にも耳を貸さなかったチョウは、地元の漁師たちを買収して北センチネル島に単身渡り、そこで島の住人たちに殺されるわけだが2018年のこの出来事についてはニュースなどで目にした人も多いのではないか。 このドキュメンタリーは残されたチョウの日記、および映画制作にあたって父親がしたためた手紙
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「FUNNY PAGES」鑑賞
映画評

「FUNNY PAGES」鑑賞

前から興味のあったA24製作の作品。つうか「ファニー・ページ」の邦題で昨年末に日本で公開されてたの? 人のカリカチュアを描くのが好きな高校生のロバートは、アングラなコミック作家になりたいという漠然とした夢を持っているものの、それを実現するために何をするという訳でもない生活を送っていた。しかし美術の教師が目の前で交通事故死したのをきっかけに、大学進学も諦めて親元を離れ、狭いシェアハウスに住みながら法律事務所とコミックショップでバイトしながら暮らしていこうとする。そして法律事務所にやってきた中年男性のウォレスがイメージ・コミックスでカラー・セパレーター(カラリストではなくて)をしていた経歴があることを知り、勝手に憧れてコミック作りを教えてもらおうと嘆願するのだが…というあらすじ。 監督・脚本のオーウェン・クラインってケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの息子だそうで、「イカとクジラ」で情緒不安定になる弟を演じていた役者でもある。あの子役がもう30代か!と思う一方で、そんな有名人たちの息子の初監督作がこんなオフビートの映画で良いのか、と思うくらいの内容だった。冒頭で服を脱いで肥満体を晒
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「THIS TOWN」鑑賞
海外テレビ番組

「THIS TOWN」鑑賞

キリアン・マーフィーがアカデミー賞を受賞したことで世間の知名度が上がった(はず)のドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」のクリエイターであるスティーブン・ナイトによるミニシリーズ。 主な舞台となるのは1981年のバーミンガム。人種間の緊張により暴動が頻発するなか、酒もタバコもやらない繊細な少年ダンテ(黒人とアイルランド人のハーフ)は自分を振った女の子に対してポエムを書こうとする。ダンテの従兄弟のバードンは父親が熱心なIRAの支持者で爆弾テロにも関わっていることに嫌気がさしており、一方でダンテの兄のジョージはイギリス軍の兵士としてベルファストに派遣されていたが、彼ら3人の祖母が亡くなったことから彼らは葬儀で再会する。辛い現実を打破するためにダンテはバードンにバンドを組むことを持ちかけるなか、ジョージの知り合いで地元のギャングのボスが自分のクラブで演奏するバンドを探していた。さらにジョージは軍の上官からバードンの父親の活動を監視することを命じられ、ダンテたちの運命は時代の流れに巻き込まれていくのだった…というあらすじ。 単なる青春ドラマと音楽ドラマではなく、人種暴動とか北アイルランド問題と
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「ブラックベリー」鑑賞
映画評

「ブラックベリー」鑑賞

昨年高い評価を得ていたカナダの映画。日本ではいつ公開されるのかと思っていたらしれっと配信スルーになっていた。しかし評判通り面白かったので感想をざっと。 舞台は2000年代初頭のカナダ。アグレッシブなセールスマンのジム・バルジリーは勤めていた会社をクビになったあと、以前にピッチを受けたリサーチ・イン・モーション(RIM)社の携帯端末に出資してRIMの共同CEOの座に就く。RIMはCEOのマイク・ラザリディスを筆頭に気弱なオタク開発者だらけの会社だったが、バルジリーに尻を叩かれてセールスに力を入れていく。そしてラザリディスの開発した端末のモデルがベライゾンに気に入られ、これがスマートフォンの元祖であるBlackberryとなって大成功し、RIMは瞬く間に大企業へと成長する。その後はPALM社による買収の試みやネットワークのクラッシュといった危機を乗り越えるものの、アップルがiPhoneを発表したことでBlackberryの人気はダダ下りになり…というあらすじ。 今でこそiPhoneやAndroidといったスマートフォンを皆が使ってるけど、当時はPALMとかのPDA端末(死語)がいろいろ
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「デイリーショー」にジョン・スチュワート復帰
海外テレビ番組

「デイリーショー」にジョン・スチュワート復帰

2022年の末にトレバー・ノアがホストを降板したのを受けて、昨年はずっと週ごとにゲストが代わってホストを努めるローテーション制を組んでいた「デイリーショー」ですが、やはり要となるホストが決まっていないと政治風刺の番組としてうちはこういうスタンスだよ、というメッセージを打ち出しにくいし、特に今年のように大統領選挙のある年には、責任をもってモラルの象徴となるようなアピール力のある人物が中心にいないと弱腰の風刺とインタビューを続けるだけの骨抜きの番組になってしまうという危惧はなんか見ていて感じたのです。 そして今年もホストが交代制になるという話を聞いてゲンナリしていたら、こないだ急に発表されたのが番組を一躍有名にさせたジョン・スチュワートが復帰するというニュース。なんか月曜日だけホストを務めて、残りの曜日は相変わらず準レギュラーの「特派員」たちがホストになるという変なスケジュールらしいけど、往年のファンにとって彼の復帰は大変歓迎すべきことです。 スチュワート本人は2015年に番組を降板したあと、ここ数年はApple TVで「デイリーショー」みたいな政治色の強い番組を持っていたけど、「AI
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「Feud: Capote vs. The Swans」鑑賞
海外テレビ番組

「Feud: Capote vs. The Swans」鑑賞

前作から実に7年の期間をかけて戻ってきた「FEUD」の新シーズン。 一時期はイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃の不仲をテーマにして企画が進んでいたはずだが、それが破棄されて今回作られたのは、作家トルーマン・カポーティとNYの上流階級の淑女たちの諍いという、なかなかマイナーなネタを扱ったもの。 第1話から時代がぽんぽん移り変わるので内容がちょっと把握しづらいが、60年代のカポーティは人気作家で、そのウィットに富んだ軽妙な話術と有名人のゴシップを大量に抱え、NYの金持ちのあいだでパーティーに呼ばれまくる派手な生活を送っていた。それが70年代になると酒やドラッグのやり過ぎで勢いは衰えていたが、自分の精通している上流階級のゴシップを随筆として雑誌に発表する。しかしそのモデルとなった女性が記事を苦にして自殺したことから、彼女の仲間の淑女たちはカポーティへの復讐を企むのだった…という内容で良いのかな?80年代の晩年のカポーティも出てきます。 個人的にはトルーマン・カポーティって学生時代に短編をちょっと読んだくらいでそんなに詳しくはないのですが、甲高い声で話すゲイの小太りのとっちゃん坊や(
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『哀れなるものたち』鑑賞
映画評

『哀れなるものたち』鑑賞

大変面白かったよ。感想をざっと。以下はネタバレ注意: * 個人的に最近のヨルゴス・ランティモスの作品って、「聖なる鹿殺し」あたりから(以前に作品に比べて)奇抜性がなくなり、こないだの「女王陛下のお気に入り」なんて普通の歴史ドラマになってたような気がしたが、今回は初期の作品に原点回帰したような感じで面白かった。 * 具体的には冒頭、家の中にずっと閉じ込められて世の中を知らずに暮らすベラの姿がそのまんま「籠の中の乙女」の少女であるわけで、あの映画では少女が家の外に出るところで終わっていたのに対し、こちらではその後を描いているのが興味深い。あとは船の中での奇妙なダンスも初期の作品ぽかったですね。 * 話のモチーフは(原作があるのは置いておいて)、当然ながら「フランケンシュタイン」があって、あとは「カンディード」のようなピカレスク小説、あるいは「ピノキオ」あたりでしょうか。世間知らずでモラルを知らない主人公が世の中に出て、悪漢たちの奸計に辛い目に遭わされながら、人間的に成長して故郷に帰ってくるというやつ。ファンタジーっぽい世界風景がそれによくマッチしていたし、エログロ混じった展開によっ
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「OPPENHEIMER」鑑賞
映画評

「OPPENHEIMER」鑑賞

日本公開を待たずに家で観た。以下はネタバレ注意。 クリストファー・ノーラン初の伝記映画だがキリアン・マーフィー演じるオッペンハイマーの生涯をただ追ったものではなく、例によって3つ(以上)の時間軸が交差する作りになっている。原子爆弾を開発するマンハッタン・プロジェクトのリーダーとして熱意を注ぐ戦中のオッペンハイマーを中心に、戦後に共産主義との関わりを疑われて審議会にかけられる光景、およびもう一人の主人公である、ロバート・ダウニーJr.演じるストローズ議員の公聴会の様子が交互に描かれていく。ストローズの視点からの描写はすべてモノクロ。 戦中の部分はストレートな伝記映画っぽくて、ナチスの脅威を感じながら有望な科学者の獲得に奔走し、ロスアラモスの砂漠のど真ん中で原爆を開発していくオッペンハイマーの描写がメイン。そういった行為について振り返りというかしっぺ返しを体験するのが審議会の部分。人類を絶滅しかねない大量破壊兵器を開発したことについてオッペンハイマーは良心の呵責を感じているのか、というのが映画のテーマの1つなのだが、それについてはかなり曖昧にされているように感じた。 ユダヤ系のオッペ
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謹賀新年
雑記

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。 昨年は夏に家を買って引越しまして、引越し先は土地勘のない場所ではないのですが生活のリズムがまだカチッといってない感があって、もうしばらくそれは続くのかな。引っ越しの際に運んだ荷物のなかには読んでない本がたくさんありまして、もういいかげんアーリーリタイアしてこういう本を消費する生活したいなと改めて感じた次第です。どうなるんですかね。 今年は正月から北陸の方で大地震があって、世界中で行われる選挙の結果も個人的にはあまり楽観視できないし、いろいろ大変な1年になりそうな気もしますが、体調に気をつけてやっていきましょう。今年もよろしくお願いいたします。
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映画評

2023年の映画トップ10

今年はおそらく例年並みに鑑賞していると思うのだが、ハリウッドのストで大作がいろいろ公開延期になったことや、海外のメディアでベストに選ばれている「オッペンハイマー」「Past Lives」「Blackberry」などをチェックできてないこともあり、なんか不完全燃焼になっている感がなくもない。そのため昨年同様にちょっと無理に10本選んだ感もあるが、以下は順不同で。 「レッド・ロケット」 ダメ男が主人公の映画は他人事とは思えないので点が甘くなるが、ほぼ無名の俳優を揃えた低予算映画ながらテキサスの田舎町の情景を美しく描き、ポルノ業界で再び成り上がろうと無垢に奮闘する主人公とかが非常に素晴らしいのよ。 「イニシェリン島の精霊」 アイルランドを舞台にした映画は点が甘くなる。マーティン・マクドナー作品の集大成的な感じ?不条理劇のようなものとして自分は楽しめた。 「SOMETHING IN THE DIRT」 ラストはいまいちだったというか、どうやって終わったかもよく思い出せないのだけど、それまでに至るオカルトというか怪現象の積み重ねが自分の好物だったので挙げておく。 『Person
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「Fargo」シーズン5鑑賞
海外テレビ番組

「Fargo」シーズン5鑑賞

前シーズンから3年ぶりの新作。新シーズンのたびにこれが最終章だ、みたいなことを言われてる気がするがこれが最後になるかは分かりません。 時代設定がグッと前に遡って1920年代だったシーズン4に対し、今度はグッと時代が進んで2019年のミネソタが舞台。弱気なカーディーラーの夫と結婚しているドロシーは、自宅で暴漢ふたりに襲われて誘拐される。しかしドロシーはサバイバルの達人であり、暴漢の車が警官に職務質問を受けている際に脱走し、そのまま警官を巻き込んでガソリンスタンドで銃撃戦を繰り広げる。暴漢を撃退した彼女は自宅に戻り、夫の前では何事もなかったような素振りをするのだった…というあらすじ。 まだ2話しか観ていないので話の展開がこれからどうなるかとんと分からないのだが、登場人物はドロシーとその夫と子供に加え、地元の有力者でドロシーを敵視している義理の母、悪徳の限りを尽くしている保安官、ドロシーを誘拐しようとした暴漢、ドロシーと銃撃戦に巻き込まれた警官といった、実にひねくれたキャラクターたちが揃って、自分たちの私欲のために行動している。 どうもドロシーは保安官の元妻で、彼女を誘拐した暴漢はその
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