映画評

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「IS THIS THING ON?」鑑賞
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「IS THIS THING ON?」鑑賞

日本では「これって生きてる?」という直訳タイトルで4月公開、ブラッドリー・クーパーの監督映画(本人もチョイ役で出ている)。 アレックスは妻のテスとの間に2人の子供がいたが、夫婦の仲はうまく行かず離婚の協議中だった。そんな彼はふらっと入ったバーでスタンダップコメディに飛び込みで挑戦し、家庭の不満をぶちまけたところまあまあウケが良かったため、その後もスタンダップにはまっていく。ステージ上では夫婦生活をネタにしながらも、私生活ではどうにかテスとの仲を改善しようとアレックスは試みるのだったが…というあらすじ。 スタンダップのモノローグが主人公の心の叫び&セラピーになっている作りはいかにもな、という内容ではあるのですが、以前の「The Opening Act」のようにコメディクラブの裏側が覗ける作品は好きなので結構楽しめた。ステージ上のアレックスの顔をアップで映し、観客の姿は殆ど見せないようにして彼が画面に向かって独白しているかのよう。 アレックスを演じるウィル・アーネットはカナダ出身のコメディアンで、「アレステッド・ディベロップメント」の長兄役でブレークした人。日本だと「レゴ・バットマン
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「TWINLESS」鑑賞
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「TWINLESS」鑑賞

昨年よい評判を目にしていたサンダンス映画。以下はネタバレ注意。 双子の兄弟のロッキーを交通事故で亡くしたローマンは、悲しみを和らげるために自分と同様に双子を亡くしたセラピーグループに参加し、そこでデニスというゲイの男性と知り合う。ローマンはストレートだがロッキーがゲイだったので彼はデニスに親近感を抱き、二人はすぐに仲良くなる。しかし実はデニスはロッキーのかつての恋人であり、彼のことが忘れられなかったために自分にも双子がいたという嘘をついてグループに参加し、ローマンにロッキーの面影を感じるのだった…というあらすじ。 あらすじだとストーカーもののホラーに聞こえるかもしれないがそんなことはなくて、本国だとブラックコメディという紹介も見かけるが、もっとしっとりしたクィアロマンスものだった。デニスは愛していたロッキーの姿をローマンに投影し、ロッキーと疎遠だったローマンは彼の生前の様子をデニスを通じて知る。自分でない人間と自分のアイデンティティの境界が曖昧になっていく過程は、初期のポール・オースターの小説みたいだった。 主演はディラン・オブライエンで、なんかやけに筋肉がついた体を見せつけてく
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映画評

2025年の映画トップ10

今年は結構当たり年だったような?以下は順不同で。 「野生の島のロズ」 今年のアニメ作品はこれが好き。クリス・サンダースは相変わらず感情の盛り上げ方がうまいなと。子供を育ててるママさんならもっと響いたのではないでしょうか。 「プレデター 最凶頂上決戦」 アニメはこれも良かった。「エイリアン」がなんかジュヴナイル冒険ものになっていく(「ロムルス」と「アース」な)一方で、「プレデター」が復権するとは数年前には想像できなかったな。配信オンリーだったけどアクション描写などは「バッドランズ」よりも遥かに優れていた。 「スーパーマン」 自分の観たかったDCのスーパーヒーローがやっと戻ってきたという感じ。予告編では両親がなんか田舎者くさいな…と思っていたら、ラストでいやいや田舎者なりに愛情を注いでいるんだよ、という描写がされていて良かったです。 「罪人たち」「THE UGLY STEPSISTER」「THE SHROUDS」「ウェポンズ」「28年後...」 今年は優れたホラー作品が多かった。あるいはホラーというスタイルだけをとって作者がメッセージを訴えた作品が多かったということか。「罪
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「The Ugly Stepsister」鑑賞
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「The Ugly Stepsister」鑑賞

日本では「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」の邦題で1月に上映されるらしい北欧(ノルウェー)映画。以下はネタバレ注意。 舞台は近代ヨーロッパ。姉妹であるエルヴィラとアルマは、その母親がオットーという男性と再婚したことで、彼の連れ子であるアグネスという少女と義理の姉妹になる。しかしオットーは急死し、母親が期待していたような遺産もなかったことから一家は窮困に陥る。そこで母親はエルヴィラを国の王子と結婚させようとするものの、エルヴィラは決して器量良しではなかったために彼女に過度の整形手術を施そうとする。一方で美人のアグネスは義理の母親に疎んじられて家政婦にされていたものの、彼女もまた王子の気を惹こうとするのだった…というあらすじ。 これ物語の序盤では明らかにされないが、要するに「シンデレラ」を「いじわるな姉」の観点から描いたもの。基の物語では腹黒い姉のエルヴィラも、ここではそれなりに純真であるものの自分が美しくないことにコンプレックスを抱いており、母親が命じる通りにバレエのレッスンでしごかれたり、整形手術での激痛に耐えたり、痩せるために寄生虫の卵を飲んだりと、文字通り血を吐くよ
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「WEAPONS」鑑賞
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「WEAPONS」鑑賞

今週末の日本公開より少し先に観てしまいました。感想をざっと。以下はネタバレ注意。 ・アメリカのごく普通の小さな町で、真夜中に一斉に17人の子供たちが行方不明になった事件を描いた内容で、ミステリーというよりもホラーの要素が多い。 ・ストーリーは登場人物の名前がついた章に分けられていて、その人物の観点から話が語られ、事件の裏に一体何があったのかが徐々に明かされていく仕組み。こないだの「ハウス・オブ・ダイナマイト」なんかは、ミサイル着弾までの10数分間の過程が3回にもわたって繰り返し描かれたことで緊迫感が薄まったのが興醒めだったが、こちらは各人物のバックグラウンドを説明しつつ、事件に関する手がかりが少しづつ明らかになる過程に醍醐味あり。 ・監督のザック・クレッガーは前作「バーバリアン」で、「民泊に来たらすでに謎の人物がそこにいた」というそそる設定を冒頭で打ち出しておきながら、話が進むにつれて凡庸なモンスターものに話が縮んでいったのが残念だったけど、今作では最後までテンションを緊迫したものにしている。まあテンションが高まりすぎて、物事の真相が明らかになったときにちょっとチートっぽい気にな
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「EDDINGTON」鑑賞
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「EDDINGTON」鑑賞

アリ・アスターの新作で、日本では「エディントンへようこそ」の邦題で12月公開。以下はネタバレ注意。 舞台は2020年、ニューメキシコ州の町エディントン。コロナ禍において住人にマスク着用が強制されているなか、地元の保安官であるジョーは町長のテッドと諸々の施策について意見が合わず、データセンター誘致を掲げて再選を目指すテッドに対抗して町長選挙に出馬し、ライバルを蹴落とすための策を検討するのだが…というあらすじ。 元々は現代のウェスタン作品としてずっと前に構想していた作品を、コロナ禍を経て練り直したものらしいけど、COVIDのほかにブラック・ライヴズ・マター運動や政府の陰謀論、それらを受けた保守系の若者インフルエンサーの台頭など、今までのアリ・アスターの作品に比べて意外なくらいに世相を反映させた内容になっている。マスクを着用しない客を入れさせない店とか、そんな出来事もコロナ禍ではあったよな、というほんの数年前なんだけども「一時代」の切り抜きがうまくできていた。 主人公のジョーは妻の母親が陰謀論にドップリはまっていることに辟易しながらも、住人のほとんどが白人の町で起きたブラック・ライヴズ
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「WARFARE」鑑賞
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「WARFARE」鑑賞

アレックス・ガーランド(共同監督)の新作。2006年のイラクにおけるネイビーシールズ部隊の戦いをリアルタイムで描いたもので、共同監督のレイ・メンドーザが実際に従軍時に経験した出来事をそのまま映像化したらしい。以下はネタバレ注意。 シールズのアルファ1部隊は、敵勢力の監視の拠点とするために街中の二階建ての家に潜伏する。しかしイラク側に気づかれて銃撃を浴びせられ、彼らは撤退のために戦車を呼ぶものの、爆弾によって2名の隊員が重傷を負い、戦車も退避してしまう。こうして彼らは籠城したまま戦うことになるのだった…というあらすじ。 前置きとか状況説明のようなものは殆どなくて、いきなり話が始まって戦闘が起きる内容なので、何が起こっているかを把握するのにちょっと時間がかかるかも。CASEVAC(負傷者後送)とかブレッドレー(戦車)といった軍隊用語が説明もなしにポンポン飛び交います。ガーランドの前作「シビル・ウォー」もアメリカが内戦に至ったまでの経緯がろくに説明されてなかったが、これはまた違った形での説明なし映画になっている。 実際の出来事をもとにしているだけあって、戦闘の描写は非常にリアルなものに
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「THE SHROUDS」鑑賞
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「THE SHROUDS」鑑賞

デビッド・クローネンバーグの新作だよ。以下はネタバレ注意。 舞台は近未来。カーシュは数年前に妻のベッカを癌で亡くして悲観に暮れていたが、特殊な3Dスキャン機能つきの埋葬布(シュラウド)を開発し、それで妻の亡骸を包んで埋葬することで、墓の中で朽ち果てていく遺体をいつでもスマホでチェックできるようにしていた。それを彼はビジネス化して、『グレイブテック』と名付けられたモニター付きの墓地はブダペストなど土葬の文化がある地域にも展開されようとしていたが、何者かによってカーシュの妻が眠る墓地が荒らされてしまう。さらにシュラウドとの通信ネットワークがハッキングされたことで、妻の遺体の監視ができなくなったカーシュは墓を荒らした犯人を探そうとするうちに大きな陰謀に巻き込まれていく…というあらすじ。 クローネンバーグ自身が妻を亡くしており、その経験にインスパイアされて作ったということでいろいろ個人的な想いが込められているのでしょう。ヴァンサン・カッセル演じるカーシュはヘアスタイルとかがまんまクローネンバーグ本人の格好になっている。 カーシュは妻の死を悼んでいる一方で恋人募集中で、出会った人には妻の遺
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「プレデター 最凶頂上決戦」
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「プレデター 最凶頂上決戦」

6月6日に配信開始された作品で、いまのところ今年のトップテンに入るくらい面白い作品なのです。しかし劇場公開されずに配信スルーという憂き目にあったのが災いしたのか、自分の観測範囲では全く話題になってないのと、こないだ内容に更新があったので(後述)、この作品の面白さについて自分なりに記しておく。以下は徹底的なネタバレ注意。 「プレデター」のアニメ版オムニバス映画という形式になっていて、話の内容は2022年の「プレデター:ザ・プレイ」と同様に「過去にプレデターが地球に来ていて、彼らと戦った人がいた」というもの。監督も「プレイ」と同じくダン・トラクテンバーグ。「プレイ」は1719年のアメリカでプレデターと戦うネイティブ・アメリカン少女ナルの物語だったが、こちらは「盾」「刀」「弾」そして「戦い」をテーマにした4つの短編に別れている。 「盾」は841年のスカンジナビアでバイキングの女首領がプレデターと戦う内容。これらの時代のプレデターは恒星間航行とか透明化の技術を既に持っている一方で武器がそこまで開発されておらず、たとえば841年のプレデターは劇場実写版のようなレーザー銃ではなく衝撃波を出す武
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「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」鑑賞
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「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」鑑賞

カタカナ表記は「ファンタスティック・フォー」ではなく「ファンタスティック4」なんですね。映画の権利がマーベルでなくフォックスにあったころは、マーベルが嫌がらせしてコミックを打ち切るというセコいことやっていたけど、マーベルもフォックスもディズニーの軍門に下った(?)ことで今回めでたく再映画化されましたとさ。以下は感想をざっと。 * 個人的にはスタン・リー&ジャック・カービーのコミック原作を絶対とみなす者ですが、キャラクターの設定などはうまくアレンジされていたんじゃないですか。ザ・シングが自分の容姿を不憫に思わず、普通に世間の人気者になっているのは面白かった。いちばん原作とかけ離れてるのはスーかな。もっと穏健な一家の母タイプなのが、映画だともっと攻撃的な性格になっているというか。 * リードの体が伸びない。腕と脚がちょっと伸びる程度。ギャラクタスに引きちぎられそうになってたけど、原作ならギャラクタスの体をグルグル巻きにしてお釣りがくるほどなんだけどな。2015年版もあまり伸びていなかったことを考えるに、あまり映像化すると映えない能力なのでしょう。 * 宿敵のドクター・ドゥームがアベ
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「スーパーマン」鑑賞
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「スーパーマン」鑑賞

感想をざっと。以降はネタバレ注意。 * さすがにもうオリジン話はいいでしょ、ということで各キャラクターの説明など無しにいきなり話が始まるあたり、なんかシリーズものの第2作から見せられてるような感覚があった。そういう意味では冒頭の盛り上がりに欠けるというか、ノリをつかむまでに思ったよりも時間がかかってる気がするものの最後はきっちり締められたんじゃないですか。 * 冒頭でロイス・レーンとクラークが「スーパーマンの正体を知らないふり」をするくだりは、映画化されなかった「SUPERMAN LIVES」のケヴィン・スミスの脚本にちょっと似ていた。 * グラント・モリソン&フランク・クワイトリーの「オールスター・スーパーマン」が大きなインスパイア元になっていることは監督が公言している一方で、ガイ・ガードナーやメタモルフォが登場するあたり、想定以上にキース・ギフィンとJM・デマティスの「ジャスティス・リーグ」にもインスパイアされてましたね。 * ポケット・ユニバース?の設定はあまりピンとこなかったな。あれ「ピースメーカー」の設定にもつながるんだろうか。「リターンズ」の土地隆起もそうだったけ
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「罪人たち」鑑賞
映画評

「罪人たち」鑑賞

普通に面白い作品であったよ。日本公開が急に決まってろくに宣伝されてないような気がするが、IMAXの空き状況にあわせて公開されたのかな。 * ホラー作品としてみれば「フロム・ダスク・ティル・ドーン」に近いのかな。怪物たちに襲われる酒場での一夜の攻防を描いた内容ではあるわけだが、アメリカ南部における黒人文化を守り通すことをテーマにした秀作。パーティーへの準備と盛り上がりまでの過程は「SMALL AXE」の第2話目、ジャマイカ系移民がサウンドシステムを持ち込んでパーティーを開催するエピソードに通じるものがあると思いました。 * そんな黒人たちを狙うのがアイリッシュ系の吸血鬼たちということで、個人的にはこっちのほうに興味を持ったな。アメリカにおけるマイノリティ同士が殺し合うという皮肉があるわけだが、その一方でどちらも自分達のルーツの音楽は愛しているという共通点がある。ヴァン・モリソンだっけ?が言っていた、ロックンロールはケルト音楽と黒人音楽がアメリカで融合して生まれたという言葉を連想した。まあ公民権運動の際に黒人を最後まで差別したのは、かつて自分達が虐げられてきたアイルランド系移民だった
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「THE RETURN」鑑賞
映画評

「THE RETURN」鑑賞

ハリウッドではこんどクリストファー・ノーランが「オデュッセイア」を豪華キャストで映画化するとかで話題になってるが、こちらはそれよりも一足お先に最後のオデュッセウスの帰還の部分だけを映像化したもの。2000年以上前に書かれた話にネタバレなぞ関係ないと思うが、一応以下はネタバレ注意。なお自分は「オデュッセイア」は子供向け絵本を読んだ程度っす。 内容は原作にかなり忠実に沿っている。トロイア戦争に出向いていったあと長らく音信不通となっている夫オデュッセウスの帰還を辛抱強く待つ妻のペネロペだが、彼女のところには再婚を求める数多くの男たちが集まっていた。そんななか、ついに単身で流れ戻ったオデュッセウスは身分を隠しつつ、大きく変わった故郷の状況を探っていく。 ペネロペがオデュッセウスの正体を知るのが少し早いとか、細かい脚色はあるものの、まあ観る人は話の展開を知っているわけで、それでも見応えがあるのは演出の巧みさですかね。歌舞伎の人気演目みたいなもので、お決まりのシーンを見て楽しむというか。求婚者たちが誰も張れない弓をオデュッセウスが張り、連なる斧の隙間を射抜くシーンとかやっぱカッコいいのよ。
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「SMALL THINGS LIKE THESE」鑑賞
映画評

「SMALL THINGS LIKE THESE」鑑賞

「オッペンハイマー」でアカデミー主演男優賞を獲って名実ともにハリウッドスターとなったキリアン・マーフィーだが、その次に主演したのはこんな小品。まあ彼らしいね。彼自身が原作小説のファンで「オッペンハイマー」撮影中にマット・デーモンに製作を持ちかけたとかで、デーモンとベン・アフレックがプロデューサーに名を連ねている。以下はネタバレ注意。 舞台は1985年、アイルランド南東部の町。ビルは石炭(泥炭)の運送・販売業を営む真面目な男性で、妻と5人の娘を支えながら細々と暮らしていた。そんな彼は、取引先である修道院のなかで若い修道女たちが悲惨な扱いを受けているのを目撃する。地域で強大な影響力をもつ修道院に対してビルは沈黙を貫こうとするが、やがて修道院から逃走した少女が彼の前に現れて…というあらすじ。 時代設定とか人物の背景について一切説明がないので、会話で言及される情報から主人公たちの置かれている環境を察しなければならないのでぶっちゃけ不親切といえば不親切。ウォーターフォードとウェックスフォードが近所なら住んでるのはあそこらへんだな、とか。まあ分からなくてもよいのだけど。ビルの家族とはまた別の一
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「Grand Theft Hamlet」鑑賞
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「Grand Theft Hamlet」鑑賞

巷で絶賛されてるドキュメンタリー(?)映画。 時はCOVID第3波でロックダウン中のイギリス。外出もできず仕事にもあぶれていた俳優のサム・クレーンとマーク・ウースターヴィーンは、グランド・セフト・オート・オンラインに没入。そのバーチャル世界のなかで演劇を披露できそうな屋外ホールを発見した二人は、そこで「ハムレット」を演じようと決心する。サムの妻で映画監督のピニー・グリルスにも撮影を頼み、他のオンラインプレーヤーにも声をかけるものの、そもそもGTAはそういうのに適したゲームではないわけで…という内容。 おれ自身はグランド・セフト・オート(以下「GTA」)は「III」から「サン・アンドレアス」までやり込んだけど、オンライン版はプレーしたことなし。グラフィックもずいぶん綺麗になってるんですね。自分のキャラクターを自由に操作できて、マイクを通じてセリフも喋れるとはいえ、車強盗と銃撃戦が日常茶飯事のGTAオンラインの世界において、芝居を披露しようとするサムとマークの試みは至難を極める。オーディションに集まったキャラクターたちはいきなり撃ち合いをはじめ、舞台に選んだ飛行船からサムのキャラクター
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「LONGLEGS」鑑賞
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「LONGLEGS」鑑賞

日本だと3月公開かな?昨年いろいろ怖い怖いと言われていたホラー。以下はネタバレ注意。 舞台は90年代のオレゴン。長年にわたって起きる複数の一家惨殺事件の調査にあたっていたFBI捜査官のハーカーは、「ロングレッグス」というメッセージとともに現場に残されていた暗号を解読して犯人の素性に迫ろうとする。しかし隠された真実は彼女自身にまつわるものでもあった…というあらすじ。 上司に指示されてシリアルキラーを追う、華奢な女性捜査官が主人公という点では「羊たちの沈黙」に似てなくもない。ただしあれよりもオカルト色がずっと強くて、ハーカーも何かしらの超常的な能力を持っていることが示唆されている。そして上司と捜査を進めるハーカーは、犯人が残した不気味な手がかりを発見したりするのだが、安直なジャンプスケアなどに頼らず、むしろ引きの映像を用いながら話の展開を描いているのは不穏な雰囲気を醸し出すことに成功しているかと。 ただしオカルト色が強いという一方で、キリスト教のモチーフがいろいろ出てくるのは、日本の観客にはあまりピンとこないかも。「サタン様万歳」とか言われても、じゃあサタン様はなぜやたら面倒くさい手
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「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」鑑賞
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「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」鑑賞

感想をざっと: * 例によってディズニープラスのシリーズのほうは観てないので、サム・ウィルソンがキャプテンになった経緯はよく知らなかったりする。イザイア・ブラッドリーが登場してたことも知らんかったです。 * キャプテン・アメリカ作品ということもあってかそこそこ政治サスペンス的な要素も加わり、ファミリー層向けになんか腑抜けた内容になっていた「アントマン」とか「マーベルズ」に比べれば良い出来になっていたと思う。 * 今更になって「インクレディブル・ハルク」とか「エターナルズ」のストーリーを回収してくるのは誰も望んでないのではないかと言う気もするが、まあいいや。 * 個人的にはサンダーボルト・ロスを演じるハリソン・フォードの演技が全体を支えたものになっていると感じた。あの歳になってもタフガイを演じることが多い彼が、今回はもっと弱みを抱えたタイプになっていて、いい演技を見せていたのでは。 * でも常識的に考えて、大統領の側近にイスラエルのエージェントを配置したりはせんよなあ。 * ここ最近のマーベルのヒーローってナノテクノロジーに支えられた、一瞬で着脱できるようなスーツを着込んで
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「WILD ROBOT」鑑賞
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「WILD ROBOT」鑑賞

ドリームワークス・アニメーションの新作で、日本では「野生の島のロズ」の邦題で2月より公開。以下はネタバレ注意。 舞台は未来の無人島。そこに流れ着いた貨物にあった、家事お助けロボットの「ロッザム7134」が独自に起動する。野生動物だけが跋扈する島において、自動翻訳機能を使うことで動物たちの会話は理解できるものの、自身のプログラミングに想定されていない環境に戸惑うロボットは、動物たちに追いかけられて雁の巣を壊してしまう。そこでロボットは「ロズ」と名乗り、唯一助けたヒナを育てることになるのだが…というあらすじ。 監督はあの名作「ヒックとドラゴン」の片割れクリス・サンダースで、「異生物との交流」という彼が得意とするテーマがフルに発揮されている…というか雁のヒナが空を飛ぼうと必死に訓練するシーンとか、もろに「ヒック」なので感慨深いわな。音楽も「ヒック」ほど明確なテーマ曲こそないものの、印象的な曲が効果的に使われてジワジワ来る。 序盤はロズと動物たちのドタバタ、中盤はヒナの子育て話、そして終盤は…ということでストーリーにちょっと一貫性が無いというか、主人公たちに差し迫った課題がいまいち感じら
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「A REAL PAIN」鑑賞
映画評

「A REAL PAIN」鑑賞

日本では「リアル・ペイン 心の旅」という邦題でこんど公開。ジェシー・アイゼンバーグが主演・脚本・監督した作品。 ポーランド系ユダヤ人である従兄弟のデビッドとベンジーが、自分達のルーツ探しとしてワルシャワ行きのツアーに参加し、亡くなった祖母の住んでいた家を訪問するという内容で、まあロードムービーということになるのかな。ウェス・アンダーソンの「ダージリン急行」に雰囲気は似ていた。ツアーの内容がホロコーストに関連した施設を訪れるというもの(食事付き)なので、参加者の多くはユダヤ人で真面目に敬意を払ってるのに、チャラい性格のベンジーが軽口を叩いたりして周囲に迷惑をかけるというあらすじ。 おちゃらけたベンジーがキーラン・カルキン、対して神経質で真面目なデビッドがアイゼンバーグという配役はいかにもなタイプキャストだし、ふざけたベンジーが実は心に深い問題を抱えているという展開もありがちで非常に型にはまった作品ではあるものの、主演ふたりの演技が上手いし、90分ほどの短尺なので中弛みなどせずさくっと観られるものになっていた。 デビッド同様にポーランド系ユダヤ人であるアイゼンバーグの個人的経験が濃厚
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「The People's Joker」鑑賞
映画評

「The People's Joker」鑑賞

ジョーカーをはじめとするDCコミックスのキャラクターを勝手に使用した映画…というわけでトロント映画祭でのお披露目の際にはワーナーからお叱りのメールを受けたことで上映が中止になったいわくつきの作品だが、こうして無事に配信されてるあたり、何かしら弁護士のあいだで決着が着いたのでしょう。 内容は監督のヴェラ・ドリューの自伝的な物語で、田舎のスモールヴィルで育った少年の主人公は親に連れられて「バットマン・フォーエバー」を観に行ったらバットマンよりもニコール・キッドマンに感情移入している自分に気づき、自分がトランスジェンダーであることを自覚する。そしてコメディ番組に憧れて都会のゴッサムに移るものの、そこは強権的なバットマンに支配されている世界だった。そこで主人公はコメディクラブに加わり、ラーズ・アル・グールの教えのもとジョーカー・ザ・ハーレクィンと名乗って、相棒のザ・ペンギンとともに「アンチ・コメディ」を披露していくが、そこで同じくジョーカーの格好をしたジェイソン・トッドという少年と恋仲になり…というあらすじ。 まあストーリーらしきものはあまり存在しなくて、クラウドファンディングで作られた低
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映画評

2024年の映画トップ10

今年は前半はどうかな、と思ってたけど後半になって面白いインディペンデント系の作品がいろいろ出てきたような?以下は順不同で。 「哀れなるものたち」 ランティモス作品としては「憐れみの3章」よりもこっちのほうがずっと面白かった。大人の寓話。 「マッドマックス:フュリオサ」 「デス・ロード」ほどではないとはいえ、アクション満載で満足。トム・バークがかっこええ。 「デッドプール&ウルヴァリン」 個人的に20世紀フォックスの作品でいろいろ仕事に関わった経験があるので、いまは亡きフォックスにささげるエンドクレジットに感謝。 「I SAW THE TV GLOW」 90年代のチープなTVシリーズにまつわる不条理なホラー、というのが俺の世代にはハマるのです。 「ドリーム・シナリオ」 全人類に嫌われる中年男、という設定が他人事とは思えず涙を禁じ得ない。 「THE SUBSTANCE」 往年のクローネンバーグを彷彿とさせる、エグいけど面白いホラー。 「教皇選挙」 最後のオチはちょっと余計だったかもしれないけど、選挙結果に至るまでの展開の描写が秀逸でした。 「Hundreds
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「CONCLAVE」鑑賞
映画評

「CONCLAVE」鑑賞

日本では「教皇選挙」の題名で3月に公開。その名の通りバチカンを舞台にした、新しい教皇の選出にまつわるスリラー。 比較的リベラル寄りだった(らしい)教皇がバチカンで突然崩御する。彼の死を嘆く間も無く枢機卿のローレンスは新たな教皇を選出するための選挙(コンクラーベ)の手配を仕切る役目に就く。選挙のために世界中から枢機卿たちが集まるなか、リベラル派のローレンスたちは前の教皇に批判的だった保守派の候補が新教皇に選ばれるのを阻止しようと画策するものの、自分達が推す候補にもなかなか票が集まらない。そして他の候補や、今まで存在を知られていなかった新しい枢機卿が加わることで選挙は混乱を極めていく…というあらすじ。 あまり内容ついて深く語るとネタバレになるので書かないが、保守派の候補の当選を防ぐためにローレンスたちが裏で手回しを試みて根比べ(失礼)を行う一方で、他の候補も裏工作を試み、さらには前の教皇が死の直前に何をしていたのか?という事実が暴かれていくという上質のサスペンスになっている。 実際のバチカンも内情はドロドロしているというのが世間にも漏れ伝わってきているけど、こちらも候補同士で相手の醜
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「IN A VIOLENT NATURE」鑑賞
映画評

「IN A VIOLENT NATURE」鑑賞

評判の良いカナダのスラッシャー映画。以下はネタバレ注意。 舞台はどこかの山奥。そこのキャンプ場にきていた若者たちが火の見やぐらの跡地にあったペンダントを盗んだことから、それによって封印されていた殺人鬼の怪物ジョニーが復活、母親の形見でもあるペンダントを取り返すために彼は若者たちを執拗に殺していく…というあらすじ。 手っ取り早く言えば「13日の金曜日」のパスティーシュなのだが、特徴的なのが話がジョニーの観点で進んでいくこと。ゲームで言えば「ドゥーム」のようなPOV形式ではなく、「グランド・セフト・オート」みたくジョニーを背後から眺める形で、彼が森のなかを歩き回り獲物たちに近づいていくさまを観る人は体験していく。画角はほぼ正方形で劇中は音楽が流れず、淡々とジョニーの背中を見せられる展開は人によって好みが別れるだろうけど個人的には興味深かったです。 昔の消防士のマスクを被り、材木用の鉄の鉤を使って黙々と若者たちを血祭りにあげていくジョニーは一言もセリフを話さず、水中でも行動できて銃で撃たれても死なない怪物。まあ「13日の金曜日」のジェイソン君だね。彼にまつわる伝説は他の登場人物の口から
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「THE SUBSTANCE」鑑賞
映画評

「THE SUBSTANCE」鑑賞

今年のカンヌ映画祭とかでいろいろ話題になったボディホラー。以下はネタバレ注意。 エリザベス・スパークルはハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにも星が飾られているほどの有名スターだったが、50歳になったのにつれて人気は低迷し、ホストを務めるフィットネス番組からも切られようとしていた。そんな彼女はふとしたことから「サブスタンス」と呼ばれる謎の若返りの薬のことを知り、ダメ元で自分に試してみる。すると彼女の背中を破って出てきたのは、若く美しいもう一人の自分であった。スーと名乗ることにしたその美女とエリザベスはあくまでも同一人物であり、お互いの体のバランスを保つために1週間ごとに体を入れ替えなければならない。そして美しいスーはまたたくまにハリウッドの注目の的になってスターの座を満喫するのだが、年取ったエリザベスの体に戻ることを拒否したことで両者のバランスが崩れていき…というあらすじ。 ストーリーそのものは「ジキル博士とハイド氏」や「ドリアン・グレイの肖像」みたいに古典的なもので、新しく手に入れた快楽を堪能する自分の第二人格が暴走していく内容であり、オチもなんとなく見えてしまうけれどもそれに至
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「ドリーム・シナリオ」鑑賞
映画評

「ドリーム・シナリオ」鑑賞

ニコラス・ケイジ主演の不条理コメディ。日本公開は11月。以降はネタバレ注意。 ポールは小さな大学で進化生物学を教えているしがない教授だったが、自分の娘をはじめとして他の人たちの夢のなかに彼が登場するということが話題になり、彼を夢のなかで見たという人が何百人も出てきたことで彼は一躍有名人になる。夢のなかの彼はただ突っ立って出来事を眺めているだけという役割だったが、彼の存在は宣伝に使えると考えたマーケティング会社にポールはコンタクトされる。それが自分の研究書の出版につながるかもしれないと考えた彼は会社の話を聞くことにするものの、人の夢のなかのポールがあらぬ行動をとるようになってしまい…というあらすじ。 元ネタは都市伝説の「THIS MAN」だろうし、プロデューサーとしてアリ・アスターが関わっているもののホラーの要素は殆どなくて、むしろチャーリー・カウフマンの作品のような不条理コメディのような内容になっている。自分の知らないところで勝手に人の夢のなかに登場させられて、やがて気持ち悪がられて世間一般から拒絶されるポールが不憫すぎて泣けてくるのよ。カフカ的とでもいうんだろうか。 そんな哀れ
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