映画評 「MARIA FULL OF GRACE」鑑賞 昨年いろいろ話題を呼んだ「MARIA FULL OF GRACE」こと「そして、ひと粒のひかり」をDVDで観る。何すか、この邦題は? 麻薬を詰めた袋を胃の中に何十個も入れ、コロンビアからアメリカへ密輸する「ドラッグ・ミュール」つまり「麻薬ラバ」となるティーンの女の子の物語で、内容は決して明るくない。というかひたすら暗い。 主人公のマリアはコロンビアの町工場で働く少女だが、ろくでもない彼氏のおかげで妊娠してしまう。貧しい家の出身である彼女は妊娠したことを家族に告げることもできず、お金を得るためにドラッグ・ミュールとなってアメリカへ麻薬を運ぶ仕事を引き受けるのだが…。というのが主なストーリー。当然ながら怖そうなお兄さんたちもいろいろ出てきて、麻薬が税関で見つかれば逮捕・麻薬の運送に失敗すれば家族が殺される・麻薬の袋が胃の中で破裂すれば即死、という極限の状態に置かれた少女の姿が淡々と映し出されていく。誤って体外に出た袋をまた飲み込む、なんてシーンもあります。 主演のカタリーナ・サンディノ・モレノはこれが映画デビュー作にしてアカデミー主演女優賞にノミネートされるほどの評価を得たわけだが、ニ
映画評 「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」鑑賞 観てきました。平日の昼間だってのに会場は満席状態で、やはり若者が圧倒的に多かったです。ネタバレは極力避けるつもりですが、以下の文章にはそれなりにネタバレが含まれてますのでご注意ください。 今回の作品で「スター・ウォーズ」 の壮大なサーガがついに幕を閉じることになったわけだが、既に公開されたストーリーの「過去」を描くことって、「あのキャラクターの出生の秘密はこうだった!」などといった新鮮な驚きをファンに与えてくれる一方、既存のストーリーにつながるような内容にしていかなければならないわけで、それが逆に物語の展開を制限してしまうデメリットが生じていたと思う。 特に「エピソード3」ともなると前に2作、後ろに3作を抱え、新旧3部作の橋渡しの役割を務めざるを得ないために、どことなくせっつかれたような、少しこじつけに近いような感じのする部分があったものの、全体的な出来としては「エピソード1」&「エピソード2」をはるかに凌ぐ良作となっている。 まずストーリーは宇宙空間でのドッグファイトから始まるわけだが、相手となる通商連合やロボット独立軍の連中がまるで迫力がないため、ちょっと肩すかしをくらったような
映画評 「アルジェの戦い」鑑賞 ジッロ・ポンテコルヴォ監督の疑似ドキュメンタリー映画「アルジェの戦い」(1965)をDVDで観る。傑作だという話は聞いていたものの、ここまで衝撃的な作品だとは思わなかった。 作品の内容は1950年代後半における、アルジェリアのフランスからの独立抗争を扱ったもの。祖国独立のために女性や子供を使ってまで爆弾テロをしかける抵抗組織や、それに対し拷問や無差別攻撃も厭わずに抵抗運動を潰そうとするフランス側の姿を、モノクロの強烈な描写で映し出していく。決して扇動的な内容ではないものの、全体的に抵抗組織よりの視点をもった作品になっていて、祖国を占領された人々がテロに走るさまや、抵抗組織の仕組みなどが観ていてよく理解できる。2003年にもイラクの抵抗組織を理解するための教材として、実際にアメリカの国防総省で試写が行われたらしい。それほど真実味の感じられる作品なのだ。 最近では疑似ドキュメンタリーというと「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とか「ブラディ・サンデー」のようにカメラがひたすらグラグラ揺れるスタイルがかなり一般的になってきたが、必ずしもそんなスタイルをとらなくても、まるで記録映像を観ているか
映画評 「STATE AND MAIN」鑑賞 玄人受けのする脚本家/監督であるデビッド・マメットの映画「STATE AND MAIN」をDVDで観る。 ヴァーモント州の小さな町に映画の撮影隊がやってきて巻き起こす騒動を描いた群像劇で、ティーンの女の子にすぐ手を出す主演男優(アレック・ボールドウィン)やヌードになるのを拒否するバカ女優(サラ・ジェシカ・パーカー)、時代劇なのにコンピューター会社の広告を入れようとする監督(ウィリアム・H・メイシー)、撮影が始まってるのに脚本を完成させてない脚本家(フィリップ・シーモア・ホフマン)など、なかなか豪華なキャストがそろってドタバタやってるのが楽しい。撮影スタッフを利用して利益を得ようとする地元の政治家や市長の妻なども絡んできて、映画製作の裏側をうまく風刺した作品になっている。予想もしなかったトラブルに直面して、どんどん映画の内容を変更していくスタッフの姿が見ていて笑える。 ややセリフが多くてペダンティックになる部分がある(特にホフマンのシーン)一方で、詳しい説明を避けて観客の想像力をかき立てるような演出が巧み。抱腹絶倒するような映画ではないが、よく出来た小品。
映画評 「キングダム・オブ・ヘブン」鑑賞 創価学会員のオーランド・ブルームがキリスト教徒を演じる映画「キングダム・オブ・ヘブン」を観る。監督はリドリー・スコット。十字軍遠征下のエルサレムを舞台にした作品だが、十字軍って異国に兵士を山ほど送って「聖地」を奪還しようとしたその意義が現在では疑問視されているわけで、この映画もイスラム教徒の描写などが公開前からずいぶん論議を醸していたらしいけど、それなりに公平な描写をしているというのが識者の意見らしい。しかし残念ながら、「政治的に正しい」作品にしようとしたばっかりに、肝心のストーリーがずいぶん盛り上がりに欠けるものになってしまったと思う。 物語はフランスで鍛冶屋をやっていた主人公バリアンが、十字軍に参加する騎士と出会い、彼が自分の父親だと知らされるところから始まる。そして彼は父親とともにエルサレムへ行こうとするが、途中で父親は死んでしまう。単身エルサレムに着いた彼はライ病持ちの王と会い、キリスト教徒とイスラム教徒は平和的に共存していくべきだと語る彼の思想に感銘を受ける。しかし王の義理の兄弟で好戦的なギーは、王の没後に軍の指揮権を手中にし、イスラム教徒に戦争をしかけようとする。そしてバリ
映画評 「銀河ヒッチハイク・ガイド」鑑賞 「銀河ヒッチハイク・ガイド」こと「THE HITCHHIKER'S GUIDE TO THE GALAXY」を劇場へ観に行く。 この映画は欧米でカルト的な人気を誇るイギリス人作家ダグラス・アダムズ(故人)の原作をもとにしたSFコメディで、最初は1978年にラジオ番組として登場したものが小説化され、TVシリーズになり、今回やっと映画化されることになったわけだ。以前に新潮社(だっけ)から出ていた邦訳を読んだときは、実はあんまり面白いという印象を受けなくて、これが世界的な人気作品なのか?と思った記憶がある。よって今回の映画版もあんまり期待しないで観に行ったんだけど…予想以上に面白い作品でした。 ストーリーは主人公アーサー・デントの家がバイパス工事のために取り壊されるところから始まる。これに抗議しようとする彼を友人のフォード・プリフェクトがパブに連れて行き、意外な事実を彼に打ち明ける:何と地球がヴォゴン人による銀河バイパス工事のために破壊されるというのだ。そしてその直後に本当にヴォゴン人の宇宙船団が出現し、地球を爆破してしまう。しかしフォードは実は宇宙人であり、銀河のあらゆる情報を網羅し
映画評 「BAADASSSSS!」鑑賞 こないだ「スウィート・スウィートバック」を観たんで、その撮影の舞台裏を描いた作品「BAADASSSSS!」をDVDで観る。監督・脚本・主演はマリオ・ヴァン・ピーブルス、つまり「スウィートバック」を作ったメルヴィン・ヴァン・ピーブルスの息子。彼は自分自身の父親を演じ、いかにメルヴィンが様々な障害を乗り越えながら「スウィートバック」を完成させたかを力強い演技で見せつけてくれる。 舞台になるのは1970年。大手スタジオのために「WATERMELON MAN」を撮り終えたメルヴィンは、次の映画は黒人を前面に押し出した作品にしようと決意する。しかしどのスタジオもそんな映画を作ることを認めようとはしなかったため、彼は独力で映画を完成させようと製作にとりかかる…。というところから話がスタートして、組合の縛りから逃れるために黒人用のポルノ映画を作ってると申請したとか、音楽を担当したアース・ウィンド&ファイアーへの報酬に金がなかったので空手形を書いて渡したとか、カメラを持ってた黒人のクルーが「バズーカを持っている」と勘違いされて逮捕されたとか、いろいろ面白いエピソードが列挙されていく。 ストーリーに
映画評 「ザ・インタープリター」鑑賞 シドニー・ポラック監督の「ザ・インタープリター」(THE INTERPRETER)を観た。個人的には「つかみ」が何も感じられない作品だったんだけど、まあショーン・ペンが出ているということで。 ストーリーはアフリカのマトボ共和国の出身で、現在は国連の通訳として働いている主人公シルビア(ニコール・キッドマン)が、独裁者として悪名高いマトボの大統領を暗殺するという何者かの会話を国連本部内で偶然耳にしてしまう。シルビアはすぐに当局に通報するものの、まるで誰かが彼女の命を狙っているような出来事が身の周りで頻発するようになる。そしてシークレット・サービスのエージェントであるトービン(ショーン・ペン)は事件の調査に乗り出すものの、やがてシルビアが過去に活動家であったことを知り、彼女に対する疑念を深めていく…といったもの。 結論を先に言うと、凡作。一般人がひょんなことから事件に巻き込まれて…といった形のシンプルなスリラーにしておけばよかったのに、政治的ドラマや主人公2人のロマンス、さらにはシルビアの過去の話などが途中でどんどん追加されて、ずいぶん話の焦点がぼけたものになってしまっている。冒頭の展開
映画評 「WHERE THE BUFFALO ROAM」鑑賞 かなり遅れての追悼という意味で…という訳でもないが、ビル・マーレーが故ハンター・S・トンプソンを演じた「WHERE THE BUFFALO ROAM」(1980)をDVDで観る。マーレーが「ゴーストバスターズ」以前、つまり比較的無名だった頃に出演した映画で、ストーリー上では主人公を演じているものの、クレジットのトップは相棒のカール・ラザロ(モデルはオスカー・アコスタ、つまり「ラスベガスをやっつけろ」のドクター・ゴンゾ)を演じるピーター・ボイルに与えられている。直接の原作となった記事(「THE GREAT SHARK HUNT」に収録されてるらしい)は未読だが、それなりにフィクションも含まれているようだ。 ストーリーはあってないようなもので、1968年のヒッピー裁判、70年のスーパーボウル、72年の大統領選挙などを背景に、当時「ローリング・ストーン」誌の名物記者だったトンプソンと異端の弁護士であるラザロの巻き起こす珍騒動を愉快に描いていく。酒とクスリでラリってばかりで、ホテルの部屋などを徹底的に破壊していくトンプソンの姿が面白い。面長のトンプソンに比べてマーレーって丸顔すぎる気もするが
映画評 「スウィート・スウィートバック」鑑賞 70年代のブラクスプロイテーション映画の先駆けとなった「スウィート・スウィートバック」こと「SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG」をDVDで観る。主演・製作・監督・編集その他をこなすのはメルヴィン・ヴァン・ピーブルズで、無名時代のアース・ウィンド&ファイアーが音楽をやってるとか。 売春宿に育ったスウィートバックはセックスの腕前を活かして白黒ショーのパフォーマーをしていたが、ひょんなことから警察によるブラックパンサーの活動家のリンチの場に立ち会ってしまう。彼は活動家を救うために警官たちを殴り倒してしまったため、その日から彼の長い逃避行が始まる…。というのが主なプロット。ブラクスプロイテーション映画の常として途中にセックス&バイオレンスがふんだんに盛り込まれているものの、基本的には警察の追跡とスウィートバックの逃避行が延々と描かれている。 かなりの低予算で製作され、X指定映画として公開されたにもかかわらずヒットを記録し、黒人映画が台頭するきっかけを作ったとして伝説になった作品だが、その出来自体ははっきり言ってショボい。かなり突拍子のない映像のモンタージュ(
映画評 「グライド・イン・ブルー」鑑賞 70年代の隠れた名作「グライド・イン・ブルー」をDVDで観る。原題が「ELECTRA GLIDE IN BLUE」で「エレクトラ・グライド」というバイクが出てくる話なんだから、この邦題は何かヘンじゃないか?まあいい。 主人公のジョンはアリゾナの砂漠で勤務する、生真面目な白バイ警官。ヒッピーの車を止めて尋問するような生活にうんざりしていた彼は、殺人課の警部の仕事に憧れていた。そして人里離れた小屋での老人の殺人事件に関わった彼は、その功績を認められて殺人課に転属する。しかしそこでも警察による権力の悪用が蔓延していることを知った彼は、自分の正義感が空回りするのを感じ、疎外感を強めていくのだった…。というのが大まかな内容。 アメリカン・ニューシネマ的とでもいうのか、「自分たちの居場所を見つけられない人々」がテーマのストーリーは「イージー・ライダー」に通じるものがある。特にラストは「イージー・ライダー」そのまんまなんだけど、こちらは体制側の人間を主人公にしているのが対比的だ(「イージー・ライダー」の写真を撃ち抜くシーンがあったりする)。低予算映画ながら、バイク・チェイスのシーンなんかも迫力が
映画評 「氷海の伝説」鑑賞 外は天気がいいってのにカゼが抜けきらないので、ずっと家にいて「氷海の伝説」こと「ATANARJUAT: THE FAST RUNNER」をDVDで観る。以前に岩波ホールでやってた時は観に行けなかったので。カナダ政府から助成金をもらって撮影された映画であり、全編イヌイット語のフィクション映画という意味では世界初の作品らしい。 舞台となるのは数百年前のイヌイットの部族の居住地。部族の長の息子であるオキにはアートゥワという娘と結婚することになっていたが、これは親同士の取り決めに夜結婚であり、アートゥワ本人は「足の速い人」ことアタナグユアトと恋仲にあった。横暴なオキはこれを気に入らずアタナグユアトと勝負をするものの、アタナグユアトは逆にオキを打ち負かしアートゥワを妻にめとる。その後にアタナグユアトはオキの妹プヤも妻にするが(一夫多妻制らしい)彼女は災いの種となり、復讐心に燃えるオキたちによってアタナグユアトの兄アマクヤックは惨殺され、アタナグユアトは氷の張った海へ裸のまま逃亡することになる。奇跡的に氷の海を駆け抜け一命をとりとめたアタナグユアトは、やがてオキやアートゥアのいる部落へと帰ってく
映画評 「コントロール・ルーム」鑑賞 アラブ諸国で一番の人気を誇る衛星テレビ局「アルジャジーラ」の、イラク戦争時の光景を追ったドキュメンタリー「CONTROL ROOM」をDVDで観る。 オサーマ・ビンラーディンの声明を放送したりすることから、アメリカのラムズフェルド国防長官なんかには敵視されているアルジャジーラだが、一方では旧フセイン政権からも「アメリカの手先だ」なんて糾弾されていたらしい。アルジャジーラ自体は偏見のない公明正大な報道をポリシーとしているものの、そのスタンスは明らかにアラブ・イスラム諸国寄り。個人的には報道側の主観が混じらないジャーナリズムなんて存在しないと思ってるので、米フォックス・ニュースなどに代表されるようなアメリカべったりの放送局の対極に存在するチャンネルだと思えばいいんじゃないでしょうか。 作品はイラク戦争の開戦直前から始まり、アルジャジーラのスタッフやジャーナリスト、アメリカ軍のプレス・センターの人々などのコメントを交えながら、戦況を追うメディアの裏側を紹介していく。戦争の状況をいかに報道するか、ということでアルジャジーラ側とアメリカ軍側の両方の意見が聞けるのが興味深い。最後はブッシュの戦
映画評 「愛の落日」 鑑賞 「愛の落日」こと「THE QUIET AMERICAN」をDVDで観る。その「反アメリカ的」な内容が9/11テロ直後のアメリカで問題になり、公開が1年近くも延期された作品だが、日本ではこんな邦題で公開されていたとは。 1952年のベトナムを舞台に、ベトナム対フランスの第1次ベトナム戦争と、共産国家の台頭を恐れたアメリカの介入による政治不安を背景にしながら、イギリス人の老記者と若きアメリカ人、そしてベトナム人の美女の三角関係を描いた傑作。歴史の大きなうねりを黙って見つめる記者役のマイケル・ケインの演技が光るが、謎めいたアメリカ人役のブレンダン・フレイザーもなかなかのもの。「ゴッド・アンド・モンスター」もそうだったが、この人はコメディやアクションよりもシリアスな演技の方が似合ってると思う。 アメリカ対ベトナムの第2次ベトナム戦争を予期したグレアム・グリーンの原作は未読だが、面白そうなので今度読んでみようかな。
映画評 「SLACKER」鑑賞 ケヴィン・スミスと並ぶ90年代のインディペンデント映画界の雄、リチャード・リンクレイターの実質的デビュー作品「SLACKER」をDVDで鑑賞する。1991年に公開された本作はスミスに「クラークス」を撮らせる触発を与えた映画であり、90年代のインディペンデント映画の元祖的作品のはずなのだけど…正直言ってかなり退屈な映画だった。 ストーリーの展開は無いに等しく、テキサス州オースティンの1日を舞台に、いろんな若者の姿をダラダラ追ってるだけ。まあ題名が「SLACKER(ダラけた奴、という意味)」なのでそれがコンセプトなんだろうけど。映画の構成は緩やかにつながった短いシーンの連続で成り立っていて、あるシーンでAとBが話してれば、次はBとCが話してるシーンになり、次はCとDが…といった感じで映画が進んでいく。登場する人物はみんな口が達者で陰謀論とか哲学を何気ない顔でベラベラ喋りまくるような連中ばかりで、どのシーンも演技よりもセリフ主体になってるため全体的に頭でっかちな印象を受ける。ジム・ジャームッシュの「パーマネント・バケーション」みたいな感じかな。そしていかにも90年代的な、「私ってinsec
映画評 「BOTTLE ROCKET」鑑賞 「天才マックスの世界」や「ロイヤル・テネンバウムズ」を手がけたウェス・アンダーソン監督のデビュー作「BOTTLE ROCKET」をDVDで観る。主演&共同脚本はアンダーソン作品ではお馴染みのオーウェン・アンダーソンで、他にもルーク・ウィルソンやアンドリュー・ウィルソン、クマー・パラーナといったアンダーソン作品の常連がいろいろ出ていて楽しい。あと何故かジェームズ・カーンが出てたりする。 神経衰弱のため精神病院に入っていたアンソニー(ルーク・ウィルソン)が悪友のディグナン(オーウェン・ウィルソン)と再会し、友人のボブも含め3人で書店に強盗に入る。金を奪った彼らは田舎町のモーテルに逃亡するが、そこでアンソニーはイネスというメイドと恋仲になってしまう。しかし彼らは再び故郷の街に戻ることになり、ディグナンのボス(カーン)に誘われるがまま、ある工場の金庫から金を盗むことにするのだが…というのが大まかなストーリー。前半はアートっぽい映画かな、と思わせておいて中盤は「サイドウェイ」みたいになり、後半は「ライフ・アクアティック」ばりのドタバタ劇になる話の流れはかなり一貫性に欠けているが、テンポの速いス
映画評 「FEVER PITCH」を観た フォックスのラブコメディ「FEVER PITCH」を観た。主演はドリュー・バリモアとジミー・ファロンで、監督はピーター&ボビーのファレリー兄弟。「メリーに首ったけ」なんかのお下劣路線で名を馳せたファレリー兄弟にとっては異色のストレートなコメディになるのかもしれないが、彼らの作品はあまり観たことないのでよく分かりません。一応それなりに低俗なネタが出てきます。そして原作は「ハイ・フィデリティ」や「アバウト・ア・ボーイ」で知られる作家ニック・ホーンビィ。以前にもこの原作は「僕のプレミア・ライフ」なんて邦題で映画化されてるとか。原作は弱小サッカーチームであるアーセナルの勝敗に一喜一憂するファンの心理を描いたノンフィクションだったのに対し、映画は例によって舞台をアメリカに移し、弱小野球チームであるレッドソックスのファンを題材にしたフィクションになっている。これじゃ原作とまるで別物じゃないか? なお原作はアーセナルが久しぶりに優勝するところで終わってるが、映画も撮影中にレッドソックスが何と86年ぶりに優勝してしまったため、急いで結末を書き換えることになったらしい。これに対し旧来のレッドソックスのフ
映画評 「シン・シティ」を観た 明日(4/1)の公開日が待ちきれないので、夜の先行公開で「シン・シティ」を観る。9時半の回を観ようとしたら既に売り切れだったので10時のやつにすることに。それだけ皆の期待度が高い作品なんだろう。10時の回も場内は観客で一杯だった。客層はコミックのファンというよりも普通の若者グループやカップルが多かったかな。本編開始前に「エピソード3」の予告編が流れてダース・ベーダーが一瞬だけ登場したら、皆が一斉に拍手してたのが面白かったっす。 そしてついに姿を現した劇場版「シン・シティ」。ロバート・ロドリゲスが監督組合を脱退してまで作ったこの映画は原作に徹底的に忠実に作ることを目的としており、原作者のフランク・ミラーが共同監督としてクレジットされているほどである。白と黒のコントラストが強烈な原作そのままに、映画のヴィジュアルもまた灰色を省いた白黒を使い、赤や青といった原色を効果的にワンポイントで入れたりしている。画面構成も原作に近いものになっており、ストーリーやセリフはほとんどそのまんま。原作のファンとしては嬉しい限りの大サービスといった感じか。「コンスタンティソ」を作った連中に見せてやりたい。
映画評 THE YES MEN WTO(世界貿易機関)などのメンバーになりすまし、世界中のテレビや講演会で珍妙な言動を繰り広げる社会派イタズラ集団「イエス・メン」の活動を追ったドキュメンタリー「THE YES MEN」をDVDで観た。監督は「素晴らしき映画野郎たち」のクリス・スミスら3人。マイケル・ムーアもちょこっと出てる。 イエス・メンの中心メンバーとなるのはビデオゲーム「シムコプター」にパンツ姿の男たちがゾロゾロ登場させるプログラムを書いていたアンディ・ビクルバウム(仮名)と、G.I.ジョー人形とバービー人形の声を入れ替えて店に置いてくるという活動をしていた「バービー解放戦線」のマイク・ボナーノ(仮名)の2人。彼らはまずインターネットで「www.gwbush.com」というサイトを立ち上げ、ジョージ・W・ブッシュの公式サイトをおちょくることに成功する。それからWTOの公式サイトを完全にコピーしてパロディ化したサイト(見比べてみよう)を立ち上げるのだが、そのあまりのそっくりさにダマされた世界中の人々から講演会の招待を受けたことをきっかけに、彼らはWTOの職員になりすまして滑稽なプレゼンテーションを行い、先進国の利
映画評 BORN INTO BROTHELS 「スーパーサイズ・ミー」などを抑え、こないだアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー作品「BORN INTO BROTHELS」を観た。 舞台となるのはカルカッタの売春地区。ここの生活環境は非常に劣悪で衛生状態もひどく、最貧層の人たちが狭い部屋にひしめきあって暮らしている所である。わずかな稼ぎを得るために女性は男たちに身を売り、ここに産まれた子供たちはろくに教育を受けることもままならないまま、幼い頃から親に虐待されながら朝から晩まで働かされるのだ。彼らにとってきちんとした学校に通っていい職に就くというようなことは夢のまた夢であり、特に女の子の場合は彼女の母や祖母がそうだったように、売春業に身を染めるしか生活の手段がないということがほぼ決まってしまっているのだ(作品中には14歳で親に売春を強制される子が出てくる)。10歳くらいの子がせっせと水くみをしながら「僕の人生に希望なんてないから…」と語る姿は胸を打つ。 ちなみに子供たちの父親は何をしているかというと、母親にカネをせびっている以外は酒をちびちび飲んでるか、ハシシをきめてラリってるだけ。まさしく典型的な「ヒモ」であり、家長的な祖母や
映画評 MILLIONS ダニー・ボイル監督の最新作「MILLIONS」を観る。「トレインスポッティング」や「28日後」などのキワモノ的作品も撮っているボイルだが、今回の作品は非常にストレートで心暖まる家族向け映画になっている。 舞台となるのはイギリスのとある住宅地。母親を亡くし、父親とともに引っ越してきたアンソニーとダミアンの幼い兄弟はすぐに新しい家に夢中になる。そしてダミアンは家の裏にある線路の横に段ボールの家をつくり空想にふけるが、ある日突然そこに大金の入ったボストンバッグが降ってくる。親や警察に伝えればお金が没収されてしまうと考えた彼とアンソニーは大金を自分たちで使うことにするのだが、やがて英ポンドがユーロに切り替えられ、彼らのお金が使えなくなる日が近づいてくる…というのが大まかなストーリー。無垢な兄弟(特にダミアン)が大金を手にしたとき、彼らはどのようなことに使っていくのかという光景を、社会風刺などは殆ど絡めずに率直に描いていっている。ダミアンはキリスト教の聖人にやたら詳しいという設定だが特に宗教色が強いわけでもなく、むしろ彼の前に実際に登場する聖人たちが非常に人間くさく、話に笑いを沿えている。
映画評 ダブリン上等! 「ダブリン上等!」(INTERMISSION)をDVDで観る。何の特典も付いてないDVDなんてこっち来てから初めて見た。 内容は、まあ、「トレインスポッティング」になろうとしてなれなかった多くの作品の1つといった感じでしょうか。なんかどの登場人物にも感情移入できないというか、奇をてらうあまり率直にストーリーを語ることができてない印象を受けてしまう。とりあえずパブ帰りの酔っぱらいが撮影したようなカメラの揺れはどうにかしてくれ。グラグラ揺れ過ぎだっての。あと覆面をしたまま話すシーンが多いのも問題だろう。暴力が日常茶飯事で、パブかクラブに行く以外何も娯楽がないダブリンの田舎っぽさはうまくとらえてると思うけど。 コルム・ミーニーやケリー・マクドナルド、コリン・ファレル、キリアン・マーフィーといったそれなりに豪華なキャストが出てて、ニール・ジョーダンが製作やってるんだからもうちょっと出来のいいものが欲しかった。
映画評 THE WEATHER UNDERGROUND 70年代の左翼ゲリラ「ウエザーメン(別称ウエザー・アンダーグラウンド)」を扱ったドキュメンタリーで、アカデミー賞にもノミネートされた「WEATHER UNDERGROUND」をDVDで観る。大学間の学生団体から過激派が脱退し、当時世界中で起きていた革命や暴動に感化されてウエザーメンが結成されたいきさつから始まり、その活動や衰退などを当時のメンバーが淡々と語っていく内容。ちなみに作品中の音楽にはフガジのイアン・マッケイが関わっていた。 ボブ・ディランの歌詞「風向きを知るのに天気予報士はいらない」からとった団体名や、ヒッピーのグルであるティモシー・リアリーの脱獄などでアメリカでの知名度は高いウエザーメンだが、他に行ったことはマニフェストの朗読や無人の政府施設の爆破くらいで、他の団体ほど凶悪なことはあまりやってない(異論はあるだろうが)。ブラック・パンサー党にも刺激をうけ、白人の若者の間に革命思想を広めようとするが、当のブラック・パンサーには嫌われていたとか。確かにメンバーは白人ばかりだし、田舎の金持ちの娘などが所属してたわけで、政府により幹部が組織的に暗殺されていったブラック・パンサー
映画評 アビエイター アカデミー賞が過ぎて久しいが、今更ながらハワード・ヒューズの伝記映画「アビエイター」を観に行く。俺の周囲では褒める人が誰もいなかったが、スコセッシ&ディカプリオの「ギャング・オブ・ニューヨーク」は個人的には佳作だと思ってます。もっともあれはダニエル・デイ=ルイスが他の役者を完全に凌駕した怪演を見せてくれたおかげで満足できる内容になってたのだが。そして今回は晴れてレオ様が主役の座に躍り出たわけだが、残念ながら作品の出来自体は「ギャング〜」の足下にも及ばないと言わざるを得ない。主人公がいちばん若くて富を持っていた時点から話が始まって、あとは3時間ずっと下り坂を落ちていくストーリーというのは、いくらなんでもキツいものがあるんじゃないでしょうか。 この映画の最大の問題点は、主人公であり当然最も多くスクリーンに登場するヒューズの頑固さやエキセントリックさを強調しすぎたあまり、観客がまるで共感できないキャラクターにしてしまったことにある。自分の直感のみを信じてハリウッドや航空業界の体制に立ち向かっていく姿は見方によっては非常にヒロイックなものになったかもしれないが、本作では周囲のまっとうな意見を
映画評 SLASHER ジョン・ランディス初のドキュメンタリー作品「SLASHER」をDVDで観る。劇場用ではなくテレビ用のものらしい。かつては「アニマル・ハウス」や「ブルース・ブラザース」などの傑作を作っていたランディスも最近は失敗作続きで、しまいにはドクター・オクトパスに惨殺されてたりするわけだが、なんかこの作品も監督の意欲と実際の出来がズレたものになってしまっていた。 タイトルの「スラッシャー」とは別に猟奇犯とかのことではなく、車のセールで客との値段交渉を行う販売員のこと。最初にワザと高い値段を設定しておき、そこから値段を切り下げる(=スラッシュ)ことで客に割安感を与えて車を買わせるのが彼の仕事である。この作品ではカリフォルニアに住むフリーのスラッシャーであるマイケル・ベネットがメンフィスで3日間のセールを委託され、いろいろ手を尽くして車を売りさばいていくさまが紹介されていく。(値段について)ウソをつくことが商売である彼の生き様と、アメリカの歴代大統領がついてきた数々のウソを重ね合わせるのがランディスの当初の目的だったらしいが、大統領の映像クリップの使用料がバカ高いことから断念したとか。一応ちょっとだけ