映画評 「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」鑑賞 昨年いろいろ高い評価を受けたインディペンデント作品。 舞台は名前の通りフロリダで、ディズニーワールド近くの安アパート(モーテル)群に住む人々の姿を、そこに住む6歳の少女ムーニーの視点で描いたもの。あまり確固としたストーリーはなくて、貧しくもその日暮らしで元気に生きようとする住人たちと、アパートの世界しか知らない子供たちの無邪気な行動、それでも忍び寄ってくる貧困の影、といったものが淡々と語られていく。 ムーニーは無邪気であるものの、話の初っ端から他の住民の車にツバをひっかけるようなクソガキで、他の子供たちとともにアパートの配電盤に潜り込んで停電を巻き起こしたり、さらに非道いイタズラをしたりとやりたい放題。アパートの管理人のボビーはそんな彼女たちに手を焼きながら、時には厳しく叱ったり、時には変質者から守ったりと親代りの身となってアパートを切り盛りしている。 ムーニーの母親のヘイリーたち(シングルマザーばかり)も生活がいいかげんといった意味では子供たちと似たり寄ったりで、安く仕入れた化粧品を通りで売りさばいて糊口をしのぎ、生活が逼迫してくると売春にも手を出す始末。彼女たちの生活とサブ
映画評 「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」鑑賞 公開中なので感想をサクっと。ネタバレ注意。 ・まあ今回のが前後編になることは以前から周知されていたし、前半だけの時点で評価を下すのは適切ではないのかもしれない。でもこの作品って今までのマーベル映画が向かってきた1つの結集点であるわけで、それに見合うカタルシスがなんか感じられないのよな。たとえば仲たがいしていたキャップとスタークは後半において一致団結するかもしれないが、それはむしろ前半に持ってきて、「シビル・ウォー」からの流れにひと段落つけてから新しい脅威に立ち向かわせたほうが良かったのではないかとか。 ・それでその脅威となるサノスですが、もともとコミックでもそんなに面白いキャラクターではないと個人的に思うのです。ラスボスっぽいのにダークサイドと違って策士ではないというか、どうも短絡的というか。映画ではコミックの設定である「死の女神を喜ばせる」という目的(あれもあれで感心しない設定だが)がなくて、宇宙を救うために人口を半分に減らすという目的をもって行動しているものの、あれだけ無数の惑星や次元があることを今まで映画で見せてきたのに、「宇宙は有限だ」とか言われてもピンとこないのよな。む
映画評 「THE FOREIGNER」鑑賞 ジャッキー・チェンがいつもと違って、寡黙な復讐者を演じたことで話題になったサスペンス。これ日本公開いつだ?以下はネタバレ注意。 中華系ベトナム人のクアンは中越戦争のときに国を離れてイギリスに移り、そこで生まれたティーンの娘を育てつつ中華料理屋を運営していた。しかし娘の送り迎えをしていたある日、IRAの分派が仕掛けた爆弾テロに彼と娘が巻き込まれ、娘は命を落としてしまう。悲しみに打ちひしがれるクアンは、地道に警察などに足を運び、彼の娘を殺した連中の正体を知ろうとする。実はクワンはベトナム戦争のときにアメリカ軍の特殊部隊として訓練を受けた元エージェントであり、ゲリラ戦の大ベテランであったのだ!そして北アイルランドの政治家であるリーアム・ヘネシーがテロと何らかの関係があると直感したクアンは、ヘネシーから情報を聞き出し、彼の娘を殺した者たちに復讐するために単身ベルファストへと向かうのだった…というあらすじ。 クアンはベトナム戦争で戦った経験があって、1984年にイギリスに亡命する前に11歳と8歳の娘がタイの海賊に殺されたという過去が語られることから、1954年生まれのジャッキー・チェンとい
映画評 「ブラックパンサー」鑑賞 公開中なので感想をざっと。以下はネタバレ注意。 ・冒頭の戴冠式とかを目にして思ったのは、なんかマーベル的というかディズニー的な作品だなということ。歌と踊りがあってカラフルなあたり、「ライオン・キング」や実写版「ジャングル・ブック」で培ったノウハウを活かしているというか。それ自身は悪くないことだけど、ディズニーとマーベルの融合はこういう形で進んでいくのかな、と思いました。 ・話のプロット自体は典型的なものではあるものの、キャストに勢いがあっていいですね。特に(比較的無名な)女性キャストたちが生き生きと演技してるので観ていて楽しかった。「シビル・ウォー」ではMCUで何やってんだか良く分からなかったマーティン・フリーマンもいい感じだし。 ・でも尺はもうちょっと削ってもよかったかも。ハーブを飲んで祖先に会うシーンが3回繰り返されたのはさすがに冗長だと感じましたよ。そんなに複雑なプロットではないのに、説明過多になっているシーンが多いというか。 ・話の展開は「ライオン・キング」に似ているんだけど、現在のアメリカのアナロジーとしても通じるんじゃないかと、ふと思いました。王となる権利はいちお
映画評 「LUCKY」鑑賞 邦題はまんま「ラッキー」で日本では3月公開。昨年91歳にして亡くなった名優ハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作にして実質的な遺作。 アメリカの片田舎に住む老人ラッキーは高齢ながらも比較的健康で、彼を気にかけてくれる町の住民に止めろと言われながらも、タバコを日に何本も吸うようなガンコ老人だった。しかしある日自宅で倒れたことで、自分にも死がいずれやってくることを彼は悟り、それに恐れを抱きながらも彼なりの人生を送ろうとするのだった…というあらすじ。 いわゆる難病ものとかではなく、大きな展開があるわけでもなく、ただラッキーの日常が淡々と描かれる内容になっている。一度倒れたとはいえラッキーは酒場でケンカを売ろうとするほどピンピンしてるし、老人介護とも無縁のまま、人生の終わりに近づいた男性の話が語られていく。 つうかこれスタントンのために作られたような映画なんですよ。監督も脚本家もこれが初仕事だし、スタントンのために皆が協力して撮った作品という感じ。彼が実際に海軍で沖縄戦の戦車揚陸艦に勤務していたこととかも脚本に組み込まれているし、電話の受話器を持って顔の見えない誰かと長々と話すシー
映画評 「BATTLE OF THE SEXES」鑑賞 今年のFOXサーチライトによるアカデミー候補作品だったはずが、そのお株は「スリー・ビルボード」と「シェイプ・オブ・ウォーター」に奪われ、日本公開もいつになるか分からないから(7月?)観てしまったよ。 女子テニス界の草分け的選手であるビリー・ジーン・キングを主人公にした作品で、70年代初頭においてキングは世界的な大会で活躍する選手であったが、当時のテニス界は男女の賞金の格差が激しく、女性のテニスは軽視されて男性よりも圧倒的に少ない賞金が与えられていた。それに憤慨したキングは女性選手だけのツアーを開催し、スポンサーもつけてそれなりに人気を博する。一方40年代に活躍した男性選手のボビー・リッグスはギャンブルで私生活に問題を抱えていたが、資金を得る方法として女性選手との試合を起案し、キングに試合を持ちかける。そのギミックっぽさを嫌ったキングに試合を拒否されたリッグスは、キングのライバルであるマーガレット・コートと勝負をして圧勝し、さらにキングとの勝負を要求する。このままでは女性選手の名誉にかかわることになると感じたキングはリッグスの挑戦を受け入れ、ふたりは全米が注目するなか男女の勝負に挑むの
映画評 「Columbus」鑑賞 昨年のサンダンス映画祭で公開されて高い評価を得た作品。 舞台となるのは、著名な建築物が多いことで知られるインディアナ州のコロンバス。そこに住む建築家の父親が倒れて意識不明の状態になったことから、アメリカを離れて韓国に住んでいた息子のジンはコロンバスへとやってくる。父親の容態が変わらないためコロンバスに滞在することになったジンは、地元の図書館で働くケイシーという少女と知り合うことになる、というあらすじ。 監督のコゴナダ(Kogonada)は主人公のジンと同じく韓国系アメリカ人で、小津安二郎を大変にリスペクトしているほか、キューブリックやウェス・アンダーソンなどに関するビデオ・エッセイを作っていた、という経歴らしい。つまり映画批評から映画製作に入った人になるわけだが、奥行きを生かした画面の構図の見事さとか、自信をもってゆったりと進むストーリーテリングとか、とにかくこれが初監督作だとは思えないほど素晴らしいのですよ。普通のサンダンス系映画かな、と思って観たらその映像の美しさに驚愕してしまった。 どのシーンも映画の教科書で使われてもおかしくないほどの巧みな構図というか。監督デビュー
映画評 「明月幾時有」鑑賞 今年の第一弾は香港映画な。自分の詳しい分野ではないが、題材に興味があったのと良い評判を目にしたので。英題は「OUR TIME WILL COME」。 舞台は1941年、日本帝国軍占領下の香港。そこで抗日レジスタンスは日本軍の監視の目をくぐり、作家や芸術家といった知識人たちを中国本土へ脱出させる活動を行っていた。香港で母親と暮らす方蘭は小学校の教師を務める素朴な女性だったが、家の二階を作家の夫婦に貸していたことで、レジスタンスに彼らの脱出の手助けをすることになる。これがきっかけで方蘭はレジスタンス活動に身を投じていくことになる…というあらすじ。 方蘭は実在した女性で、いちおう事実に基づいた話であるという説明がされるものの、どこまでが史実でどこまでが脚色なのかはよく分かりません。レジスタンスの若きリーダーである劉黑仔(これも実在の人物)がやたら強くて、ピストル1つで憲兵隊の小隊を全滅させたりしてまして、まあそういうのは誇張されてるんでしょう。本国では香港の中国への返還20周年にかこつけて宣伝・公開されたらしいが、血湧き肉躍るプロパガンダ映画というよりも、戦争の流れに翻弄される市民たち
映画評 2017年の映画トップ10 今年はアメコミ映画(スーパーヒーロー作品)が多数公開された年であったことを考慮して、いわゆる『一般作』5位と『スーパーヒーロー作品』映画5位を分けて並べていきます: <一般映画トップ5(こちらは順不同、観た順に並べる)> ・「メッセージ」 今年は真面目に考えさせられるSF映画の当たり年であった。下の「ゲット・アウト」もSFといえばSFだし。「猿の惑星」「シンクロナイズド・モンスター」なども良作だったが、映像の美しさや話の構造の巧みさもあってこれを代表に挙げる。 ・ 「T2 トレインスポッティング」 ちゃんと前作のクオリティに適うものになるのか?という不安を抱きながらずっと鑑賞していた作品であった。結論から言うと前作には届かないものの、前作のキャラクターたちがどう成長し、どう壁にぶち当たったかを丁寧に描き、きちんと話をまとめたという点で、他の続編(「ブレードランナー2049」「最後のジェダイ」など)よりも優れた作品であった。 ・ 「ディストピア パンドラの少女」 ゾンビ映画もネタが枯渇したかと思われた時に出てきた秀作。これも考えさせられるSF映画でしたね。世間的な評価はあまり高くな
映画評 「WORLD OF TOMORROW EPISODE TWO: THE BURDEN OF OTHER PEOPLE'S THOUGHTS」鑑賞 タイトルが長すぎてきちんと表示されないかな?「WORLD OF TOMORROW EPISODE TWO: THE BURDEN OF OTHER PEOPLE'S THOUGHTS」です。 ドン・ハーツフェルトにおる、アカデミー賞候補になった短編アニメーション「「WORLD OF TOMORROW」の続編。22分ほどの短編な。 前作の主人公である少女エミリーのもとに、また未来のエミリー(前作とは別のもの)が現れる。エミリー6と呼ばれる彼女はエミリーの第三世代のクローンのバックアップであり、エミリーの記録を保持するために作られたのだが、その記憶が不完全なものであったために、未来からエミリーに会いに来たのだという。そしてエミリー6はエミリーの記憶を得るために二人の記憶を連結させ、二人はお互いの記憶の世界をさまよっていく…というあらすじ。 話の設定は前作とよく似ているものの、直接的なつながりはなくて、前作がどちらかといえば未来のエミリーの外部の環境を扱ったものだったのに対し、今回はエミリー6の記憶が主なテーマになっている。エミリー6はエミリーの記憶の容器として造られたものの、彼
映画評 「A Ghost Story」鑑賞 ことし高い評価を映画を得た作品。監督のデヴィッド・ロウリーって、ディズニーの「ピートと秘密の友達」なんてメジャー作を撮ってる一方で、「UPSTREAM COLOR」の編集をやったりしてる人なのね。以下はネタバレ注意。 舞台となるのはテキサスの郊外にある小さな平屋。そこには若いミュージシャンの夫とその妻がつつましく暮らしていたが、ある日夫は交通事故で命を落としてしまう。だが夫は幽霊として蘇り、「あの世」に行く機会も断り、悲観にくれる妻の待つ家へと戻る。しかし妻の目に夫は見えず、夫もまた幽霊として妻を眺め続けることしかできなかった。やがて妻は家を去るものの、夫の幽霊は家に留まって、ひたすら何かを待ち続ける。そして家にも様々な変化が訪れ、幽霊も時を超えて物事を眺められるようになり…というあらすじ。 幽霊が出てくるといってもホラーではないよ。かといって「ゴースト」のようなロマンチックな話でもなくて、夫の幽霊の外見は上のポスターにあるように、白いシーツをかぶっただけの姿。いちおう物を操ることはできるものの、声を発せず、妻とコミュニケーションをとろうともせず、ただ妻の姿や家に起きる変化を傍観
映画評 「BUSHWICK」鑑賞 デイヴ・バウティスタ主演のアクションサスペンス。あまり期待しないで観たら結構面白かった。 舞台となるのは題名通りニューヨークはブルックリンのブッシュウィック地区。そこに住む女学生のルーシーは恋人と地下鉄の駅を出ようとしたところ、突然地上からは銃撃戦の音と爆発音が鳴り響き、火だるまとなった人物が飛び込んできた。慌てて二人が出口に向かうとそこは戦場のようになっており、何者かの集団と住民たちのあいだで銃撃戦が行われていた。ルーシーの恋人は様子を伺いに外へ飛び出すものの、爆発に巻き込まれて死んでしまう。一人となったルーシーは自宅を目指すものの、重武装した兵士やギャングに襲われ、路地裏の小さな地下室へと逃げ込む。そこに住むのは元兵士のスチュープであり、彼に助けられたルーシーは二人で彼女の家へと向かい、混沌とした物事の真相を把握しようとするのだが…というあらすじ。 ネタバレになるけど言ってしまうと、ブッシュウィックに侵攻してきたのはテキサスを中心とする南部の市民軍で、ふたたびアメリカ合衆国から離れることを大統領に認めさせるために北部の州を襲撃したのだという。ブッシュウィックが狙われたのは非白
映画評 「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」鑑賞 ネタバレせずに語ることは難しいけど、まだ観てない人も多そうなので白文字にしますね。個人的にはどうもしっくりこない内容であったよ。 (以下白文字) ・これ言ったら元も子もないんだろうけど、ファースト・オーダーってなんであんなに強大なんだ?前回の銀河帝国だって武器や軍艦は共和国のものをそのまま流用してあそこまで大きくなったのに、帝国の残党であるファースト・オーダーはたかだか30年で帝国以上の装備を揃えて、共和国軍を完全に駆逐する寸前まで行ってるわけ?まあ話の都合上、強大な敵が必要だったのは分かるのだが圧倒的な戦力の差にはずっと疑問を抱きっぱなしだったよ。 ・さらにカイロ・レン(ベン君)には10年以上前からスノークの魔の手が忍び寄っていたわけで、これを考えるとルークたちの勝利してる期間て本当に短かかったなあ。これでスノークがいかに恐るべき敵であるかがきちんと描かれればよかったのに、結局はカイロ・レンのかませ犬であったよ。じゃあ代わりにカイロ・レンいかに恐るべき敵であるかが描かれるかと思いきや、相変わらず猫背の情緒不安な若造で、スノークの親衛隊を倒すのに苦労してる有様だし。あんなのがリー
映画評 『ジャスティス・リーグ』鑑賞 本日公開なので感想をざっと。以下はネタバレ注意。でも上のポスターでバレてるように、スーパーマンでてくるよ!もはや公然の秘密! ・個人的には大きな問題だと思ったことが2つあったので、先に挙げていく。1つは映像が相変わらずのザック・スナイダー画になっていて、グリーンスクリーンの前で撮影しているのがバレバレという点。色合いも汚くなっている。「ワンダーウーマン」だとセミッシラなんてもっと美しく撮れていたじゃん?それがここではCGの添加物だらけの映像になっていて、クオリティが明らかにダウンしていたのが残念だった。 ・もう1つはダニー・エルフマンの音楽が単調かつ耳障りな点。重厚なストリングスが延々と続いて、メリハリがないのよ。自身が作曲したバートン版バットマンのテーマも流用してるんだけど、あの曲調って今回の映画には合わない気がするのよな。ダニー・エルフマンは嫌いじゃないけど、作風の引き出しが狭いのではという考えを最近抱いているのです。ハンス・ジマーのワンダーウーマンのテーマを持ってきたのは当然として、ジョン・ウィリアムスのスーパーマンのテーマを一瞬使ってたのはイイネ!と思ったけど。あと作曲家
映画評 「MOTHER!」鑑賞 ダーレン・アロノフスキーの新作。完全に合法的にスクリーナーを入手したので観た。何を話してもネタバレになってしまう作品なので、以降はネタバレ注意。 (ネタバレ注意!) 舞台となるのは人里離れた草原のなかにポツリと建つ一軒家。そこには小説家の男とその妻が住んでおり、男がライターズブロックに苦しんでいるなか、妻は古い家(彼らが買い取ったものらしい)の修繕に勤しんでいた。そんなある晩、ひとりの見知らぬ男性が彼らの家を訪ねてくる。夫は彼を気兼ねなく迎え入れ、妻はその事態に困惑しながらも彼を接待する。そして次の日、今度はその男性の妻がやってきた。最初はふたりをもてなす小説家の妻だったが、やがてふたりの振る舞いは客人としての限度を超すようになり、さらにその息子たちもやってきて…というあらすじ。 あらすじからもわかるように、登場する人物には一切名前がついておらず、劇中でも「あなた」とか「彼」といった感じで人が呼ばれるだけ。話の展開も明確なプロットが存在せず、時間が経つにつれて物事がどんどんカオス化していく(ただし実は2部構成になってるので途中でいったん平穏が訪れる)。途中観ていてなんとなくイヨ
映画評 「Brawl in Cell Block 99」鑑賞 日本でもカルト的人気を誇るホラー西部劇「トマホーク ガンマンvs食人族」のS・クレイグ・ザラー監督の2作目。以降はネタバレ注意。 ブラッドリー・トーマスは元アル中で、働いていた自動車整備工場を経営難のためクビになってしまう。さらに帰宅した彼は妻のローレンが浮気をしていることを知るが、ブラッドリーは彼女を許し、金を稼ぐために麻薬の運び人となることを決意する。それから18ヶ月後、運び人として得た金でブラッドリーは裕福になり、ローレンも彼の子供を妊娠していた。そんなとき、彼の雇い主のところにメキシコのギャングから大口の取引の話がやってくる。ギャングを信用しないブラッドリーだったが、雇い主の要望もありギャングのメンバーと一緒に麻薬を引き取りに行くものの、警察の張り込みに遭って逮捕・収監されてしまう。中犯罪刑務所で7年という判決を受けて服役するブラッドリー。しかしギャングのボスの使い人が面会に訪れ、彼が逮捕されたことで大きな損益が出たため、それを償うためにレッドリーフ重犯罪刑務所に服役している別の囚人を殺害するよう命じられる。その使い人はローレンを誘拐しており、ブラッドリーが命令に従わなけれ
映画評 「マイティ・ソー バトルロイヤル」鑑賞 邦題は大目に見るとしても、字幕まで「Contest of champions」を「バトルロイヤル」と訳さなくてもいいんじゃないですかね?以下はネタバレ注意。 ・変に力が入って中途半端な出来だった前作から、もっと娯楽路線になって良かったんじゃないですか。初日はお客さんたくさん入ってて、あちこちのシーンで笑いが漏れていたし。 ・いままでのMCU映画にありがちだった、今後の作品のために伏線を貼るようなことはなくて、むしろ回収していってる内容か。「AOU」でハルクが最後どうなったかなんて覚えてなかったので、こういうのは有難い。でもこの作品のなかでは結構な天変地異が起きているわけで、これ観てない人は「インフィニティ・ウォー」で困惑したりしないだろうか。 ・宇宙が舞台ということもあり、ノリは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」に近い。観ているときは楽しいんだけど、じゃあアメコミ映画として画期的な作品かというとそうでもないのも、あの作品に近い。まあ娯楽映画として割り切ってしまえばいいんだけどね。勝つ方が分かりきっている戦闘シーンを派手にやる必要はあったのかな、とも思うが。むしろいちばん最後
映画評 「ブレードランナー 2049」鑑賞 ご存知のように前作は狂信的なほどのカルト人気を誇る作品でして、自分のようなごく普通のファンが迂闊な感想を述べるとブレラン警察に吊るし上げをくらうような気もしますが、チケット代も払ってるんだし感想をざっと述べる。以後ネタバレ注意: ・結論から言うととても丁寧に作られたSF作品であってよく出来ているし、前作のファンも十分に楽しめる作品じゃないでしょうか。アクションも多い一方で意味の深い要素も残し、監督の前作「メッセージ」同様にいろいろ考えさせられる内容になっている。 ・その反面、難しいといえば難しい内容になっているわけで、アメリカや中国で興行的に苦戦したのは無理もないかなと。大衆が観に行くブロックバスター的作品というわけではないからね。次から次へと謎が出てきては明かされていく展開は飽きさせなく、3時間弱の長尺がまったく気にならないほどであったものの、それでも途中の擬似記憶の説明あたりがちょっと分かりにくかったのは俺だけ?主人公に説明されたことについて、俺は逆の理解をしておりました。 ・最近の干ばつのニュースを見てるとね、未来のカリフォルニアって大雨とか雪が降らずにむしろ日照りの世界
映画評 機内で観た映画2017(後半) またヨーロッパへ出張に行っていたので、飛行機のなかで観た映画の感想をざっと。尺が短い・機内鑑賞用の編集(墜落シーンとか)がされてない・集中して観なくても話がわかりやすい、といった理由で飛行機ではアニメーションをよく観るようにしてます: ・「ボス・ベイビー」:モザイクのかかった性器が出てくるのは、ドリームワークスやピクサーの作品のなかでは初ではないだろうか。兄と弟のケンカで最後まで話を持っていけばよかったんだろうけどね、ネタが尽きたのか途中でふたりが協力し合う展開になるのが残念。7歳の兄は現代っ子なのに、カセットテープの使い方が非常に手慣れているのは何故なんだ。アレック・ボールドウィンが「摩天楼を夢見て」の「Put That Coffee Down」のセルフパロディをやるところだけは良かった。 ・「カーズ/クロスロード」:トレーナーが出てきたところで展開が簡単に読めてしまって、全体的に予定調和のお話でございました。何がやりたいんだか分からなかった前作に比べればマシな内容にはなっているものの、ポール・ニューマンへの追悼だけで話を引っ張りすぎだろう。ピクサーの作品のなかでは「カーズ」って
映画評 「THE BIG SICK」鑑賞 「フランクリン&バッシュ」や「シリコン・バレー」などで日本でもお馴染み(?)のコメディアン、クメイル・ナンジアーニの伝記的映画。奥さんのエミリーとの出会いを描いたもので、脚本も二人が執筆したものになっている。 シカゴに住むパキスタン系のクメイルはウーバーの運転手をしながらコメディクラブに出演しているコメディアンで、ある晩にエミリーと知り合って二人はすぐに恋に落ちる。しかし彼の両親は伝統的なムスリム教徒で、パキスタンの伝統にのっとってパキスタン系の女性とクメイルを結婚させようと躍起であり、さまざまな女性をクメイルに紹介していた。このためクメイルは白人のエミリーのことを両親に紹介できず、それがたたって二人の仲は険悪なものになってしまう。そんなときにエミリーが謎の疾患によって昏睡状態になってしまい、クメイルは彼女の看病にやってきたエミリーの両親に出会うことになる…というあらすじ。 監督は「ザ・ステイト」出身のコメディアンのマイケル・ショワルターだが、プロデューサーをジャド・アパトウが務めていて、全体的な雰囲気もアパトウ作品っぽいかな。ドラマとコメディの比率が8:2くらいなとことか、微妙
映画評 「ダンケルク」鑑賞 ・クリストファー・ノーラン監督作品で、それなりの予算がかかってるので大作映画であることは間違いないわけだが、登場人物の大半に名前がなかったり、無名に等しい役者を起用しているあたりはバットマン三部作や「インターステラー」に比べてもかなり実験色の強い作りだな、という印象は受けた。当初はインプロビゼーションを多用した撮影になるという話もあったようで、そう考えると隙の多い脚本もまあそういうものかなと思われてくる。 ・でも陸・海・空で時系列がずれてるのは個人的には分かりづらいな、とは思いましたが。冒頭にちゃんと説明がされてるとはいえ、昼だった場面が急に夜になったりするのだもの。 ・秒針が刻まれるサウンドトラックも効果的に用いられ、一刻をあらそう撤退作戦の緊迫感はとてもよく醸し出されていたと思う。とはいえやはり登場人物の設定が深堀りされないなかで先頭のシーンがずっと続くため、ノーラン作品としては短尺ながらも若干中だるみするところがあったかな。 ・クレジットには大戦時に実際に救出作戦に用いられ、今回の撮影においても使用されたボートの名前が表記されてました。 ・マイケル・ケインが冒頭に声だけ
映画評 「The Lost City of Z」鑑賞 タイトルだけ見ると「またゾンビものかい!」と勘違いしそうだが、そんなんでは全くなくて真面目な伝記映画。 アマゾンの秘境の探索に心血を注いだ冒険家パーシー・フォーセットの半生を描いたもので、話は20世紀初頭から始まる。イギリス陸軍に所属していたフォーセットは技量を見込まれ、南米のボリビアとブラジルの紛争調停のために両国の国境線の測量を依頼される。親が没落させた家系の出身であるフォーセットは、家の名誉の挽回を狙って依頼を受託し、うだるような暑さのジャングルの奥地へと向かう。そこでは原住民に襲われたりと苦難に見舞われながらも川をさかのぼり任務を達成した彼だったが、そこで陶器の破片や彫像を発見し、かつてアマゾンの奥地には高度に発達した文明が存在したという確信を抱くようになる。フォーセットはその文明の都市を「Z(ゼッド)」と名付け、帰国したのちに学会で発表するものの、他の学者たちには信用されずに嘲笑されてしまう。しかし彼の信念は揺るぎなく、ゼッドの存在を明かすために彼はふたたびアマゾンへと向かうのであった…というあらすじ。 フォーセットはインディ・ジョーンズやチャレンジャー教授のモデルにも
映画評 「COLOSSAL」鑑賞 日本では「シンクロナイズドモンスター」の題で11月に公開予定。アン・ハサウェイ主演の怪獣映画だぞ。以下はネタバレ注意、 ウェブライターのグロリアは酒飲みがたたって職にあぶれ、ボーイフレンドにも愛想をつかされてニューヨークから故郷の田舎へと帰って来る。そこで幼馴染のオスカーに再会した彼女は彼の所有するバーで働くことになるが、それと同時期に韓国のソウルに謎の巨大怪獣が出現する。その怪獣が彼女の分身であることを直感的に悟ったグロリアは、最初は怪獣を使った悪ふざけこそしていたものの、ソウルに多くの損害を出したことを知って反省するが、物事はさらにややこしくなっていき…という話。 確かに怪獣は出てくるものの上記のようなヒネリが加えられているため、怪獣映画というよりもSFコメディに近いかもしれない。そもそもなんで怪獣が出てくるのかとか、グロリアとどういう関係があるのかといったことに深い説明はされなくて、不条理SFというのかな?そんな内容になっている。全体的なノリは「彼女はパートタイムトラベラー」に近いものを感じました。まあアル中の怖さとか、男性のDVなどのメタファーも含まれてるんだろうけど。
映画評 「HOUNDS OF LOVE」鑑賞 今年前半に高い評価を得ていたオーストラリアのサスペンス映画。ケイト・ブッシュの同名アルバムとは全く関係なし。 舞台は1987年のパース。両親が離婚したティーンの少女ヴィッキーは、母親に黙ってパーティーに向かう途中、マリファナを買わないかとジョンとエヴリンというカップルに声をかけられる。実はジョンとエヴリンは少女を誘って監禁し、虐待を加えたのちに殺害するシリアルキラーの夫婦で、ヴィッキーも彼らに勧められた酒を飲んで昏倒し、ベッドに鎖で繋ぎとめられてしまう…というあらすじ。 そんでもってヴィッキーを探そうとする母親の姿とあわせて、いろいろしんどいシーンが続くわけですが、エクスプロイテーション的な内容にはなっておらず、どちらかというと心理サスペンスのような出来になっている。ヴィッキーを虐待するジョンも外に出ればチンピラから借金の返済を迫られる小男であり、エヴリンはジョンに精神的な依存状態で彼に逆らえず、ジョンとヴィッキーの関係に嫉妬してしまうほどの女性として描かれている。話はジョンとエヴリンとヴィッキーの微妙な関係を軸に進んで行くわけだが、心理戦という内容ではなかったな。 どうもジョ
映画評 「ゲット・アウト」鑑賞 日本では10月公開のホラー映画。プロットについて話すと必然的にネタバレになる系の作品なので、以下はネタバレ注意。 これ先に監督のジョーダン・ピールについて語っておくと、もともとThe CWのスケッチ番組「MAD TV」のレギュラーやってたコメディアンで、あの番組が終わったあとに同じくレギュラーだったキーガン=マイケル・キー(なお2人とも黒人と白人の混血)と組んで、コメディ・セントラルで「キー&ピール」という番組を始めた人なんですね。そしたらその番組での人種をネタにした数々のスケッチ(ここで観られるよ)が大ヒットして、2人はいちやく人気者になったのです。そして一緒に「キアヌ」といった映画に主演した一方で、お互いのソロ活動が増えてきて「キー&ピール」は5シーズンで終了。 そのあとキーガン=マイケル・キーはいろんな映画やテレビ番組に出まくってて、ピーボディ賞の司会とかもやってたんだけど、ジョーダン・ピールのほうはメディア露出がグンと減って、何してるんだろうと思ったらホラー映画を監督してるという話が聞こえてきて、そして初監督作として世に出たのがこの「ゲット・アウト」。初週から大ヒットをと