映画評 「LEAVE NO TRACE」鑑賞 今年のベストにちらほら挙げられている映画で、「ウィンターズ・ボーン」のデブラ・グラニックの久しぶりの監督作品。 ウィルと娘のトムの親子はオレゴンの自然公園の山奥で自給自足の生活を営み、自分たちの生活の痕跡を消すことを徹底し、人目を避けて暮らしていた。しかしトムがトレッキング中の人物に目撃されたことで、ふたりは当局に逮捕され、福祉局の保護のもとに置かれることになる。そして住居と仕事をあてがわれる親子だったが、ウィルは人と接して暮らすことを嫌い、文明にも馴染んできていたトムを連れて再び別の場所の山奥へと向かうのだったが…というあらすじ。 いまいち頼りにならない父親と、しっかり者の娘という設定は「ウィンターズ・ボーン」に通じるものがあるな。劇中では明言されていないがウィルは元兵士でPTSDに苦しんでいるようで、彼に支給されている薬物を他人に売りさばくことで多少の現金を得て、たまに町に買い出しに出てくるという内容になっている。 親子は他人との接触を避けているとはいえ、彼らが出会う人々はむしろみんな良い人たちで、福祉局は住居や仕事を紹介してくれるし、別の土地で出会う人たちも彼らの世話を
映画評 「WIDOWS」鑑賞 これも海外で見てきた。邦題は「妻たちの落とし前」らしいが、日本公開はいつだ…いつだ…。「それでも夜は明ける」のスティーブ・マックイーンの監督作品で、1983年のTVシリーズを映画化したものなんか? 舞台はシカゴ。プロの泥棒のハリーは地元のボスであるジャマールから200万ドルを強奪するが、逃走中に警察に追われて3人の仲間とともに爆死してしまう。残された妻のベロニカはハリーの行為を少し知っていただけで深くは関わっていなかったが、ジャマールから200万ドルを返すように強要される。シカゴの議員選挙に出馬して勝つために、ジャマールは資金を必要としていたのだ。金を返す必要に迫られたベロニカは、同じく寡婦となったハリーの仲間たちの妻ふたりと組んで、ハリーの残した別の犯罪プランをもとにして、自分たちも大金を盗み出す計画を立てるのだったが…というあらすじ。 TVシリーズとおおまかなプロットは一緒のようだけど、舞台がイギリスからシカゴに移り、地元の選挙戦という設定が加わっているみたい。よって話自体は比較的シンプルなケイパーものだけど、シカゴの犯罪問題とか、Black Lives Matter的な要素が
映画評 「スパイダーマン:スパイダーバース」鑑賞 年末のこの時期に海外に行くと、ホリデーシーズン向けの大作がいろいろ公開されているのであります。まあ海外に比べて日本での公開が数カ月も遅れている現状は憂れるべきことなのだが、時間をつくって一足先に観てきてしまったのだよ。以下はネタバレ注意。 原作のコミックに詳しい人はキャラクターの姿を見ただけでピンとくるだろうが、話の内容はマイルズ・モラレス版のスパイダーマンを主人公にして、数年前に話題になったマルチバースことスパイダーバースのストーリーを絡めたものになっている。マイルズ君は本家スパイダーマンとは別ユニバースに属する「アルティメイト・スパイダーマン」誌で登場したキャラで、そっちのピーター・パーカーが死んだことを受けてスパイダーマンになった黒人とヒスパニックのハーフ。ピーターの能力に加えて透明になれたり、指先から強力なショックを与えることができるんだっけな。 いっぽうのスパイダーバースは本家スパイダーマンに加えて、マイルズ君を含む多次元のスパイダーマンたちが山ほど登場して共闘したストーリーで、東映版スパイダーマンがレオパルドンに乗って登場したのは日本でも話題になってましたね。そこでグウ
映画評 「ヘレディタリー/継承」鑑賞 今年いちばん怖いと言われたホラー映画、臆病なので家で部屋を明るくして観ました。これネタバレしないと語れないと思うので、以下は注意。 ・ホラー映画だしえげつない描写もあるものの、根底にはやはり崩壊していく家庭のドラマがあるわけで、その中心にいていろいろ大変な目に遭うトニ・コレットの迫真の演技あってこその作品だなと。 ・「シックス・センス」では超常現象に困惑する幸の薄い母親を演じてた彼女、まわりまわって約20年後に同じような役を演じたわけだが、見せ場はこちらのほうがずっと多かったですね。悲痛にくれる顔から驚愕する顔まで一瞬のうちに表情を変えられるのは、多重人格を演じた「United States Of Tara」で培った技技なんだろうな。 ・それに対してガブリエル・バーン演じるパパさんは見事に何にもしないわけで、家族がケンカしてもただ穏便になだめようとする姿が変に現実的で親近感を抱いてしまったよ。当初の設定ではセラピストで、コレット演じる妻は元患者という内容だったらしいが、家族の誰も彼に頼ろうとしないのが皮肉でもある。 ・「継承」というタイトルの通り、家族に脈々と受け継がれるもの
映画評 「OVERLORD」鑑賞 アメリカでこないだ公開されたばかりの作品だけどな、昔のツテを使って合法的に観てしまったのだよ。ふはははは。 舞台となるのは1944年、オーバーロード作戦ことノルマンディー上陸のとき。ボイス二等兵たちは敵陣にパラシュートで降下して古い教会の上にある無線施設を破壊する任務を帯びていたが、乗っていた飛行機が被弾したことで予定よりも前の地点に落下。そこで彼らはフランス人の女性に出会い、彼女の家に隠れることになる。そして外に偵察に出たボイスはそのまま混乱に紛れて教会のなかに入り込むが、そこで彼が目にしたのはおぞましき人体実験がされている設備だった…というあらすじ。 ボイスは黒人兵士という設定だが、ご存知のように第二次大戦中は黒人と白人が一緒の部隊なぞ存在しなかったわけで、歴史考証などは全く関係ない作品です。というか内容はものすごく単純で、 ゾンビ!ナチス!ゾンビ!ナチス! というもの。要するにゾンビを操るナチスと戦う連合軍のお話で、昔だったらウーヴェ・ボルあたりがとびつきそうな題材だが、こちらはJJ・エイブラムスのバッド・ロボット製作ということもあり爆発シーンなどはそれなりに予算のかか
映画評 「THEY SHALL NOT GROW OLD」鑑賞 第一次世界大戦の終結100周年を記念して作られた、ピーター・ジャクソンによるドキュメンタリー。先日イギリスで限定公開されたのだが、今週だけBBCでも配信されていた。 戦争資料館の膨大な量の映像フィルムと出征した兵士たちのインタビューを組み合わせ、戦争の始まりから終わりまでが経験者たちによって1つのナラティブとして語られる構成になっていて、特筆すべきはモノクロの映像が丹念に人工着色され、当時の雰囲気が鮮明に分かるようになっていること。後述するように音声も加えられていることから、ジャクソンはこれを純粋なドキュメンタリーとは見なしていないようだけど、兵士たちがどのような環境で戦争を過ごしたのかがよく分かる内容になっていた。 1914年にイギリスがドイツに宣戦布告したことで両国の戦争が始まるものの、イギリスの若者たちは戦争がどういうものなのかきちんと理解しないまま、同胞意識を持って(若干同調圧力もあったようだけど)次々と入隊を志願していく。みんなイギリス人のステレオタイプそのまんまに歯並びが悪い若者たちは、15歳や16歳や17歳であっても自分は18歳だとウソをつき、軍もそれを黙認して彼ら
映画評 「First Reformed」鑑賞 「タクシードライバー」の脚本家として知られるポール・シュレイダーの監督作。 舞台となるのはニューヨーク州にある、建造250周年を迎えようとするファースト・リフォームド教会。その小さな教会で牧師を務めるアーンスト・トラーは、過去の罪悪感や現世への苦悩に苛まれる孤独な生活を送っていた。そんな彼は教会に通う妊娠中の女性メアリーに依頼され、彼女の夫であるマイケルと話をすることになる。環境活動家であるマイケルは悪化していく地球の自然環境に絶望し、この世に子供を産みだすべきか悩んでいたのだ。彼に明快な答えを与えられないアーンストだったが、そのうちにマイケルは自殺してしまう。メアリーを慰めるアーンストだったが、彼もまた大企業からの募金に気を遣う教会の親団体に絶望していた。そしてマイケルの思想に感化されたアーンストは、とある行動に出ようとするのだった…というあらすじ。 テーマ上、キリスト教の教義にまつわる会話とかカウンセリングの会話とかがいろいろ出てきて、さらに主人公の独白も重なって非常にセリフが多い作品になっているところは脚本家の映画だなあと。ただ意外と宗教的な映画ではなくて、むしろ神が作った
映画評 「ヴェノム」鑑賞 いや笑った笑った。凸凹コンビのバディ映画ではないか! ・よく目にする評判としては「最近のマーベル映画に比べて、20年くらい前のテイスト」というものだが、奇しくも20年くらい前(映画の元になった「Venom: Lethal Protector」が出版されたのが93年)ってコミックでもヴェノムの人気が出すぎて、単なるヴィランからアンチヒーローに転換させようとマーベルが苦心していた時期なので、この映画のモンスターをヒーローに仕立て上げようとするノリと重なるものがあり、やけに懐かしい感じがしてしまったよ。 ・最初の1時間は展開がタルくて、主人公がヴェノムになることなんてみんな知ってるわけだから、主人公が自分の体の変化に戸惑うあたりはまどろっこしく感じられたが、いざヴェノムが登場すると主人公とのどつき漫才!変に気遣いのきくシンビオートとのかけあいは面白く見させていただきました。「俺は落ちこぼれだった!」とか突然言い出すのですもの。 ・異なる性格(?)のふたりが手を組むという典型的なバディものの話だったので、何かに似てるなあ…とずっと思いながら見ていた。ハル・クレメントの「20億の針」より
映画評 「A PRAYER BEFORE DAWN」鑑賞 日本では「暁に祈れ」の邦題で12月に公開される作品。 タイの刑務所に3年ほど服役したイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝を映画化したもの。タイに流れ着いて麻薬中毒になっていたムーアは現地の警察に逮捕され、劣悪な環境の刑務所に送られる。そこでは殺人やレイプや汚職が平然と行われ、言葉も通じずに自暴自棄となったムーアは数々のトラブルに巻き込まれるが、やがて刑務所のムエタイのクラブに入ったことで再び格闘技に打ち込むようになり、外国人として初めて刑務所間のトーナメントに出場することになる…というあらすじ。 話の設定だけ聞くともろに刑務所エクスプロイテーション映画のようで、主人公が拳ひとつで刑務所をのし上がっていくような内容を期待してしまうけど、A24スタジオの作品ということもあり完全にアート寄りの映画になっていた。 アート寄りの内容であっても、例えば「ザ・レイド GOKUDO」なんて似たような設定の傑作もあったし、それなりに暴力シーンも出てくるのだが、いかんせん主人公の心境とかバックグラウンドが全く説明されず、出来事が淡々と描写されていくという作りになっているため、ものすごく突き放さ
映画評 機内で観た映画2018 その2 先月と同じ航空会社を使ったせいか、あまり作品の入れ替わりがなかったような?おかげで映画を観ないでゴルフや麻雀のゲームをやってることも最近は多くなりました。ANAのゴルフゲーム、グリーンオンしてからのボールの転がり方が極端じゃないか?まったくピンの近くにボールが止まらないぞ。まあいいや: ・「オーシャンズ8」:なんか普通のケイパーものといった感じ。犯罪が計画されて、その実行がダラダラと描かれていくような。ソダーバーグの11〜13もすべてが傑作ではなかったものの、もうちょっとスタイリッシュに撮れてて話にメリハリがあっただろ。せめて音楽だけでもデヴィッド・ホルムズに任せるべきであった。 ・「モンスター・ホテル クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!」:ゲンディ・タルタコフスキーのアニメは2Dのほうが好きだけれども(「Sym-Bionic Titan」もな!)、CGになっても彼なりの動きというかスタイルは顕著なので、そんなに悪くはなかったっす。でも話のネタが枯渇している感じはヒシヒシとするのよな。かつて「シュレック」が通った道というか。これ興行的にはかなり成功してしまったのだが、もう4作目はい
映画評 「クレイジー・リッチ!」鑑賞 公開したばかりなので感想をざっと。あまり客が入ってないという話も聞いたけど、休日の六本木で観たせいか席もいっぱいで客のノリも良かったでよ。 ・ラブコメって劇場であまり観たことはないのですが、安心して観られるラブコメの王道のような作りだし、皆で笑えるところもいろいろあって面白かったでございます。 ・経済的格差の激しいカップル、という設定に加えて、家のためにどこまで自分を犠牲にできるのか、という要素を持ってきているところがアジア的なのかな。そして家のために尽くすわけでもなく、かといってアメリカンな個人主義を貫くわけでもなく、うまく話を着地させてるところが巧いなと。 ・ボーイフレンドが寛大すぎるんじゃね?という見方もあるでしょうが、それの比較対象としてもう一組の夫婦を持ち出してきて、勇気を出して問題に立ち向かわないと失敗するよ、というのをきちんと描いてましたね。 ・全体的に小道具の使い方が上手で、麻雀稗は当然のことながら、指輪やイヤリングを使って登場人物の心境を説明しているのも良かったな。 ・姑役のミシェル・ヨーは適材適所。もっと怖くてもよかった気がするけど。主役のコンスタンス・
映画評 「DAVE MADE A MAZE」鑑賞 低予算のファンタジー・コメディ映画。日本では「キラー・メイズ」の邦題で10月に公開予定。 週末を留守にしていたアニーがアパートに帰ってくると、同居しているデイヴが部屋の中心にダンボールで巨大な迷路をつくっていた。呆れたアニーは迷路のなかに入り込んでいるデイヴに出てくるように伝えるものの、デイヴ曰くこの迷路は外見よりも内部が巨大になっており、彼はそこで3日間閉じ込められたままだという。困ったアニーは友人のゴードンを呼び、さらにドキュメンタリー撮影のクルーや浮浪者、観光客なども部屋にやってきてしまう。しびれを切らしたアニーは、迷路の中に入るなというデイヴの警告を無視し、皆を引き連れて迷宮のなかに入り込むものの、そこは確かに巨大な摩訶不思議な空間が広がっており、さらに危険な罠が彼女たちを待ち構えているのだった…というあらすじ。 登場するダンボール製の迷宮は「アントマン&ワスプ」の冒頭に出てくるようなやつで、日本では高校の文化祭でクラスルームに作られそうなチープなもの。内部の壁もダンボールでできているようで、「レイダース」ばりに空飛ぶ刃が仕込んであったり、巨大な折り紙のツルが襲いかか
映画評 「ザ・プレデター」鑑賞 公開中なので感想をざっと。ネタバレ注意: ・まー気楽に観る分にはいい映画なんじゃないでしょうか?劇場にいながらも日曜洋画劇場を吹替で観ているような感覚に陥ってしまたよ。プレデターが出てきて、アクション満載で、ツッコミどころは多いのだけど楽しめる作品というか。観客が何を期待しているかは理解している作り方ですかね。 ・その一方で、観客が本当に「プレデター」という作品に何を期待すべきなのか、ちょっと考えさせるものでもあった。「エイリアン」はリドリー・スコットが復帰したし、「ターミネーター」はシュワルツネッガーが復帰したことでフランチャイズとしての筋がそれなりに通っているかもしれないが、「プレデター」はそれがないので焦点がブレている気がするのよな(シュワはカメオ出演の依頼を断ったらしい)。 ・でまあ今回は地球人にそこそこ友好的なプレデターが登場したり、プレデターと意思疎通ができたりという新展開が起きるわけだが、ジャングルで人を狩る謎の宇宙人、という第1作のコンセプトから遠く離れたものになったのは仕方ないことか。ただラストのあれはなー。「インデペンデンス・デイ」みたいにはなって欲しくない
映画評 機内で観た映画2018 その1 ちょっと長いフライトに乗ったので、機内で観た映画の感想をざっと。R指定の作品が多かったので、劇場版にくらべて内容がどの程度カット・編集されてるかはよくわかりません: ・「UPGRADE」:ジャンル映画界隈で話題のSFアクション。暴漢に妻を殺されて自分は四肢麻痺になった男が、首に実験的なコンピューターチップを埋め込まれて運動機能を取り戻し、自分を襲った者たちに復讐していくというもの。チップに身を任せることでケンカのプロとなるあたりがちょっとコメディっぽいけど、意外と真面目にSFしている作品ではありました。変に自動運転車のようなSFガジェットを出さず、もっと現代的な描写にしても良かったと思うけど。「ハードコア(・ヘンリー)」が好きな人なら楽しめるのでは。 ・「クワイエット・プレイス」:アメリカでは大ヒットしましたけどね。被災地で音を立てずに歩くのなら裸足でなく分厚いスリッパ履けよ、とか電気はどこから持ってきてるの?といった設定の細かい点がなんか気になってしまった。ストーリーも捻りがあるかと思いきやそうでもなかったし。お金のかかった「トワイライト・ゾーン」の1エピソード、といった感じ。
映画評 「アントマン&ワスプ」鑑賞 夏休みの終わりに公開するあたり、日本では期待されてないんだろうなあ。公開中なので感想をざっと: ・まあこんなものかな?マイケル・ダグラスがフル活動している分、前作よりも良かったかも。ただ登場するキャラクターが増えたことによって話が散漫になったような感も否めない。ウォルトン・ゴギンズとか好きだけど、悪役を2グループにしてアントマン側と三つ巴にする必要なあったのか。 ・話の展開も場面の切り替えが多くて、それによって話の勢いが削がれていたような?それぞれの場面のオチがきちんとついてればまだメリハリがあったのだろうけどね。例えば学校のシーンとか、もうひとヒネリあってもよかったんじゃないかと。 ・悪役は前作の弱い部分だったので、今回はゴーストという強力な敵を持ってきたのは正解かと。その一方で、彼女の悩みを最初から明かしたことで、あまり強そうにも思えなくなったけど。もうちょと原作のような不気味キャラで引っ張っても良かったのでは。 ・役者はみんないいですね。北の将軍様ことランダル・パークが出てたのが個人的にはツボだった。ブライアン・ラスキーはまだしもティム・ハイデッカーがチョイ役で出てたの
映画評 「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」鑑賞 公開されたばかりなので感想をざっと。以降はネタバレ注意。 ・どんどん年をとってる主役が体を張ったアクションを披露するのが売りになってきたあたり、ジャッキー・チェンの一連の作品と同じようなノリになってきた感がある。スタントなしでアクションに挑むトム君はすごいものの、ジャッキーの時代と違って「これグリーンスクリーン使って撮影してるんじゃね?」とふと思ってしまうのが損なところである。 ・んで観客はそのトム君のアクションを期待して観に来ているわけで、複雑なプロットとかいらないと思うのだがなあ。俺が年取っただけなのかもしれませんが、誰がラークで、ソロモン・レーンとどう関わってて、ホワイト・ウィドウはどういう役割なんだっけ、と30分くらいしたら分からなくなってました。 ・誰が裏切り者かはっきり分かるシーンを前に出しておきながら、トム君に容疑がかけられるシーンに時間をかけるのも蛇足だろう。クリストファー・マッカリーって脚本家出身のせいかなんか話が回りくどいのよな。実際に起きないシーンを夢オチで描くのも邪道では。 ・今回は珍しく違っていたものの、このシリーズって悪役の印象が弱いので、ソロモン
映画評 「I KILL GIANTS」鑑賞 ジョー・ケリー(ストーリー)とケン・ニイムラ(アート)によるイメージ・コミックスの同名作品(邦訳あり)を映画化したもの。ジョー・ケリーって90年台半ばにマーベルが破産申請でゴタゴタしてるときに作品をあれこれ執筆してた人で、なんかマーベルのイエスマンという印象があってそんなに好きではないのですが(これ偏見だろうし、デッドプールのキャラ設定に大きな貢献をしたんだろうけど)、この作品は彼のクリエイターオウンド作品で、彼の代表作といっていいんじゃないでしょうか。 小さな海辺の町に住むバーバラは、いつか町を巨人が襲ってくると信じ、彼らを撃退する罠の準備に専念している不思議な女の子。その町に引っ越してきた少女ソフィアや、学校のモレー先生などは彼女と仲良くしようとするものの、バーバラはなかなかうち解けようとしない。学校でも家庭でも孤立していくバーバラだったが、その一方で彼女のみなす「巨人の前兆」は増えていき…というあらすじ。 脚本をケリー自身が手がけているので、原作に忠実な映画化ということになるのかな。ただし眼鏡っ娘でウサギ耳をつけたバーバラは原作だともっと芯の強いタイプに描かれていたし、
映画評 「LOST IN LONDON」鑑賞 最近いちばん劇場で目にしている(ハン・ソロ、猿の惑星、スリー・ビルボードetc.)気がする役者であるウディ・ハレルソンの初監督作品。といっても舞台の演出に近いのかな。ロンドンを舞台にハレルソン本人がさまざまな不遇に見舞われ四苦八苦するさまがリアルタイムで撮影され、それが「生放送で」イギリスの映画館において上映されるという、一緒のライブビューイング的な鑑賞が行われた作品なんだそうな。いちおう世界初の試みだそうで。 ハレルソンが以前にロンドンのタクシーの灰皿を壊したために警察に追われることになった実体験を脚色したもので、ハレルソンが本人自身を演じている。舞台出演のために家族を連れてロンドンに来ていたハレルソンだったが、前夜に3人の女性と乱痴気騒ぎをやらかしたことがパパラッチされてしまい、それを知った妻は当然ながら激怒。ホテルに戻る前に頭を冷やすよう命じられる。仕方なしに時間を潰す羽目になった彼はイランの王子たちに遭遇し、彼らに連れられてナイトクラブへ向かう。そこでは旧友のオーウェン・ウィルソン(これも本人)に出会うものの、ささいなことから喧嘩となってしまう。さらにハレルソンの災難は続き
映画評 「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」鑑賞 公開されたばかりなので感想をざっと。ロン・ハワードが8割くらい撮り直したらしいので、ミラー&ロード版だったらどうなってたか、と論じるのは野暮でしょ。以降はネタバレ注意。 ・前に「ローグ・ワン」もそうだったし、SW映画なのにオープニングのテキストクロールがないとか、画面のワイプがないことに不平を言うつもりはない。しかし前半ずっと画面が暗かったのは何なんだろう。戦場のシーンとか列車強盗のシーンとか、リアリズムを出すつもりならそれは失敗していると思うし、誰もSW映画にそんなものは求めてないと思うのだがなあ。後半になって明るくなったからよしとするが。 ・現在進行形であるエピソード7〜8が、古参の俳優が枯渇していっているためにフランチャイズを方向展開していってジェダイやフォースなどから離れて行っているのに対し、こちらはプリクエルとして別の俳優を起用して過去の伏線回収というかプロットの補足をバンバン行えるわけで、まあオールドファンを喜ばせられる強みはあるわな。 ・個人的には「ケッセルランを12パーセク」はソロがでっちあげたホラ話であってほしかったけど。観客の想像に委ねればいいことをいちいち
映画評 「Please Stand By」鑑賞 ダコタ・ファニング主演のインディペンデント系映画。日本では9月に「500ページの夢の束」という邦題で公開予定。キノフィルムズ、作品をいろいろ買うのはいいのだけど日本公開がいろいろ遅いと思うの。以降はネタバレ注意。 ウェンディは自閉症の女の子で、オークランドの施設に暮らしていた。簡単なバイトとかはできるものの人とのコミュニケーションが苦手で、感情が高まったりするので姉の赤ん坊にも合わせてもらえない状況。そんな彼女が大好きなのは宇宙大作戦こと「スター・トレック」で、オリジナル・シリーズはおろかスピンオフ・シリーズのキャラクターなどを熟知し、周囲のオタクどもからも一目置かれる少女であった。そんな彼女はパラマウント・ピクチャーズがスター・トレックの脚本コンテストを開催していることを知り、自分が手塩にかけた500ページもの脚本を送ろうとするものの、最後の最後までこだわったために郵送できる締め切りを過ぎてしまい、仕方なく彼女はパラマウントまで脚本を手渡しに行こうと、周囲の誰にも告げずに人生初の長旅に出るのだったが…というあらすじ。 感情の表現がうまくできないスポックとウェンディを重ね合わせる
映画評 「The Disaster Artist」鑑賞 ジェームズ・フランコ監督&出演、デイブ・フランコ主演というフランコ兄弟のコメディ映画。 2003年に公開されるなり、その演技の安っぽさと脚本の意味不明さが口コミで話題になって、監督&主演を務めたトミー・ワイゾーの強烈なキャラクター性とあいまって早くも「今世紀最低の映画」という評価を得るものの、その内容(コメディ映画ではない)のヒドさが逆に笑えるとして深夜上映などで人気を博し、未だにアメリカのどこかで上映されているというカルト映画「THE ROOM」の製作現場の裏側を描いた同名の本をもとにしたもの。なお「THE ROOM」自体はおれ観てません。 本を執筆したのはデイブ・フランコ演じるグレッグ・セステロで、彼は1998年にサンフランシスコの演劇教室でトミーに出会う。ニューオリンズ出身と言いながらもキツい東欧訛りを持ち、年齢不詳のトミーだったが、その空気を読まない無鉄砲さにグレッグは興味を持ち、ふたりはスターになることを夢見てサンフランシスコからロサンゼルスへと向かう。なぜかトミーは無尽蔵に金を持っており、彼が所有するアパートに移ったふたりは役者稼業を始め、グレッグにはエージェント
映画評 「デッドプール2」鑑賞 面白い映画でございましたよ。前作よりも予算があがって、それが監督降板の一因でもあるらしいけど、アクションシーンとかもうまく派手になってて良かったんじないかと。ざっと感想を: ・ダイヤルの目盛りが11まであるのは、もうお約束だよねー。 ・前作に比べると準備期間が短かった作品だが、セリフでダブステップが言及されるたびにダブステップが流れるとか、いろいろ細かいネタが仕込まれていて飽きさせない。いろいろ見逃したネタもあるんだろうな。 ・「エセックス」ってXメンのほうの伏線になっているかと思いきや、こっちのほうにも出てきていた。今後はデッドプールとXメンの絡みってどうなっていくんだろうか。ディズニーの口出しも出てくるだろうし、別々のフランチャイズとして仕切ったほうが良いような気もする。 ・ジョシュ・ブローリンのケーブルはタッパこそないものの、もともと面白みのない原作のキャラにうまく味付けができていて良かったな。それに比べてシャタースターはあんな扱いでいいのか?Xフォースで今後登場させたりしないのか? ネタバレ防止で簡単な感想しか述べませんが、感情的に盛り上がるところは盛り上がるし、今
映画評 「犬ヶ島」鑑賞 公開したばかりなので簡単な感想を。 ・ウェス・アンダーソンの人形アニメとしては前にも「ファンタスティック Mr.FOX」があるのだが、失踪した子供を探すドタバタ、という点ではむしろ「ムーンライズ・キングダム」に近い内容であった。ただし話が進むにつれて犬と人間の共存が大きなテーマになってくるので、観ていて連想したのはリブート版「猿の惑星」シリーズであったよ。 ・内容はまあ典型的なアンダーソン風というか、お馴染みの役者たちが今回は声優として登場していて、シュールな展開が繰り広げられるというか。ほぼ主役の犬の声をあてたブライアン・クランストンがアンダーソン作品は初参加かな? ・アニメと実写を比べるのも何だが、前作「グランド・ブダペスト・ホテル」の濃厚なストーリーテリングに比べるとクオリティは落ちる。話の展開もベタだなと思うものの、アニメならではのアクション多めの冒険譚にもなっていて、話が盛り上がるところは盛り上がるし、観ていて飽きない内容ではありましたよ。 ・欧米では日本人の描き方がステレオタイプではないか、というような批判もあったみたいだけど、架空の都市の話ということもあり、観て
映画評 「キリング・ガンサー」鑑賞 アーノルド・シュワルツェネッガー出演のアクション・コメディ。日本では7月公開。以下は作品の重要な部分について述べてるのでネタバレ注意。 世界の殺し屋のなかでもトップに立つ男、それがガンサー。狙った標的は必ず仕留めるという伝説的なヒットマンだがその正体は誰も知らず、謎に包まれた人物であった。そんなガンサーを倒せば自分こそが世界ナンバー1の座につけると考えた若き殺し屋ブレイクは、毒物や爆弾などの様々なスキルを持った仲間のヒットマンたちを集め、さらにガンサー殺しの記録を残すために撮影クルーを雇い、ガンサーに偽の依頼をしかけて彼をおびき出そうとする。しかし何者かの行動によって彼らの計画はすべて裏目に出てしまい…というあらすじ。 話の顛末はほぼすべてが上記の撮影クルーが映した映像、というつくりになっていて、いわゆるモキュメンタリー的なスタイルをとっている。殺し屋を追ったモキュメンタリーといえばベルギーの名作「ありふれた事件」があるけど、あれよりもずっと緩い内容になっている。 ブレイクを演じるのはコメディアンのタラン・キラムで、彼は監督も務めている。彼の奥さんのコビー・スマルダーズもチョイ
映画評 「ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた」鑑賞 ボストンマラソン爆弾テロ事件の被害に遭った男性ジェフ・ボウマンを主人公にした、実話に基づいた作品。以下はいちおうネタバレ注意。 ボストン育ちのジェフは元恋人のエリンとよりを戻すことを期待して、彼女が参加したボストンマラソンをゴール付近で観戦していたところ、突如起こった爆発によって両足を吹き飛ばされる重傷を負い、病院に運ばれる。意識を取り戻した彼は爆弾犯の顔を覚えていたことからそれが犯人確定の手がかりとなり、傷害にも屈しない彼の姿はボストンで英雄視されることになる。しかしその一方でジェフはリハビリに苦しんでいた…というあらすじ。 邦題からして困難に立ち向かう主人公の感動もの、といった印象を受けるけど、実は意外とそうでもなかった。コストコの従業員として働くジェフは自らのヘマで汚した調理場の掃除を他人に任せてレッドソックスの試合に行くようなボンクラで、テロ被害に遭ったことで一躍英雄扱いを受けるものの、やってることは相変わらず友人たちとビール飲んでだべってるだけ。一度は別れた恋人のエリンが気を遣って身の回りの世話をしてくれるのにろくに感謝もせず、さらには彼女と保護なしのセックスをして妊娠