映画評 「POWERS」鑑賞 アメリカのプレイステーション・ネットワークのオリジナル番組。こないだHBOも独自のVODサービスを発表してたけど、最近はVODプラットフォームの乱立が進んでいると言うか、どこも独自の番組を製作して客を呼ぼうとしているような。でも数年後にはそれなりの数のサービスが淘汰されてるんだろうな。やっぱり。 原作はブライアン・マイケル・ベンディスとマイケル・エイヴォン・オーミングの同名のコミック。おれベンディスって積極的に嫌いなライターのひとりでして、スーパーヒーローものを書いてるのに「悪役の描写にやたら力を入れる」「マイナーなヒーローにばかり焦点を当てる」「主人公のヒーローがろくに活躍しない」というカタルシスの感じられないストーリーの作り方がすんごく嫌いなのよね。 この「POWERS」はベンディスがマーベル・コミックスでスーパーヒーローものをいろいろ書く前の作品だが、テーマとしてはスーパーヒーローを扱っていて、超人的な能力をもったヒーローや犯罪者(「パワーズ」と呼ばれる)が数多く存在する世界において、かつて自身もヒーローだったが能力を失ってしまった主人公がシカゴ市警に加わり、相棒とともにパ
映画評 「WHIPLASH」鑑賞 センスない邦題は「セッション」。4月公開で、これ何の前知識もないまま観た方が楽しめると思うので、簡単な感想をざっくりと: ・音楽の師弟愛などではなく、あくまでも教師と生徒のガチな戦いに最後まで徹しているところが素晴らしい。教師の一線を越えたスパルタ的な教え方はブラック企業みたいなのですが、主人公がそれに迎合したりせず反撃するところが巧いなあと。 ・しかし主人公もけっこう性格に難がある奴だというのがポイント。議論を呼びそうな終り方(意図的にああしたらしい)も含め、安直な感動作にしてないところがいいですね。 ・でもタイミングよく起きる事件とか事故がちょっとクサいところもある。話のベースとなった短編映画はインターネット上から削除されてて視聴できないんだけど、どのくらい簡潔にまとめられてたんだろう。 ・J.K.シモンズのアカデミー賞受賞は当然ですな。マイルズ・テラーは琴欧州に似ている。 ・控え目ながら効果的なカメラワークも賞賛されるべきであろう。監督のダミアン・チェズルは音楽ものというニッチな分野を得意としてるみたいだけど、とりあえず今後の作品にも期待。
映画評 「Citizenfour」鑑賞 こないだアカデミー賞を受賞したドキュメンタリーな。いちおうネタバレ注意。 9/11テロや中東のアメリカの戦争に関するドキュメンタリー映画を作り、アメリカ政府の監視の対象にもなったドキュメンタリー監督であるローラ・ポイトラスのもとに、「Citizenfour」を名乗る人物から暗号化されたメールが送られてくる。アメリカ国家安全保障局(NSA)による情報収集に関する重大な秘密を公表したい、というメールの内容に興味を持った彼女は「Citizenfour」と連絡をとり続け、同様のメールを受け取った英ガーディアン紙のグレン・グリーンウォルド(および同紙のユーウェン・マカスキル)とともに香港のホテルで「Citizenfour」と出会うことになるのだが…という展開。 まあポスターにも大きく顔が載ってるしもはや秘密でも何でもないが、この「Citizenfour」こそがNSAの元職員だったエドワード・スノーデンであり、NSAが秘密裏にアメリカ国民および外国の一般市民のあらゆる通信内容や情報を裏で傍受しているという事実が、彼の証言によってポイトラスのカメラの前で明かされていく。 物事はすべてリニアな
映画評 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」鑑賞 アカデミー候補ということで駆け込み的に鑑賞。4月に日本公開なのでネタバレしない程度にざっと感想を(しかしネタバレするようなストーリーが無いのだが)。 ・殆ど切れ目なしの長回しによる撮影で、さらにブロードウェイの舞台裏という設定もあり、1つの芝居を観ているような気分になる。 ・演劇界や映画界の内輪ネタみたいなのもセリフのあちこちに散りばめてあって、いろいろ高い評価を受けたのも何となく理解できる。ハリウッドの人たちって自分たちに関する映画が好きだからねぇ。 ・でも実際に作品として面白くて、マイケル・キートンの身体を張った演技が見事。あとはやはりエドワード・ノートンがずばぬけて巧いなあと。 ・エマ・ストーンはどんどんマンガのような顔になっていっている。あのままCGアニメになっても違和感は無いんじゃないだろうか。 ・マイケル・キートンってかつてバットマンを演じた(そしてそれ以降は落ち目になった)役者だよ、という前知識は持っておいたほうが良いでしょう。知らない人はいないと思うが。 ・ドラムのみを使ったサントラがセリフとうまく絡み合っていて、ビート・ポエトリーかヒップホップのよう。こ
映画評 「ROSEWATER」鑑賞 先日、16年近くにわたる「デイリーショー」の司会の降板を発表して世界中に衝撃を与え、親会社の株を3億5000万ドル下落させたジョン・スチュワートが、昨年「デイリーショー」を休んで監督した作品。 イランで拘束されたジャーナリストのマジアル・バハリに体験に基づいた内容で、イラン出身のカナダ人であるバハリは2009年にイランの大統領選挙を取材するため、身重の妻を家に残してテヘランへと渡航する。そこで彼はアフマディーネジャードを支持する学生や、対抗馬のムーサヴィーを支持して体制の変革を願い若者たちを取材し、さらには当時イランに来ていた「デイリーショー」特派員のジェイソン・ジョーンズの取材を彼が受けることになる。ムーサヴィーが大勝すると予想されていた選挙はアフマディーネジャードの勝利となり、不正選挙が疑われて各地で暴動が起きるなか、実家で寝ていたバハリは警察に叩き起こされ、西側のスパイだという嫌疑をかけられて刑務所に連行され、そこで激しい尋問を与えられることになる…というストーリー。 おれ上記のジェイソン・ジョーンズのイラン訪問はリアルタイムで観てましたが、イランについてクールに説明してい
映画評 「Nightcrawler」鑑賞 硫黄の臭いをまき散らしながらテレポートするXメンの話…などでは当然なく、ロサンゼルスが舞台のサスペンス。 鉄線の泥棒をしていたルイスは、ハイウェイでの交通事故を撮影して映像をニュース局に売りさばくカメラマンを見かけたことから、自分もその仕事を始めようとカメラを購入する。交通案内役として高校を出たばかりのリックを雇って警察無線を傍受し、事故現場に急行するルイス。最初はライバル業者に出し抜かれてばかりだったが、やがて撮影した映像が売れてローカル局のプロデューサーであるニナとコネをもつようになる。警察の警告を無視し、必用とあれば事故現場の証拠の捏造も厭わないルイスの映像はやがて高く売れるようになるが、より刺激的な映像を求める彼の行動はさらにエスカレートしていき…というストーリー。 いわゆる「カメラが捉えた決定的瞬間!」的な映像を求める世間とニュース局を風刺した内容になっていて、映像はショッキングなものが好まれ、特に「郊外の白人家庭を脅かす都市型犯罪」というアングルが良いということが劇中でも語られる。視聴率で苦戦している局にいるニナは脱法すれすれのところでルイスの映像をセンセーショナルに
映画評 「JOHN WICK」鑑賞 ※前もそうだったけど、キアヌの映画はあらすじ書いてる方が楽しいので、この先はいろいろネタバレがあります。ご注意ください。 キアヌことジョン・ウィックは雇う側も畏怖するような凄腕の殺し屋だったが、ある女性と恋に落ち、彼女と結婚してからは血なまぐさい過去を捨てて幸せに暮らすはずだった。しかし彼女は突然の病に倒れ、帰らぬ人となってしまう(冒頭5分でここまで展開する)。哀しみにくれるジョン(名前はジョナサンらしいのだが、なぜか名前はJonでなくJohnとなっている)そんな彼のもとに一匹のわんこが贈られて来る。それは彼女の妻が自分の形見として彼に贈ったのだった(どうも人が死ぬと当日にわんこを配達してくれるサービスになっているらしい)。 そんなわんこに愛情を注ぎ、一緒にドライブに行くジョン。しかし彼の69年型ムスタングに目をつけたロシアン・マフィアのボンクラ息子たちが夜中にジョンの家に侵入して彼を痛めつけ、さらにはわんこを殺して車を奪ってしまう。俺のわんこと車を奪いやがって!と冷たい復讐に燃えるジョン(しかし車は空港でかなり乱暴に乗り回したりしてて、さほど大切に扱ってたようには見えないのだが
映画評 「PRIDE」鑑賞 日本では「パレードへようこそ」という邦題で4月公開だそうな。 舞台は1984年のイギリス。サッチャー政権のもと各地の炭鉱は次々と閉鎖され、失業の危機に面した炭坑夫たちはデモやストライキで抵抗を試みていた。そのニュースを知ったゲイの活動家のマークは、「政府に迫害されている者同士が力を合わせるべきだ!」と決意して(当時は同性愛行為が違法とされていた)、レズビアンとゲイによる炭坑夫へのサポートグループを結成、寄付を募って炭坑夫に送ろうとする。しかし炭坑夫の組合は同性愛者たちと関わりになるのを嫌がったため、マークたちは炭鉱の街を直接支援することにする。そして南ウェールズのオンルウィンという小さな町を選んだ彼らは、住人たちに好奇の目で見られながらも炭坑夫たちを支援していくのだが…というストーリー。 失業の危機に対して奮闘するイギリスの労働者たちを扱った、「フル・モンティ」や「ブラス!」「リトル・ダンサー」といった一連の作品に連なるもので、あれらの映画が好きな人なら十分楽しめるんじゃないでしょうか。男女が偏見を乗り越えて団結するさまは、ベタながらもやはりスカっとするものなので。ただしオンルウ
映画評 「THE INTERVIEW」鑑賞 んで今年の最初に観た映画がこれ。 巷でいろいろ話題になってるので大方のあらすじをご存知の人もいると思うが、セレブ相手のゴシップ・インタビューを得意としている番組のホストとプロデューサーが、実は北朝鮮の金正恩がその番組の大ファンであることを知り、彼に生放送でインタビューする機会を与えられる。これで俺らも真っ当なジャーナリスト扱いされると浮かれる2人の前にCIAが現れて、アメリカを核攻撃すると脅している金正恩をこの機会に極秘で暗殺するように依頼する。2人はこれを仕方なく承諾するものの、ホストの方は金正恩と接しているうちに情が移ってしまい…というような展開。 チャラけたホストを演じるのがジェームズ・フランコで、心配性のプロデューサー(ユダヤ人)がセス・ローゲン。ファニーマンとストレートマンという組み合わせはコメディの王道ですが、これに下ネタとかアメリカン・カルチャーのジョークとかがテンコ盛りになってます。英語でないと分かりにくいジョークもあるので、もし日本で公開されたとしてもそんなにウケなかったんじゃないかな(日本のソニーピクチャーズはDVD発売も含め完全に封印する予定だった)。 最
映画評 2014年の映画トップ10 評論家の方々がお選びになられている「6才のボクが、大人になるまで。」とかまだ観てないし、「アンダー・ザ・スキン」とか「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」とかが心の琴線に響かなかった俺ですが、今年は粒ぞろいの作品が揃った年だったような。ブロックバスター作品でも「ゴジラ」や「ガーディアンズ」みたいにちゃんと作り込んだものが多かったせいですかね(「トランスフォーマー」除く)。とりあえず上位5本と次の5本を、観た順にならべました: ・「アクト・オブ・キリング」 年の初めに観たのでインパクトはもう薄れたが、その重厚な犯罪の告白は衝撃的であった。続編はどういう内容になるんだろう。 ・「ウルフ・オブ・ウォールストリート」 ディカプリオってやはりコメディが向いてるのではないか、と長年感じてたことがズバリ当たったような作品。金と欲望がぎっちり詰まった3時間。 ・「X-MEN: フューチャー&パスト」 今年のアメコミ映画はみんな当たりなのだが(「シン・シティ」も大目に見る)、個人的にはやはり新旧のフランチャイズをしっかり融合させ、3つくらいのプロットをきちんと語り尽くしたこの作品をベストに推し
映画評 「ヒックとドラゴン2」鑑賞 日本じゃ結局劇場公開しないんですってよ奥さん。 舞台は前作の5年後。青年となったヒックはトゥースレスとともに未知の土地の探索を行なっていたが、ある日ドラゴンを狩る男たちの集団に遭遇する。彼らを探ったヒックは氷に包まれたドラゴンたちの巣を発見し、そこを守る意外な人物に出会う。しかしドラゴンの撲滅を狙う男ドラゴの魔の手はその巣、さらにはヒックたちの故郷であるバークにも伸びてきて…という展開。 前作は本当に大傑作のアニメでして、今でもサントラをよく聴いたりするのですが、少年の成長とか異種族との和解とかボーイミーツガールとか、少年ものの王道の展開を真っ当から描いたところが素晴らしかったわけですね。それをやってしまったあとの今作では弱冠ネタ切れというか話が散漫になっている感が否めないが、しかしヒックが部族のリーダーへと成長していくさまはしっかりと描かれており、その象徴として重要な人物が○○したりと、結構ダークな展開が続くようになっている。その一方でケラケラ笑えるようなジョークも散りばめられているよ。 前作以上に多くの種類のドラゴンもでてきて、アルファ級(前作のボスみたいな連中)のドラゴン
映画評 「LASTDAYS」鑑賞 キャスリン・ビグロー姐さんによる3分ほどの短編で、象牙の密輸がもたらす被害を訴えたもの。公式サイトはこちら。 綺麗な象牙の加工品が買われるところから始まり、時間をさかのぼってそれが密輸され、テロリストから売られ、象たちが象牙のために虐殺されていくさまが描かれていく。それに諸々のメッセージが重ねられるのだが、主なものを挙げると: ・希少動物の密輸は、銃や麻薬などについで世界4位の密輸ビジネスになっている。 ・象牙の密輸によって得られた収入は、ボコ・ハラムやジャンジャウィードといったテロ集団の資金源になっている。 ・15分に一匹の割合で、象が殺害されている。 ・あと11年もすれば野生の象は絶滅する可能性がある。 といったもの。アニメーション作品なんだけど、途中でナイロビのショッピングモール襲撃のフッテージが挿入されてるところがビグロー作品っぽいかな。 冒頭で象牙の加工品が買われるのは(たぶん)中国なんだけど、日本だって象牙のハンコが普通に売られているわけだし(「うちの店は許可を得てます」と謳ってるけど、象牙を扱ってることに変わりはないよね)、我々としてできることは象牙の需要を無く
映画評 「インターステラー」鑑賞 封切りしたばかりなのでネタバレにならぬよう感想をざっと: ・アンチの声は気にするな。あれだけハードなSFをきちんとブロックバスター映画に仕上げたノーランの手腕は評価されるべき。 ・とはいえ科学や物理に疎い俺でも「あれ?」と思うようなプロットの穴がワームホールのようにぽっかり開いているわけですが、細けえことはいいんだよ! ・ただしこの話って「2001年宇宙の旅」でやったことだよね?と思ったことも事実で、キューブリックがクラシック音楽とアシッドトリップ(みたいなもの)で抽象的に描いていたものを、下世話にオルガンをガンガン鳴らしてやり直した、と思われても仕方あるまい。 ・マン博士って名前から勝手に中国系かと思ってたら、あの人が頭脳明晰な科学者でしたかそうでしたか。 ・一家のうち父親だけがテキサス訛りで話すってことありえるのかな?子供たちも影響受けたりしない? 繰り返すが「ダークナイト(特にライジング)」同様にツッコミを入れようと思えばいくらでも入れられるのだが、安直な大作でなく考えさせられる映画を作って客を集めてるクリストファー・ノーランはちゃんと評価されるべきであろう。一見の
映画評 「シン・シティ 復讐の女神」鑑賞 9年ぶりの続編。以前から公表されていた通り、原作のうち「A DAME TO KILL FOR」を主軸に置いたもので、語られる話は4つ。前作と異なりうち2つは映画版オリジナルの脚本となっている。セグメント順に説明すると: 「Just Another Saturday Night」 1話読み切りのやつが原作。タイトル前のちょっとした短編ですね。マーヴを演じるのは前作に続いてミッキー・ローク。 「The Long Bad Night (Part I)」 映画オリジナルの話。というか出版されなかった原作の話を使ってるのかな?ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるギャンブラーが街にやってきて、悪徳政治家に賭けを挑む。抜群の賭けのセンスを持つギャンブラーはカッコいいんだけど…。 「A Dame to Kill For」 これがメインの話。ドワイトを演じるのはクライヴ・オーウェンに代わってジョシュ・ブローリン(いちおうオーウェンにも打診はしてたらしい)。まあ原作通りの話かな。前作の「The Big Fat
映画評 「TO BE TAKEI」鑑賞 第二次大戦中は日系人の強制収容所で育ち、60年代に「スター・トレック」のスールー役として世界の人気者になり、そして2000年代になってからカミングアウトしてゲイのアイコンとなり、77歳にしてSNSで膨大なフォロワーを誇るという実は唯一無二の人生を送ってきたジョージ・タケイについてのドキュメンタリー。 旦那であるブラッド・アルトマンとの睦まじい夫婦(夫夫?)仲を紹介しながら、彼の生い立ちが語られていくもので、東京生まれでアメリカにやってきた父と、アメリカ生まれだが人種で隔離された学校を避けて日本で教育を受けた母とのあいだに生まれたジョージは、第二次大戦の勃発により一家の家財がアメリカ政府に没収され、カリフォルニアからアーカンソーの強制収容所に運びこまれ、終戦までそこで暮らすこととなる。ここらへんは日本人にとっても興味深い証言じゃないかな。 そして終戦後に解放された一家はカリフォルニアに戻り、父は中華料理屋の皿洗いから始めて再び家庭を支えることになる。青年になったジョージは当時から男性に興味があったわけだが、ここらへんのセクシャリティの目覚めについては結構フランクに語ってるのね。さら
映画評 「Life Itself」鑑賞 昨年亡くなった映画評論家ロジャー・イバート(エバート)の伝記ドキュメンタリー。晩年に執筆した同名の自伝を基にしたもので、映画論などよりも人としてのイバートに焦点をあてた内容になっている。 若い頃からジャーナリズムに興味のあったイバートは、大学卒業後に地元イリノイの新聞社シカゴ・サン=タイムズに雇われ、そこで映画批評の記事を書いて若いうちから頭角を示していく。イバートのナレーションや知人たちへのインタビューによって当時のことが語られていくのだが、なぜ彼が突然ラス・メイヤーの映画に共感し、カルト映画「ワイルド・パーティー」の脚本を書くことになったのかについては、未だに知人たちが当惑しているのが興味深い(「おっぱいだよ!」という明確な説明もされるのだが)。 そして1975年には映画評論家として初めてピュリツァー賞を受賞し、それからライバル新聞社の評論家であるジーン・シスケルと組んで「Two Thumbs Up!」で有名な映画番組「At The Movies With Gene Siskel & Roger Ebert」を製作してお茶の間の人気者になっていく。シスケルとは長年のパートナー
映画評 「Space Station 76」鑑賞 低予算のSFコメディ。 舞台となるのは宇宙の片隅にある宇宙ステーション76。そこの機材はオンボロであり、住むクルーたちもストレスや退屈さなどで何かしらの問題を抱えていた。そんなとき新しいクルーとしてジェシカが派遣されてくる。最初は彼女を優しく迎えるクルーたちであったが、ステーションの暗黙のルールに気づかない彼女の言動のためクルーたちの関係はギクシャクしていき…という内容。 トレーラー観れば分かるがスタイル的には60〜70年代のSF映画のパスティーシュとなっており、サントラもトッド・ラングレンをはじめとした70年代ロックがふんだんに使われている。小道具やデザインなども細かいところまで凝っていて、外見的にはよく出来てるんですよ。ただ肝心のストーリーが…パロディとかアレゴリーになるわけでもなく、ただ気まずい展開が次々と続くだけというか。ダウナーな展開があっても「ダーク・スター」みたいに深みがあるわけでもなく、なんか脚本が稚拙だなぁ、という印象。監督がゲイだそうなのでセクシャリティに関するセリフもいろいろ出てくるのだが、どれも凡庸なものばかりだし。 監督のジョン・プロトニックってこれが
映画評 機内で観た映画2014(後半) またちょっと海外出張したので、行きと帰りの機内で観た映画の感想をさくっと。「ヒックとドラゴン2」も」あったんだけどね、さすがにあれは大画面で観るべきと思って我慢しました。 「Rio 2」:人妻(というかトリ妻)が幼なじみと再会して不倫する…みたいな話の流れになったのは驚いたが、主人公と妻の故郷のトリたちと、その故郷の採伐を狙う人間たちが出てきて話が散漫になってしまっているのに加え、歌のシーンも詰め込んでるので無駄に尺の長い映画になってしまっている。グロリア・ゲイナーの「恋のサバイバル」を使ってる映画って、まずロクなのがないよな。 「CHEF」:フィールグッド映画としては決して悪くないものの、話は凡庸。主人公のシェフが自滅して、なぜフードトラックで再起を目指すことになったかのくくりがきちんと描かれてないんだよな。拘束時間が明らかに1日か2日のスカヨハとダウニーJr.とダスティン・ホフマンが後半には登場しないこともあり、前半の自滅と後半の再起のバランスが全くとれてない感じをうける。 「22ジャンプ・ストリート」:前作のようにオリジン話に時間を割くこともなく、そのまま話に突入していって
映画評 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」鑑賞 むろん2Dな。上映中なので感想を簡潔に。 おれコズミック系のアメコミってあまり好きではなくて、DCも「リージョン・オブ・スーパーヒーローズ」などは殆ど読まなかったのです。よってこの作品の原作にも疎かったので(90年代初頭に出てた前のチームのやつは読んでた)、観る前はある程度の不安があったのだけど、前知識など無しに十分楽しめるスペースオペラでした。「グリーン・ランタン」がすべて間違えたところを、すべてきちんと押さえているというか。 ストーリー自体はかなり王道を行っていて、ならず者たちが反目しあいながらも友情を培っていき、団結して悪を倒し、かつて自分たちを見下していた人たちからも賞賛を受けるというもの。決して目新しさはないものの、変にひねくり回さずにストレートな演出をしていることでちゃんと話に起伏をもたせている。CGのキャラクターの演技にも涙するのってそうあることじゃありませんぜ。まあ女性キャラ同士がタイマン勝負するあたりは、さすがに使い古されすぎてる気がしましたが。 監督のジェームズ・ガンはB級で知られるトロマ・ムービーの出身で、トロマの社長のロイド・カウフマンがしっかりカメオ出
映画評 「LOCKE」鑑賞 トム・ハーディの一人劇のような映画。監督は「イースタン・プロミス」の脚本家だったスティーブン・ナイト。 国際的な建設会社の現場監督をやっているアイヴァン・ロックは、大きな仕事を明日に控えて工事現場から車に乗って去る。しかし彼は妻子の待つ自宅へは戻らずに、とある方面へと車を走らせる。自分が行なおうとしていることについて、車中から妻に電話するロック。そして彼の行いは、工事現場の仕事にも影響することに…というストーリー。 ネタバレになるのであまり話の展開については明かせないが、ロックの目的は早い段階で明らかになるのでミステリーとかサスペンスの要素は少ない。主人公が過去の行ないについて対処するさまが、淡々と描かれていく。主な撮影はすべて車内で行なわれ、登場するのもロック一人のみ。彼が電話で妻子や職場の同僚と電話で話す(なおハンズフリーね)だけの、密室劇というか会話劇のような内容になっている。 ロック自身は自分の置かれた状況について一人で激高したりするものの、基本的には信念の強い男であり、「論理的に次のステップを考えよう」などと語るような人物。むしろ彼の行動に困惑した関係者たちを、電話で
映画評 「Show Pieces」鑑賞 アラン・ムーアとミッチ・ジェンキンズがキックスターターで資金を調達した短編映画「His Heavy Heart」が完成してダウンロード用のリンクが送られてきたので、過去の4作品とあわせて一気に鑑賞。5つあわせて「The Show」という作品を構成するのかと思いきや、「The Show」はもっと包括的なコンセプトで、これらはその1部を成す「Show Pieces」という作品群になるんだとか?よって今後もこの世界を舞台にした話が作られていくのかな?まとめて鑑賞することで、以前に書いたときよりもなんとなく世界観が分かるようになったので、各作品を時系列ごとに紹介する: 「Act Of Faith」 タブロイド紙の記者をやっているフェイスという若き女性が、クローゼットで一人SMを試みるものの、最悪の結果を招くことになる。 「Upon Reflection」 怯えたファイスは小汚いパブ(兼クラブ)にたどり着く。そこで彼女はクラブのマネージャーのマッチブライト氏と出会い、彼から侮蔑的な扱いを受ける。部屋の角の鏡に映った映像になっているのが特徴的な一編。 「Jimmy’s End」 土砂降りの
映画評 「THE ZERO THEOREM」鑑賞 テリー・ギリアム御大の4〜5年ぶりの新作。イギリスではもうDVD出てますが、日本では秋くらいに公開ということで、ネタバレしないように感想をざっと: ・舞台は明言されないけどおそらく近未来。主人公のコーエン・レスは、とある電話を待ち続けているために在宅勤務を上司に希望。謎めいた会社社長に会ったのちに彼は在宅勤務が認められ、「ゼロは100%」という謎の定理「ゼロ・セオレム」を解明するように命じられる。しかしコンスタントにデータのアップロードが求められるその業務にコーエンは耐えられなくなり、やがてブチ切れることに…というようなプロット。 ・「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせる近未来のセットのデザインがね、金かかってなさそうなのに独創的で素晴らしいのですよ。ペダルを漕ぐ職場とか、仮想現実スーツのデザインとか。こういうのやらせるとギリアムの右に出る人はいないですね。 ・なお「ブラジル」と似ていることろが沢山あって、主人公は妄想(仮想現実)に逃避してるし、彼の上司を演じるデヴィッド・シューリスは話し方とかがまんまマイケル・ペイリン。デブとノッポの「輸送人」コンビは「ブラジル」の修理人コンビみ
映画評 「UNDER THE SKIN」鑑賞 日本では「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」の題で10月に公開だそうな。 何もない宇宙から何もないスコットランドにやってきた、スカーレット・ヨハンソン型の宇宙人。彼女は死んだ少女の服を身にまとい、バンを乗り回しながら道を尋ねるふりをして通りの男性たちに声をかけて車内に誘う。彼女とねんごろな関係になれると期待した男たちはいそいそと彼女に従うのですが、彼女の家で服を脱ぎだしたところで暗闇にズブズブと沈んでいき、中身を吸われて哀れ皮だけの存在に…というようなストーリー。 お色気宇宙人に男が餌食になる「スペース・バンパイア」とか「スピーシーズ」を思わせるような設定ですが、中身は全く似てなくて、何の説明もなく断片化された話が続く、コテコテのアートフィルムになっている。70年代のアートなSF映画、特にニコラス・ローグの「地球に落ちてきた男 」に雰囲気は似ているかな。 不安をかきたてるような音楽にのせて描かれる、スコットランドの夜景とか男たちが餌食になるシーンはとても美しくて、批評家たちに絶賛されたのは分かるのですが、じゃあ観てて面白いかというとそうでもなく…。正直なところ結構しんどかったな。
映画評 「ザ・レイド GOKUDO」鑑賞 邦題どうにかならなかったのか。普通に「ザ・レイド2」で良かっただろうに。11月に日本公開ということで感想を簡潔に述べます: ・すんばらしい出来。前作はアクションシーンのカメラワークが見事だったが、今回はドラマのシーンのカメラの動きも冴え、登場人物の心境などを如実に表している。演出は前作に比べて格段にあがってるのではないか。 ・前作は前半が銃撃戦がメインで、爆破シーンとかでCGを使ってるのが明らかだったが、今回は全体的に銃の使用は控え目で格闘シーンが満載。敵も律儀に素手で襲いかかってきます。最初の30分はアクションが控え目だけど、あとからどんどん勢いがついてくるぞ。 ・右往左往するカメラワークはどれも凄いんだけど、「走ってくる車を外から撮る → そのまま車内にカメラが入る → 車の反対側の窓から出て、その横から走ってくる車を撮る」というシーンをワンショットで撮ってるのが信じられなくて何度も観てしまった。あれ車のシートのなかにカメラマンが隠れていて、車内でカメラを手渡ししてるらしい! ・物語は前作のラストから2時間後、主人公の兄が殺されるシーンから始まる。よって兄貴の顔と、前作で
映画評 「THE BATTERED BASTARDS OF BASEBALL」鑑賞 今年のサンダンスで話題になったドキュメンタリーで、アメリカではネットフリックス配信になったもの。カート・ラッセルの親父であるビング・ラッセルがポートランドで立ち上げた、独立系のマイナーリーグ球団「ポートランド・マーヴェリクス」の歴史が語られる。 ニューヨーク・ヤンキーズのキャンプ場の近くで育ったビングは、ジョー・ディマジオやルー・ゲーリッグといった選手たちに可愛がられた少年であった。それからハリウッドに移って役者になり、「ボナンザ」の保安官役を長年演じたりしたものの、野球に対する愛情は消えず、番組が終ったあと1973年にポートランドで野球チームを立ち上げることを決心する。当時はすでにメジャー球団によるアフィリエイト化が進んでおり、独立系の球団は彼らのファームチームになっていったものの、ビングはそれに逆らって、トリプルAクラスのビーバーズが去っていったポートランドに、当時唯一の独立系チームとしてマーヴェリクスを立ち上げ、シングルAのチームとして北西リーグに参戦する。 野球をしたい者はやってこい、というトライアウトの広告を業界紙に出したところ、40〜50人くらい来るかと思っていたとこ