映画評 「The Final Member」鑑賞 70分ほどの短いドキュメンタリー。しかし面白かった。 舞台となるのはアイスランドの小さな漁村フーサビク。ここには世界で唯一の「ペニスの博物館」があり、元教師のシギ・フヤターソン(Hjartarson)が40年近くに渡って蒐集した、ありとあらゆる哺乳類のペニスの標本が、ハムスターからマッコウクジラまでびっしりと飾られていた(つうかみんな骨があるのね)。しかしそんなシギのコレクションにも、1つだけ欠けている標本があった。そう、ホモ・サピエンスこと人間の生殖器(以下、チンコと呼ぶ)である。自分が死ぬ前にどうにかコレクションを完成させたいと願うシギは標本のドナーの募集をかけ、同じくアイスランド人のパール・アラソンより、自分が死んだら標本を献上するとの約束をもらう。しかしそれに対抗して名乗り出たのがアメリカ人のトム・ミッチェルで、「エルモ」と名付けられたチンコ(oh...)を持つ彼は、「世界初の標本となるのはアメリカ人だ!」という考えを持ち、「エルモ」の頭に星条旗のイレズミを施し(oh...)、さらには彼が死ぬ前にエルモを切り取って(!)献上することをシギに提案する。ミッチェルの強引な態度に
映画評 「グランド・ブダペスト・ホテル」鑑賞 いやー素晴らしい出来ではないですか。公開中なので感想をざっくりと: ・今までのウェス・アンダーソン作品のシュールな展開がまったりと続く内容とは違って、歴史および(ファシズムが近づくことの)ペーソスが加わっており、話に深みを与えている。これって結構大きな発展であろう。 ・他にもアンダーソン作品の特徴であったブリティッシュ・ロックを一切排除したり、画面のアスペクト比を変えたりと細かい試行が施されていて、実にアンダーソン的でありつつも新たなスタイルを確立している感じ。 ・アンダーソン作品ではお馴染みの役者たちもたくさん出ていて、あまりにもたくさん出ているためビル・マーレイとかオーウェン・ウィルソンなんて連続出演記録をつくるためだけのカメオ出演のようになってしまっていたな。 ・一方でアンダーソン作品初出演で主役を務めるレイフ・ファインズが本当に見事で、この人はコメディもきちんと演じることができるのだと実感させられた。 ・そしてハーヴェイ・カイテルが久しぶりに裸になっていて、ああやはりこの男は脱ぐのが好きなのだとひと安心。 ・興行的には世界中でヒットしてるらしいですが、これで初めて
映画評 「SUPERHEROES」鑑賞 前からちょっと観たかったHBO製作のドキュメンタリー。 いわゆる『キック・アス』的な、リアルにスーパーヒーローの格好をして犯罪と戦う人たちを追ったもので、サンディエゴやブルックリン、はてはバンクーバーと北米各地で活動する、『マスター・レジェンド』や『ミスター・エクストリーム』といった人々を紹介している。おそらく世間的にいちばん有名なヒーローであるシアトルのフェニックス・ジョーンズは登場していなかった。 もちろんタイトルとは裏腹に誰もスーパーパワーなんて持ってなくて、格闘技を習ったりプロテクターを着けたりスタンガンを持ったりして夜のパトロールへと彼らは出かけていく。彼らがヒーローになった動機はおおまかに2つあって、崩壊家庭の出身で学校でもイジめられており、その反動でヒーローになったというのと、困っている人たちを見過ごすことができずに社会貢献のためヒーローになったというもの。「ウォッチメン」でも言及されていたキティ・ジェノヴィーズ事件を動機に挙げていた人もいたな。あと「子供のときにコスチュームをまとってイジメッ子を待ち伏せし、ボコボコにした」と語る人もいるんだが、それって犯罪では…。
映画評 「ゴジラ」鑑賞 これもアメリカで観てきたので、ネタバレにならぬよう感想をざっと。なお俺自身は昭和版のゴジラやガメラ作品はそれなりに観ていたけど、84年の「ゴジラ」を最後にそれ以降のものは観ておりませぬ。 ・まず何よりも「人智を超えた存在」かつ「正義の味方」であるゴジラの描写が巧みなバランスで描かれていたと思う。 ・もうご存知の方も多いかとは思いますが、ゴジラ以外の怪獣が劇中では登場するわけで、それらを悪役にすることでゴジラを(いちおう)人間の側に立たせることができているわけなんですね。 ・話の後半になるまでゴジラがまっとうに姿を見せない演出は賛否両論あるみたいだけど、ベタに出まくるよりも良いんじゃないですか。むしろゴジラの全貌をなかなか見せないことで臨場感を高めている。 ・そしてゴジラに多くの「決め」のシーンを与えてるあたり、監督は分かってんなあと。放射能火焔を吐く前に、暗闇のなかで青く光る背びれが映ったときはゾクゾクしましたね。 ・「人間 VS 怪獣」のスタンスをとっていたエメリッヒ版「ゴジラ」に対し、こちらの怪獣たちは自然の猛威の象徴であり、人間たちはその猛威を目前にしてうろたえること
映画評 「X-MEN: フューチャー&パスト」鑑賞 アメリカで観てきてしまったのだよ。ネタバレにならぬよう簡単な感想を: ・『Xメン映画の中では最高の出来』という声がアメリカでは既に挙ってまして、確かに個人的にも『X2』と並んで非常に楽しめた作品であった。 ・アクション映画ながらもヒューマンドラマ(ミュータントドラマ?)をきっちりと仕立てていて、ベトナム戦争とパリ協定という争乱の時代を背景に、迫害されるミュータントの葛藤をうまく描いている。 ・未来と過去(1973年)の物語が同時に進むため、プロットがみっちり詰め込まれた内容になっているものの、決して煩雑にはなっておらず、密度の高い展開が進展していく。ただしキャラクターの説明などは殆どされないため(特に未来のXメン)、過去の作品やコミックに詳しくない人は十分に楽しめないかもしれない。 ・つうかキティ・プライドのあの能力ってコミックにも登場しないぞ。エレン・ペイジが可愛いので許すけど。 ・未来のXメンはそんなに登場しなくて、70年代のファースト・ジェネレーション組とウルヴァリンが主役扱い。やはりマイケル・ファスベンダーの役がいちばん良くて、プロフェッサーXと手を組むもののいつ裏
映画評 機内で観た映画2014 またちょっと海外に行ってたので、機内で観た映画の感想をざっくりと: ・「LEGO® ムービー」 「LEGOムービー」と「®」を抜かして書くと訴えられたりするのだろうか。終盤のメタな展開には驚いたが、「とりあえず何でも組み立ててみればいいじゃん」ということを謳った脚本が素晴しい。バットマンの声はウィル・アーネットでも悪くないのだが、やはりケヴィン・コンロイにあてて欲しかったな。 ・「CUBAN FURY」 サルサ・ダンスをテーマにした、ニック・フロストとクリス・オダウドが出ているコメディ。まあ典型的なイギリスの小規模コメディといった感じで、良くはないんだけどそんなに悪くもない。出演者のファンだけにお勧めできるような作品。練習もなしで見事なダンスをしてしまうオリヴィア・コールマンのキャラクターはちょっと反則だろう。 ・「Alan Partridge: Alpha Papa」 言わずと知れた、スティーブ・クーガン演じるアラン・パートリッジの劇場版。テレビ版をそんなに観てたわけではないのですが、今回のパートリッジはずっと「場の空気が読める」人になってるような?コルム・ミーニー演じる立てこ
映画評 「her/世界でひとつの彼女」鑑賞 スパイク・ジョーンズの新作。 舞台は近未来のロサンゼルス。恋人や家族への手紙のメールの代筆業をしているセオドアは、別れた妻との離婚協議をズルズルと引き延ばしているような男性で、内気な性格のために新しい彼女を見つけることもままならない。そんなとき、ユーザー個人に進化して適応してくれるというコンピューターの新しいOSを見つけ、早速自宅のPCとスマートフォンにインストールする。音声で語りかけてくれるそのOSは自らをサマンサと名付け、セオドアのさまざまな世話を行なうようになる。そんなサマンサと気楽な会話を続けていたセオドアだが、やがて彼らは人種(?)の壁を越え、互いに愛し合う仲となる。しかしサマンサが進化を遂げていくにつれ、2人の仲は微妙な仲になっていき…というストーリー。 女声のOSと恋に落ちる男の物語、と聞くとキモがられるかもしれないが、そこらへんは比較的サラっと受け流されていて、拒否感を示す人もいる一方で普通に受け入れる人もいて、セオドア以外にもOSと親密な仲になる人たちも登場する。とはいえ真っ当なラブストーリーというわけでもなく、いろいろSF的な要素も絡んできていて、そこらへんの
映画評 「GOD LOVES UGANDA」鑑賞 昨年のアカデミー賞にもノミネートされたドキュメンタリー。 こないだウガンダでは同性愛を犯罪とみなし、終身刑の厳罰に処することができる法案が署名されて国際的な批判を受けたわけだが、その思想の根源はアフリカでなくアメリカのキリスト教右派にあるとする内容。世界各国に宣教師を送り込みキリスト教の教えを伝道しようとする団体「International House of Prayer」(通称IHOP。日本にも支部があるようだけど日本語の団体名が分からなかった)は、イディ・アミンが失脚したのちに混沌状態にあったウガンダに目を付け、アフリカでの伝道の拠点とするために宣教師たちを送り込むようになる。彼らは住民のために献身的に活動する一方で、同性愛や婚前のセックスは悪だとするキリスト教保守の考えを持ち込み、やがてウガンダの政治家たちも感化されていく…というような話。 IHOPの宣教師たちは目つきや話し方がちょっとヤバい感じがするのですが、彼らの目的は単なる布教だけでなく、もっとパワーゲームめいたものであることが劇中では示唆されている。クリントン政権のときはコンドームの使用についてアメリカから補助を受
映画評 「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」鑑賞 とてもよく出来た作品ですよ。何を書いてもネタバレになりそうな内容なので、感想を手短に。 ・ジョー・ジョンストンのレトロ趣味が合っていた前作に対し、こちらは70年代スリラーの雰囲気を漂わせて、現代におけるキャップの存在意義をうまく描いている。コメディ畑の、あまり手がけた作品も多くない監督にこれだけの大作をまかせて、ちゃんと結果を出させているところが凄いなあと。 ・原作をうまくアレンジして、プロットやキャラクターを詰め込みすぎずに、あくまでも映画として楽しめる内容になっている。ここらへんは「アメスパ2」と違って、既にフランチャイズが確立されている側の強みだろうな。 ・その一方で、今回の展開とエンドクレジット後の映像が、アベンジャーズ続編(というかウルトロンそのもの)とどうつながるか予想もつかんのですが、そこは胸をときめかせて期待しときましょう。 ・「アイアンマン3」でもA.I.M.のメンバーはユニフォーム着てなかったけど、ヒドラの諸君にはぜひこれやって欲しかったな: ・いままで映画のなかでトリスケリオンが言及されたことってあったっけ? ・ギャリー・シャンドリング、ちょっと不
映画評 「アメイジング・スパイダーマン2」鑑賞 公開中なので簡単な感想をざっと: ・こないだ「ロボコップ」観た時も思ったんだけど、なんか話を詰め込みすぎて、描写しなければならないシーンが多くなり、おかげでかえって全ての場面がせかされたような感じになっている。2時間半近い尺なのに、話のフラグ立てばかりやっていてメリハリがなくなっているような? ・そりゃフランチャイズのキャラクターをいろいろ登場させないといけないだろうし、スピンオフ作品への伏線も張っておく必用があるのだろうけど、もっと各キャラクターの動機や心境を描いて話に緩急をつけないとさあ。グリーン・ゴブリンなんて「へ?なんで突然飛べるの?」といった展開だったし。 ・その一方で、ピーターとグウェンの恋人同士の描写は相変わらず前作に続いて秀逸であった。前作のデジタルから35ミリに切り替えて撮影されたという陽光の中の2人のシーンとかは本当に美しい。マーク・ウェブはアクション映画なんか撮ってないで、フォックスに戻って恋愛映画を撮りなさい。 ・前作はオズコープのセキュリティのザルさが叩かれていたが、レイヴンクロフト刑務所のセキュリティもひどすぎるだろ!そりゃ脱獄させないと話が進まな
映画評 「Narco Cultura」鑑賞 昨年「アクト・オブ・キリング」と並んで高い評価を受けていたドキュメンタリー。 メキシコの麻薬戦争と、メキシコおよびアメリカのヒスパニックのあいだで人気が出ている音楽ムーブメント「ナルココリード(麻薬バラード)」を取り上げたもので、テキサスのエル・パソに隣接しているメキシコのフアレスは麻薬戦争の影響によって殺人の件数が10倍に跳ね上がり、年間3000人近い犠牲者が出るようになってしまっていた。その一方で金と権力を手にした麻薬王たちは若者たちの憧れの的となり、彼らのライフスタイルを賛美した歌が作られ、それが大衆のあいだで人気を博していくことになる。 このドキュメンタリーではフアレス警察で科学捜査を行なうリチ・ソトと、ロサンゼルスでナルココリードの歌手として大成しようとするエドガー・クインテロという2人の男性の日常が交互に描かれている。ソトのほうは毎日のように血なまぐさい殺人事件の現場に呼び出され、麻薬カルテルの報復を避けるために覆面をして捜査をする次第。それでも何人かの同僚は暗殺されており、警察もまたカルテルの金によって汚職がはびこっていることが示唆される(刑務所に銃持った連中が普通
映画評 「A BAND CALLED DEATH」鑑賞 「シュガーマン 奇跡に愛された男」や「アンヴィル!」みたいな、忘れ去られたバンドを追いかけたドキュメンタリー。 1970年代初頭のデトロイト。黒人であるデビッドとボビーとダニスのハックニー3兄弟はザ・フーやアリス・クーパーに触発され、ロックバンドを組むことを決意する。モータウン全盛期のデトロイトにおいて彼らのような黒人がロックミュージックを演奏することは異色なことであり、近所の人たちからも「白人の音楽じゃないの!」と色目で見られた彼らだが、構わずに練習を続けて腕を上達させていく。当初はバンド名をロック・ファイヤー・ファンク・エキスプレスと名乗っていたものの、すぐにリーダーのデビッドの発案により名前を「デス」へと変更する(彼らは敬虔なクリスチャンであり、それなりにスピリチュアルな意向があったらしい)。 そして適当に選んだスタジオに入ってアルバムの収録を始めた彼らはプロデューサーに曲の良さを認められ、レコード会社の幹部にも紹介してもらう。しかしそのまんま「死」というバンド名が敬遠され、そのレコード会社はおろか世界中のレコード会社から拒絶をくらってしまうが、デビッドはバンド名の変更を頑
映画評 「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」鑑賞 コーエン兄弟の新作。5月に日本公開されるらしいので、ネタバレにならない程度に感想をざっと。 1961年の冬の1週間を舞台に、売れないフォークシンガーであるルーウィン・デイヴィスの放浪のさまを描いたもので、ルーウィンはセッションに声がかかる程度のミュージシャンではあるものの出したレコードは売れず、家もないので知人のところに転々として泊まり、金やタバコをせびっている始末。ミュージシャンのとしての熱意も消え失せ、以前やっていた船員の仕事に戻ろうかとも考えているくせに、妥協してCMソングを演奏することも渋っているような彼が、仕事を求めてニューヨークのイーストビレッジからシカゴまで旅するのだが…というような話。 これは決して「夢見て努力するミュージシャンの話」ではないですよ。もっとドツボにはまった男の物語で、ある程度はルーウィン自身の不遜な態度に問題があるというものの、ダメ男が主人公だとつい感情移入してしまいますね。もともとデュオで活動していた彼がソロに転向したことがストーリーに大きく影響しているわけだが、その理由についてはここでは触れない(つうかトレーラーでバラしてるね)。フォークソング
映画評 「それでも夜は明ける」鑑賞 ネタバレにならない程度に感想をざっと。 ・その題材や主人公の経験する物事は確かに過酷なものなんだけど、圧倒的な映像美や役者の巧みな演技によって、意外と角がとれて観やすい内容になっていた。あまりクセがなくて歴史もので感動のドラマ、という点では確かにアカデミー好みの作品ではあるな。 ・主人公が精神的かつ肉体的な試練を受けるという内容は、監督の前作「シェイム」よりもその前の「HUNGER」のほうに似ていると思いました。 ・キャストは豪華なんだけど、いろいろ出過ぎてみんなの出番は比較的短いよ(ファスベンダーは除く)。マイケル・K・ウィリアムスなんて冒頭に出てきたかと思いきやどこかに行ってしまったし。 ・ルピタ・ニョンゴの演技は巧いが、アカデミー賞とるほどのものか?マイケル・ファスベンダーのほうがずっと鬼気迫る見事な演技をしていたぞ。 ・ポール・ダノはかん高い声でわめくとっちゃん坊やの役ばかり最近は演じてるような。 ・そしてプロデューサーもやってるブラッド・ピットはちゃっかりおいしい役を演じてんなあ。 ・黒人は当時からaskをaksと発音していたのか?あれヒップホップ文化のスラン
映画評 「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」鑑賞 アレクサンダー・ペインが故郷のネブラスカを舞台に撮った新作。 半ばボケ気味の老人であるウッディは、「あなたは100万ドルが当たりました!」というチラシをもらったことから賞金をもらいにオマハから数百マイル離れたリンカーンまで行こうとする。彼の妻や息子のデビッドはそれが単なる宣伝用の文句であることを見抜くものの、ウッディは頑として譲らずに歩いてでもリンカーンに行こうとする。仕方なしにデビッドは仕事を休んで父親をリンカーンまで連れて行くことになり、途中でウッディの故郷である町ホーソーンに立ち寄って親族たちに出会うものの、ウッディが大金持ちになったという噂は町にまたたくまに広がり…といったストーリー。 全編を通してモノクロで撮影されており、ペインは「ネブラスカにお似合いでしょ!」と言ってるのだがそういう土地なのか?ネブラスカを舞台にしたロードムービーという点では同監督の「アバウト・シュミット」に通じるものがあるが、あちらはあくまでも話の中心がジャック・ニコルソンのシュミットだったのに対し、こちらは寡黙なボケ老人が主役なため中心にぽっかり穴が空き、その周りを登場人物が固めているような感じ。
映画評 「MAN OF TAI CHI」鑑賞 日本(だよね?)を舞台にした「47 RONIN」が批評的にも興行的にも壊滅的な結果であったのが記憶に新しいキアヌ・リーブスだが、実はアジアチックな映画に昨年もう1つ出ていて、さらにこちらでは初監督まで務めている。舞台は中国、セリフも殆ど中国語という完全な中国映画なのだが、これってキアヌが「僕が出演と監督やるから映画を作らせてよ」と中国資本にアプローチしたのかな。結果としてはやはりトンデモな作品になっていて、以後はみっちりネタバレしながら書くのでご注意ください: タイガー・チェンはリンコン太極拳を学ぶ若者で、配達業のバイトをしながらも老師の唯一の弟子として修行に励んでいた。太極拳は精神的なものだと老師に説かれるものの、その可能性を世に知らしめたいと思ったタイガーは異種格闘技のトーナメントへと出場する。太極拳ってゆっくり動く体操のようなイメージがあるけど、彼のリンコン太極拳はれっきとした武術であるらしい。そして初戦を勝利で飾ったタイガーは、その格闘スタイルを謎の大富豪ドナカ・マーク(キアヌだよ)に目をつけられる。 ドナカは香港で闇の格闘技場を運営しており、そこでの究極の試合は選手の生
映画評 「COMPUTER CHESS」鑑賞 昨年アメリカで公開されたインディペンデント映画。 舞台は1980年代初頭(おそらく)。とあるホテルにおいてコンピューター同士のチェスの団体戦が行なわれ、コンピューター少年たち(および少女1名)が次作のプログラムを抱えてホテルにやってくる。さらに同じホテルではカップル向けのセラピー・セッションが行なわれており、さまざまな人物がチェスのコマのごとくホテルを行き交うのだった…とかいうような内容。 というか話のプロットが存在しないような…。プログラムに目をつけたペンタゴンのエージェントたちが登場し、自我を持ったコンピューターの存在が示唆されるものの、話は決してSFやサスペンスにはならないし、コメディっぽいようでシュールな会話が続くだけだし、何と言ったらよいものか…。コンピューターと人間の関係の始まりを描いてるという説もあるようだけど、よく分からんのよね…。 映像はモノクロのビデオ撮りで、70年代のビデオ機材をeBayで入手して実際にそれで撮影を行ったらしい。一カ所だけカラーになるけど、悪夢のようなリピート映像になっております。監督のアンドリュー・ブジャルスキーはマンブルコア出身の人らし
映画評 「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」鑑賞 こちらも簡潔に感想を: ・前半はね、前作であまり描かれなかったアスガルドの生活とかが描かれて、いろいろ楽しい小ネタ満載で面白いとは思うのですよ。散りばめられているジョークも心地よいし。ただそのノリで後半のクライマックスまで行ってしまって、なんかものすごいパワーを身につけたはずの的が、地球人のガジェットに苦戦したり、ビルからずり落ちたり、ソーが地下鉄乗ったり、なんだかなあという展開になってしまったのが残念。 ・そして小ネタというなら、ジェーンとシフの三角関係をうやむやにしてしまったのが勿体なかったな。キャラクターの感情をきちんと表現できる格好の材料なのに。 ・不思議の国にいるナタリー・ポートマンはアミダラ姫にしか見えない。 ・ロキを演じるヒドルストンの演技が出色の出来。彼ひとりで映画を支えてると言っても過言ではない。無骨なソーとのコントラストが見事ですね。 ・クリストファー・エクルストンは「GIジョー」でも鉄仮面をかぶってたけど、なぜハリウッド映画では素顔を出させてもらえないのか。 ・アリス・クリーグ(ボーグ・クイーンね)のチョイ役は何だったんだ。クリス・オダウドはああいう
映画評 「ウルフ・オブ・ウォールストリート」鑑賞 ネタバレにならない程度に軽く感想を: ・ディカプリオ、やるじゃん!今まではシリアスな大作ばかり選んでいて演技の幅がえらく狭いような印象があったけど、今作では吹っ切れてコミカルな演技に徹し、役者としての新境地を開拓している。やはり「ジャンゴ」の演技が役立ったのかな。今までは必ずしも好きな役者ではなかったが、これならアカデミー賞穫っても納得かと。あの丸くなった輪郭でコメディを演じるとセス・マクファーレンにしか見えないという致命的な欠点には目をつぶろう。 ・ジョナ・ヒルもいい感じ。もともと彼への期待値が低かったというのもあるけど、入れ歯つけた熱演を見せてくれる。彼は自分が主役やったり製作やると大抵ツマらないのですが、こういうサイドキック役を演じると巧いよね。ちなみにイーサン・スプリーのセリフが殆どないのはキャラがジョナ・ヒルとかぶるからだろうか。 ・3時間の長尺とはいえ、テンポの良い演出と編集のおかげで、あまり中だるみせずに最後まで楽しめる。あの90年代的な絶妙なサントラはスコセッシが選んでるのだろうか、それともロビー・ロバートソン? ・意外なところでロッキー青木の名前が出てきて失
映画評 「In A World...」鑑賞 ナレーション業界(特に映画の予告編)を舞台にしたコメディドラマ。 ハリウッド映画の予告編のナレーションといえばドン・ラフォンテーンという伝説的な存在がいて、彼のキャッチフレーズ「In A World...」はあまたの予告編のナレーションで使われてきたわけですが、そのラフォンテーン亡きあと、誰が次のラフォンテーンになれるか?というのがこの映画の設定。主人公のキャロルは役者たちの発音コーチをしながらもナレーターを目指す女の子で、父親のサムはナレーターの大御所であるものの女性のキャロルには一切アドバイスを与えず、若いガールフレンドが出来たといってキャロルを家から追い出してしまうような奴。仕方なしに姉夫婦の家に転がり込んだキャロルは、新作映画のナレーションのオーディションに参加して仕事を勝ち取るものの、サムの友人でナレーター界のスターであるグスタフはそれを快く思わず…というようなストーリー。 主演と監督は「CHILDRENS HOSPITAL」に出ているコメディエンヌのレイク・ベル。あの番組の共演者であるロブ・コードリーやケン・マリーノのほか、ディミトリ・マーティンとかティグ・ノタロ、ニ
映画評 「I Give It a Year」鑑賞 イギリス人が乳繰り合うラブコメディを作ってはや20年(エドガー・ライトの作品とかも作ってはいますが)のワーキング・タイトル社が送る新たなラブコメ。 ナットとジョッシュのカップルは出会ってからすぐに恋に落ち、短期間で結婚にまで辿り着く。しかし2人の相性が微妙に合っていないのは周囲も認めるところであり、口の悪い友人には「2人の結婚はもって1年ね」と言われる次第。そしてその予見は現実のものとなり、2人の結婚生活は9ヶ月目に暗唱に乗り上げてしまう。それでも1年はどうにかもたせようと2人はカウンセラーのところに通ったりして努力するものの、ジョッシュの前には昔の彼女が現われ、さらにナットは金持ちの若社長に口説かれてしまう…というストーリー。 まあ「ラブ・アクチュアリー」的な、害のないジョークとホンワカとした展開が続くラブストーリーではあるのですが、主人公ふたりの食い違いがテーマになってるせいか、なんかしっくりこない内容になっていたような?恋愛のリアリティというかエグさをワーキング・タイトル作品に求めるわけではないですが、ナットへの若社長の迫り方なんてパワハラものだし、各キャラクターの描き方が
映画評 「アクト・オブ・キリング」鑑賞 昨年公開されて絶賛と論議を呼んだジョシュア・オッペンハイマー監督のドキュメンタリー。プロデューサーにヴェルナー・ヘルツォークとエロール・モリスという巨匠が名を連ねているが、製作自体にはあまり関わってないみたい。122分のバージョンと159分のものがあって、後者を観たのだが、122分のほうにだけ使われてる映像もあるとか? インドネシアで1965年に起きた軍事クーデターの結果として行なわれ、100万人もの共産主義者(中国系が多い)が殺されたという大量虐殺に関与したアンウォー・コンゴ(劇中ではずばり「処刑人」という肩書きで紹介される)を追ったもの。70を超えても高そうなシャツとスーツに身を包み、入れ歯を入念にチェックするアンウォーは北スマトラ州で映画館のチケットのダフ屋をしていたギャングの一員だったが、軍部が共産主義者の粛正にあたりギャングの手を借りたことから、彼らの虐殺に加担することとなりワイヤーを使った絞殺具で1000人もの共産主義者を殺したことを公言する(撲殺は血だらけになるから絞殺を好んだらしい)。 そのままギャングはパンチャシラ・ユースという数百万人規模の準軍事組織に組み込ま
映画評 「Prince Avalanche」鑑賞 昨年話題になってながらも見逃した映画を、チマチマと拾っていく次第であります。ポール・ラッドとエミール・ハーシュ主演のドラマ。 舞台は1988年のテキサス。前年に起きた山火事によって大きな被害を受けた森林公園の再建作業に関わるため、アルヴィンはガールフレンドの弟であるランスを連れて町を離れ、山奥において道路の整理作業をしていた。幼稚な振る舞いをするランスをあまり快く思っていなかったアルヴィンだが、週末に町に戻ったランスは女性関係のトラブルに遭遇してふさぎ込んでしまう。さらにアルヴィンもガールフレンドとの間に一悶着あり…というようなプロット。 画面に出て来るのはほぼこの2人だけということもあり、いわゆるブロマンスものではあるのですが、その一方では町に残してきた女性たちについてウジウジ悩む男たちの恋愛映画でもある。対象となる女性たちが出てこないという演出が特徴的かな。ちなみに「雪崩の王子様」という題名はストーリーと殆ど関係ありません。当然ながらドクター・アバランシェ(知ってる?)とも関係ないよ。 ストーリー自体はアイスランドの「Either Way」という映画のリメークらしいが、20
映画評 2013年の映画トップ5 今年は別に不作の年でもなかったが、無理して10本を選ばずに5本に絞ってみました。観た順で順位は特につけません。 「ゼロ・ダーク・サーティ」 そのモラルの闇を見つめるさまは決して居心地が良いものではないが、ラスト30分の襲撃シーンの重々しさは見事だった。 「Upstream Color」 いや、実のところ何を言いたいのかよく分からないんですけどね、でもその映像美と世界観が良いなあと。 「パシフィック・リム」 娯楽映画としてはこれが今年のベストでしょう。 「Escape From Tomorrow」 ディズニーランドでゲリラ撮影したというギミックだけが強調されがちだが、撮影は意外なほどしっかりしているし、ウルトラQ的な幻想に浸れる良く出来たファンタジー。 「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」 3部作のなかではいちばん弱いような気もするが、それでも今年のコメディのなかでは圧倒的な入念さをこめて作られていた。細かいネタを見落としたいずれまた観ます。 他には「フライト」「セブン・サイコパス」「ホーリー・モーターズ」とかが良かったかな。一方で世間的の評判の高い「アルゴ」「ゼロ
映画評 「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」鑑賞 原題「Parkland」。こないだの?東京国際映画祭でも披露されたの、これ? ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺が、当時ダラスにいた周囲の人々にもたらした影響を描いた群像劇で、狙撃されたケネディ(そしてその数日後にはリー・ハーヴェイ・オズワルド)が運び込まれたパークランド記念病院のスタッフたちをはじめ、狙撃を阻止できなかったシークレットサービス、『ザプルーダー・フィルム』を撮影したエイブラハム・ザプルーダー、オズワルドの兄や母親、そしてオズワルドを調査していたFBIエージェントたちの動揺が映し出されていく。 ケネディ暗殺を扱っているものの陰謀論などはいっさい紹介しておらず、あくまでもオズワルドが単独でやったこととし、事件の際にグラシーノールに駆けていく人たちも出てこない。それはそれで構わないんだけど、どうも話が淡々と進みすぎるというか、「大統領が暗殺され、みんなが驚いた」という至極当然のことが語られ、中心となるキャラクターが存在しないことからどうも締まりがない感じがしてしまう。ケネディの棺を入れるのに飛行機の座席を取り外したとか、オズワルドの母親もちょっとキ印だったとか、少なくとも