映画評 「アイアンマン3」鑑賞 3Dなんかで観てやんないですよーだ。 ネタバレにならない程度に感想をざっくり: ・パラマウントのロゴはいつまで出すんだ。 ・いちばん不思議なのはクリスマスの時期を舞台にしていることで、「夏の大作だけど、冬の話でもいいよね?」と言って企画が通るものなんだろうか。 ・皆が中国におべっか使ってるご時世に、中国人の悪役を起用するとは大胆な…と思ってたらマンダリンは中国人ではないのか。ならばなぜマンダリンという名前なんだろう。 ・ガジェットに重きを置きがちだった「2」に対し、あくまでも生身のトニー・スタークに焦点をあてることで、話を新鮮にすることに成功しているかと。 ・ただ敵のアジトに侵入するくだりなどは、90年代のコップムービー的というか、シェーン・ブラックは脚本使い回してない?とも思いました。 ・最初から最後までマーク42のアーマーが大活躍なのですが、やっぱりデザインが好きになれんのだよな…。シルバー・センチュリオン型とかではいけなかったんだろうか。 いちおうマーヴェル映画の、アベンジャーズ後を描いた「フェーズ2」の第1弾となる作品だが、後に続くような伏線が張られていることもなく、前作
映画評 「iSteve」鑑賞 コメディ動画サイト「Funny Or Die」による長尺のパロディ作品。ここで無料で視聴できるよ。 名前で分かるようにアップルのスティーブ・ジョブズの生涯をパロディにしたもので、19歳のときに啓蒙を求めてアジアに旅したところから始まり、スティーブ・ウォズニアックやビル・ゲイツとの出会い、マッキントッシュの誕生、アップルからの追放そして復帰、ピクサーの創立、iPodの発売などといった出来事が駆け足で語られていく。 とはいえパロディ作品なので歴史的考証などはゼロに近くて、ゲイツとはメリンダ・ゲイツをめぐって三角関係になっていたとか、ジョン・スカリーはコモドール社が送った刺客だったとか、iPodのアイデアはスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンとLSDをキメてたときに思いついたとか、かなりウソだらけの展開が続くので本気にしてはいけないよ。スカリーなんてジョブズが復帰したあとにコモドールのボスと一緒に服毒自殺したりしてるんだが、訴えられたりしないのかこれ。 ただしハチャメチャな話が続くので面白いのかというと必ずしもそうではなくて、なんか全体的に間延びしているというか、ショボいジョ
映画評 「John Dies At The End」鑑賞 『ファンタズム』シリーズや『プレスリーVSミイラ男』のドン・コスカレリによる新作。原作はCracked.comでいろいろ面白い記事を書いているデビッド・ウォンことジェイソン・パージンの小説。 内容がぶっ飛んでて、話の時系列もかなり入り乱れてるのであらすじを説明するのが難しいのだが、とりあえず劇中の出来事を箇条書きにすると: ・主人公のデビッドが怪しい中華料理屋で記者の取材を受ける。 ・デビッドは謎のドラッグ「ソイ・ソース」を服用しており、その副作用で超人的な感覚を備えていたため超自然的な怪物を探知することができ、友人のジョンとゴーストバスターズ的な仕事をしていた。 ・デビッドとジョンはあるパーティーで知り合ったのだが、その晩にデビッドは謎の男に車中で襲われ、誤って「ソイ・ソース」を自分に打ち込んでしまう。 ・その直後に警察に逮捕されるデビッド。彼らによるとパーティーの参加者がみんな死亡するという事件が起きており、それとの関与を疑われてデビッドは逮捕されたのだ。 ・さらにジョンまでもが死亡したと警察に伝えられるデビッド。愕然とする彼だったが、携帯電話にジョンからの電話がかかってきて
映画評 「リンカーン」鑑賞 スピルバーグの映画を観るのはかなり久しぶりだったりする。リンカーンは黒人を解放した一方でインディアンたちは虐殺してた、なんてことを事前にウィキペディアで読んでしまったためについヒネくれた見方をしてしまったが、まあそれはそれで。 南北戦争の勝利を目前にしつつも、勝ってしまえば自分が戦争に対して唱えた奴隷解放宣言が破棄されてしまうことを危惧し、奴隷の所有を禁じた憲法修正第13条を議会で可決させようと努力するリンカーンの姿を描いた作品だが、登場するリンカーンは決して威風堂々としているわけではなく、その長駆を弱々しく曲げ、ひしゃげた声でしゃべる小話好きな老人として表されている。 そして第13条を可決するためには野党の民主党の票が必要であることを悟った彼は、小汚いロビイストたちを雇い、レームダックとなって次の選挙の心配をする必要のない民主党の議員たちを1人ずつ狙っていく。ロビイストたちのやり方は非合法スレスレであり、リンカーン自身も議会で虚偽の証言まがいのことを行ってしまうわけだが、決してリンカーンの行為はダーティなものとしては描かれず、正しい目的のためには多少の汚い手段を用いるのもやむを
映画評 「ゼロ・ダーク・サーティ」鑑賞 イラク駐留軍の日々を淡々と追った「ハート・ロッカー」よりも、こちらのほうがビン・ラディン狩りという一貫した目的がストーリーの軸となっているために作品としてはずっと面白いな。日々が過ぎていくことの焦燥感とか、CIAの決意なども「アルゴ」よりうまく描けてたのでは。主人公のバックグラウンドが全く紹介されていないにも関わらず熱意に共感できるようになってるのは巧いなと。 軍のプロパガンダだとか拷問の肯定をしているなどと叩かれているけど、これは単にキャスリン・ビグローの作家性の表れでしょう。サスペンスの最中にしれっとガールトークを入れてくるあたりが女性監督のセンスなのかしらん。そのあとすぐ爆弾テロが起きてたけど。 ただやはり拷問の扱いについてはモヤモヤとした気分が残るのは確かで、非アメリカ人の有色人種としては、拷問される側の身になって観てしまうんだよな。最初は拷問から距離をおいていた主人公が後に慣れてくるところよりも、オバマ政権になって「捕虜に弁護士がつけられたから情報が聞き出せなくなった」というセリフが出てきたところが不気味だったな。拷問にしろ主人公の最後の涙にしろ、タイトル通りの真っ暗な
映画評 「Something from Nothing: The Art of Rap」鑑賞 最近はラッパーというよりも俳優という印象の強かったアイス・Tによる、ヒップホップ文化およびラップの歴史や影響などについて語られるドキュメンタリー。 特に筋道の通った構成があるわけではなく、アイス・Tと交流があるさまざまなラッパーたちがそれぞれのヒップホップ論を語っていくわけだが、ニューヨークのオールド・スクール一派に始まりデトロイトを経由してロサンゼルスに至るまでに出てくる面子が非常に豪華で、チャック・Dやエミネム、コモン、カニエ・ウェスト、メリー・メルなどといったラップ界の新旧スターが勢揃いといったところ。一方でビースティ・ボーイズやRZA、LLクールJ、南部のアウトキャストなどといった面々は登場していない。しかしみんなガタイがいいのう。出てくる人たちのBボーイ系のファッションにも注目。 ラッパーの常としてみんな言うことがデカいので歴史的考証などは結構いいかげんそうなのだが、各人のリリックに対する考えなどは聞いていて興味深いものがあったよ。個人的にはビーツの作り方とかDJのやり方といった技術的なことも聞きたかったな。また多くの人がフリースタイルを披露してるのだが(エミネムはカン
映画評 「ジャンゴ 繋がれざる者」鑑賞 タランティーノってその趣味に走りまくる姿勢が、例えばジョー・ダンテなどと違ってどうも肌に合わないところがあったのだが、これはとても楽しめる作品であったよ。もちろん冒頭のクレジットからして趣味に走ってるわけだが、西部劇(というか南部劇)の枠組みのなかにうまくストーリーが収まっているというか。少なくとも「イングロリアス」みたいに途中でミュージックビデオみたいになってどうしよう、という展開はなかったし。 とはいえかつての「主人」たちに復讐する話かと思いきやその目的はすぐに果たされ、やっとディカプリオが出てきて話の流れが変わる展開は、「キル・ビル」以降の蘊蓄がやたら語られるスタイルに通じていてあまり好きではないのだが、こちらはアクション満載の描写とスピーディーな話の流れもあって2時間超の長尺も殆ど気にはならなかった。 いちばん良かったのがやはりキャスティングで、主役のジェイミー・フォックスはまあ普通としても、対するレオナルド・ディカプリオがイヤミな悪役を怪演していて素晴らしい。彼っていつもは主役ばかり演じているので肩に力が入りすぎている気がするのだが、実はこういう脇役を演じた方がもっと幅
映画評 「ホーリー・モーターズ」鑑賞 昨年海外では絶賛されていたフランス映画。監督のレオス・カラックスって名前は知ってたけど作品を観るのはこれが初です。なんかよく分かんないんだけどとてもすごい映画であったよ。 ある晩に目覚めた男(カラックス本人)が自室の壁にあった隠し通路を発見。そこを抜けると大衆がサイレント映画を観ている劇場だった…というオープニングは本編とまったく関係なくて、本編の主人公となるのはオスカー氏という男性。大邸宅に住み子供たちにも恵まれた彼は、巨大な白いリムジンに乗って仕事へと向かう。そんな彼の仕事とは、与えられたファイルをもとに、変装をしてさまざまな「業務」をこなすことだった。まず老婆に変装して橋の上で物乞いをしたオスカーは、それからゲーム用のモーションスーツを着込んで撮影用のスタジオでハードなアクションをこなし、同じくスーツを着込んだ女優とセックスの模擬をする。このようにしてオスカーは9つの業務を1日のなかでこなしていく…というストーリー。 ストーリーは本当にこれだけでして、オスカーに仕事を与えるエージェンシーがあることや、同じような仕事をしている人たちが他にもいることが示唆されるんだけど、オスカー
映画評 「フライト」鑑賞 やるじゃんゼメキス。ここ10年は不気味の谷のあちら側に行っていた感のある人ですが、「キャスト・アウェイ」で培った飛行機落としのテクニックに磨きをかけて、意外にもR指定で実写にカムバックしてきたわけです。 勝手に想像していた「事故のときに何が起こったのか?」という展開の話ではなく、事故とその後の話が時系列に沿って描かれていくわけだが、苦境に陥った主人公が宗教・家族・AAなどといった救済の可能性に触れ、最後に2つの選択肢を持つことになるという流れは「ライフ・オブ・パイ」に少し通じるものがあるかな。 アル中の問題児である主人公の自己中な振る舞いを最初から最後まで見せつけられる展開であるため、本来ならば観客は主人公に感情移入できないはずなのだが、それでも観る人の目を引きつけさせるデンゼル・ワシントンの演技力が凄い。顔面の細かな動きから体の微妙な揺らし方まで、すごく話のリズムに合っていて飽きさせない。彼は共演者からの評判が悪いことであまり好きな役者ではなかったのだが、やはり演技力は超一流であることを実感。相手役のケリー・ライリーって女優はよく知らなかったのですが、こちらもいい演技してます。
映画評 「LAWLESS」鑑賞 日本では「欲望のバージニア」というアレな題名で6月に公開されるそうで。ニック・ケイヴ師匠とジョン・ヒルコートが「プロポジション 血の誓約」に続いてタッグを組んだ作品で、実在した3兄弟に関する小説を映画化したもの。 舞台となるのは1931年のヴァージニアの片田舎。禁酒法の時代にハワードとフォレストとジャックの3兄弟は密造酒を作って荒稼ぎをし、地元の警察も彼らのことを見過ごしていた。しかしシカゴから派遣された敏腕刑事とその上司の検事が利益の分け前を要求したのに対して3兄弟はこれを拒絶。こうして刑事と3兄弟による、血で血を洗う抗争が幕を開けるのだった…というようなプロット。 出演はシャイア・ラブーフにトム・ハーディ、ガイ・ピアース、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマンなどといった豪華な面々が勢揃い。しかし登場人物それぞれに時間を割いているために、話が散漫なものになってしまったのが残念。女性2人とのロマンスの話はどちらか1つに絞ってもよかったのでは。オールドマン演じるギャングスターなんて途中でどこかに行ってしまうんですもの。抗争とロマンスとその他の話がが詰め
映画評 「アルゴ」鑑賞 今さらながら観ました。遅れてすみません。 昨日のアカデミー賞では監督賞や主演男優賞にもノミネートされていないのに作品賞を穫ったことについていろいろな説が飛び交っているようだけど、個人的な感想としてはこれが「ハリウッドが活躍する映画」だからだということでして、いつもは脚本のオプション権を値切ったりB級映画のメークをしてるような裏方さんたちが、CIAに頼まれて秘密任務を遂行し、人命を救助するなんて話を見せられたら、アカデミー会員の大半を占める裏方さんたちはそら喜ぶわな。 現実ではハリウッドはおろかCIAも中心的な役割を果たさず、カナダが尽力したことで人質が救出されたらしいが、まあそこはハリウッド映画ですから。古き良きハリウッドを甘ったるく描いた「アーティスト」が昨年作品賞を穫ったのと同じような事例かな。おまけにどちらの映画もジョン・グッドマンが陽気なハリウッドガイを演じているわけですが、ならば彼が映画監督を演じたジョー・ダンテの傑作「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」だって作品賞を穫っても良いと思うのだが、そううまくはいかないようで。 このようにハリウッドが重要な要素となる映画
映画評 「Seven Psychopaths」鑑賞 「ヒットマンズ・レクイエム」に続くマーティン・マクドナーの長編第2弾で、相変わらず過度なバイオレンスとブラックなユーモアが混じり合った傑作。 ハリウッドで脚本家をやっているマーティはライターズ・ブロックに陥っており、「7人のサイコパス」という作品の脚本が書けずに酒ばかり飲んでいる状態。そんな彼を心配した友人のビリーは実在の連続殺人犯の話をしてネタにさせ、さらには「サイコパス求む!」という広告を出したためにマーティのもとにヤバそうな人がやってくる羽目に。一方でビリーは公園で犬を誘拐し、飼い主が懸賞金をだしたところで「返却」するという詐欺行為で小金を稼いでいたのだが、マフィアのボスの犬を盗んだために相棒のハンスとともに狙われる身になってしまい…というようなプロット。 題名通りにサイコな人たちがたくさん出てくる展開になっており、マフィアのボスなんてのはまだ可愛いほう。マフィアを狙う連続殺人鬼とか、数十年前からシリアル・キラー殺しをやってるカップルとか、なんかヤバそうな人たちがいろいろ出てきます。しかも「こいつは普通そうだな」と思ってた人が後になってどんどんサイコになっていくあたりの展開
映画評 「SAFETY NOT GUARANTEED」鑑賞 サクッと観られる去年のサンダンス映画。 ダリウスは人見知りする孤独な少女で、シアトルの出版社でインターンとして働いていたが、新聞に載っていた「過去へ一緒にタイムトラベルしてくれる人を募集。安全は保証せず」という個人広告について調べるよう命じられ、広告を出したケネスという男性の住む町へと記者たちと3人で向かうことに。そこで出会ったケネスは風変わりな人物で、タイムトラベルができるという証拠を見せないまま、自分は政府に狙われていると言いながらも「タイムマシン」の構築の準備をしていた。そんな彼に戸惑いながらも、話をするうちに彼に興味を抱いていくダリウス。しかし怪しい男たちが実際にケネスを尾行していることが分かり…というプロット。 あらすじだけだとSFものっぽく聞こえるかもしれないが、科学技術とか政治サスペンスなどとは無縁の内容で、あくまでも社会のはずれ者たちの生活を描いた青春コメディになっている。ダリウスとケネスは過去における母親や恋人の死をトラウマとして抱え、ダリウスの同僚の記者たちも町で出会いや別れを経験していく。やはりSF的がそんなに強くなかったサンダンス映画「アナザー・プラネット
映画評 「Searching for Sugar Man」鑑賞 邦題は「シュガーマン 奇跡に愛された男」になるはず。今年のアカデミー賞にもノミネートされてるドキュメンタリー。 70年代に社会性の強いアルバムを2枚出したシンガー・ソングライターの(シクスト・)ロドリゲスを追ったもので、デトロイトで肉体労働をしながらクラブで歌っていたロドリゲスは地元のプロデューサーに見いだされてアルバムを発表し、多くの期待が寄せられていたもののアメリカやイギリスではまったく売れず、彼はレーベルから落とされてしまう。しかしその後2枚目のアルバム「Cold Fact」が南アフリカに渡り、アパルトヘイトに反発していたアフリカーンの若者たちのあいだでその歌詞が共感を呼び、ラジオ局では放送禁止になっていたにも関わらず彼の曲は南アフリカで広く知れ渡っていく。しかし肝心のロドリゲス本人は表舞台から完全に姿を消しており、ステージで焼身自殺をしたとか、銃で頭を撃ち抜いたという伝説がまことしなやかに語られているほどであった。果たして彼の身に何があったのか?疑問に思った南アフリカの音楽ジャーナリストは、彼の曲の歌詞にあった僅かな手がかりをもとにしてロドリゲスの消息を追っていくのだが…と
映画評 「ジャッジ・ドレッド」鑑賞 1995年のスタローン主演の作品のリメークというよりも、同じコミックを原作にした別物の映画。 スタローン版は凡作と見なされてるけど俺はそれなりに好きで、コスチュームやローマスター・バイクの再現度は高かったし、ミーン・マシーンやABCロボットなんかも出てたのはファンサービス旺盛だったんだけどね。監督のダニー・キャノンもドレッドの熱心なファンだったはずなのだが、すべてスタローンが主演したことで原作とは大きく異なる内容になってしまったのが残念なところで。まあスタローン主演だったからこそあそこまでの予算が確保できたんだろうが。 そして今回のものはスタローン版の反省を生かして原作にもっと忠実になっており、つまりどういうことかといいますとカール・アーバン演じるドレッドは最初から最後までヘルメットを外さずに出演している。しかし顔半分を隠すヘルメットのおかげで主役になかなか感情移入できないのも事実であり(もともと感情など無いキャラクターではあるが)、ここらへんはコミックと映像の克服しにくい違いでありますね。 舞台となるのは核戦争によって周囲が焦土と化したあとのアメリカ東海岸で、過去の都市の残骸
映画評 2012年の映画トップ10 昨年同様に、観た順に10本選んでみました。順位は特につけません。 「ドライヴ」 サソリのジャケット買っちゃったよ。 「ファミリー・ツリー」 まったりと話が進んでいるようで、家族の絆をしっかり描いている点が秀逸。 「CHRONICLE」 少年マンガに出てくるような超能力バトルがしっかり撮れた作品。 「アベンジャーズ」 純粋な娯楽という点ではこれが抜きん出ていた。いろいろツボをちゃんと抑えた大作。 「アイアン・スカイ」 粗削りではあるんだけど、低予算で風刺と特撮をきちんとまとめたことに敬意を表して。 「キャビン」 ホラーの定番を見事にスプーフした傑作。これ観ちゃうとB級ホラーが普通に観られなくなるかも。 「ムーンライズ・キングダム」 あまりにも箱庭的にまとまりすぎてる気もするが、W・アンダーソンの1つの頂点ですな。 「THE BAY」 まさかバリー・レヴィンソンがファウンドフッテージものをやるとは。パニックに襲われる町を手堅く描いている。 「007 スカイフォール」 オールドファンに気をつかいつつ、新たな幕開けを迎えることに成功した秀作。 「Beasts of The
映画評 「 LOOPER/ルーパー」鑑賞 かの知られざる傑作「BRICK‐ブリック‐」のライアン・ジョンソンとジョセフ・ゴードン=レヴィットが再び組んだSFアクション。 既に日本の公式サイトがあるのでストーリーはそちらを参照してください。30年後の未来の犯罪組織から送られてくる邪魔者を始末する仕事を受けていた主人公が、未来の自分を始末する羽目になり…といったプロットです。ちょっと理解するのに時間がかかったんだが、舞台は現在とその30年後、ではなく2044年と2074年になるのですね。2044年の光景が現在とあまり変わらないんで少し困惑してしまったよ。 主役のゴードン=レヴィットの30年後の姿を演じるのがブルース・ウィリスで、他にもポール・ダノやエミリー・ブラント、ジェフ・ダニエルスなど豪華なキャストが脇を固めている。ウィリスに似せるためにゴードン=レヴィットは特殊メークをしてるのだが、おかげでいつもと違った顔つきになってしまい少し不気味であった。それでもあの顔がああなるのは結構無理があるような。 ブルース・ウィリスのタイムトラベルものという意味では「12モンキーズ」に似てるかな。「ガタカ」みたいな知的なSFものが好きな
映画評 「ALPS」鑑賞 「Dogtooth」こと「籠の中の乙女」で全世界の度肝を抜いたヨルゴス・ランティモス監督の新作。主演は「乙女」の長女を演じた人で、「Attenberg」の女の子も出てます。 新体操のジムに通う少女2人が、中年男性ふたりと組んで「アルプス」というグループを結成。彼らは愛する人たちを失った遺族に近づき、亡くなった人の身代わりをしばらく演じることで、別れの悲しみを和らげさせるという商売を始めるのだが…というようなプロット。 話のあらすじだけ聞くと、人との別離を感情的に描くとか、他人を演じてアイデンティティ・クライシスに陥るとか、職務を忘れて遺族を愛してしまうとか、なんかそんなメロドラマチックな展開を期待してしまうのですが、そんな描写は全然なくて、ただ与えられた仕事を無機質に淡々とこなしていく主人公たちの姿が描かれていく。 彼女たちの「サービス」を受ける遺族たちについても顔が殆ど映されず、感情も表にしないのがかなり不気味で、主人公たちに感謝するどころか彼女たちにコスプレをさせ、あれこれ指示してコキ使っている始末。恋人代行としてエッチする者もいるほか、亡くなった夫の浮気現場を再現させ、そ
映画評 「ホビット 思いがけない冒険」 ケチなので2Dで観ました。48FPSってのも経験したかったんだけどね。 なるべく事前にいろいろ調べないようにして観に行ったのですが、いやリチャード・アーミテジやジェームズ・ネスビットが出演していたことがエンドクレジットの時点まで気づきませんでしたよ。みんな鼻のデカいメークをしてるんですもの。 世の中的には批評的にも興収的にも前作とくらべてイマイチといった話が出ているものの、個人的には結構楽しめましたよ。確かに前作と比べるとストーリーのスリル感が欠けているかもしれないが、それはひとえに原作が「指輪物語」に比べると弱いということで。 冒頭からイアン・ホルムとかイライジャ・ウッドなど懐かしい顔が出てきて寸劇じみたことをやって、それからドワーフたちのコントじみた酒宴が行われたりと、どことなく間延びしてる感は否めず、前半もフラッシュバックや小話などが続いてちょっとダレ気味かな…と思いつつも観てるうちにホワーンとした感じになってきて、ニュージーランドの美しい大自然の風景と相まって中つ国の盛大な観光映画を観てるような気分になっておりました。やはり監督にピーター・ジャクソンを起用したのは正解だ
映画評 「プレミアム・ラッシュ」鑑賞 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演のアクション・サスペンス。 ワイリーはニューヨークの法律学校に通っていたが、スーツを来た弁護士になることに興味を抱けず、スリルを求めて自転車のメッセンジャー・サービスをやっていた。ギアなし・ブレーキなしの金属製フレームというベーシックな自転車に乗った彼は自分の脚力と反射神経を駆使してニューヨークの忙しい街なかを疾走し、所属する事務所のなかでもトップレベルの腕を誇っていたが、ある日ガールフレンドのルームメイトより封筒をチャイナタウンまで最優先(プレミアム・ラッシュ)で届けるように依頼される。しかし配達を始めたとたんにワイリーは謎の男に追跡され、身の安全を脅かされるようになる。さらにこの追跡劇に市警の自転車警官や中国人マフィア、ライバルの同僚などが加わり、はたしてワイリーは時間内に封筒を届けることができるのか…というようなストーリー。 冒頭からニューヨークの喧噪のなかを、最適ルートを瞬時に見極めながら自在に走りまくるワイリーの活躍が描かれ、アドレナリンが出っぱなし。タクシーにつかまったり歩道を走ったりとやってることは違法まがいなんだが、車と車のあいだ
映画評 「Bernie」鑑賞 リチャード・リンクレイターの新作で、実際にあった事件をほとんど脚色なしに映画化したもの。 舞台になるのはテキサス東部のカーセイジという小さな街。そこの葬儀屋に勤めることになったバーニー・ティードは死者や遺族への面倒見もよく、地域の慈善活動にも積極的に参加する男性でカーセイジの誰からも好まれていた。そんなときバーニーは夫を亡くしたマージョリーという老婆の面倒を見るうちに彼女と懇意になっていき、意固地でケチで親族とも仲が悪かったマージョリーも、バーニーに対しては心を開くようになっていく。しまいには「2人はデキているのではないか?」と噂されるほどの仲になり、マージョリーの遺産をバーニーが引き継ぐ約束までされるのだが、やがて彼女はバーニーをコキ使うようになり、彼に厳しく当たるようになる。これに耐えられなくなったバーニーは、彼女を射殺してしまうのだが…というような話。 劇中でバーニーは徹底した善人として描かれ、他人のためにあらゆることを尽くす彼は、マージョリーを殺したあとも彼女の財産を慈善活動に与えてしまうような始末。それに対してマージョリーは地域のみんなに嫌われていた意地悪ばあさんとして
映画評 「Beasts of the Southern WIld」鑑賞 サンダンスやカンヌなどで高い評価を受け、今年のベスト作品との声も挙っているファンタジー映画。 舞台となるのはルイジアナ南部の、堤防によって周囲と断絶された所にある『バスタブ』と呼ばれるコミュニティ。そこで6歳の少女ハッシュパピーは父親のウィンクとともに自然に囲まれて暮らしていた。ある日彼女は、太古の昔に巨大な獣たちが地上を跋扈していたことや、地球温暖化によりやがて海面が上昇し、バスタブもいずれ水没してしまうかもしれないことを学び、巨大な獣や自分が水に沈んだあとの世界のことに思いをめぐらせる。やがて大きな嵐がやってきたためにバスタブの住民の多くがその地を去り、土地の大半は水没し、残った動植物にも大きな被害をもたらしてしまう。さらにウィンクが病に侵されていることが判明する。自分の置かれた境遇を不安に感じるハッシュパピーだったが、そんな彼女のもとへ極地の氷から解き放たれた太古の獣たちが向かっていた…というようなストーリー。 いちおうファンタジー映画ではあるものの、幻想と現実が交差するようなシーンは1カ所くらいで、あとは自然に囲まれてたくましく生きる父と娘の物語が、現実味を持って描かれて
映画評 「MAGIC MIKE」鑑賞 スティーブン・ソダーバーグの新作。 舞台となるのはフロリダ州タンパにある男性ストリッパーのクラブで、主人公のマイクはそこのダンサーの1人。インテリアデザインの才能を持つ彼はクラブなどで稼いだ金をコツコツと貯め、やがてインテリアの店を開くことを夢見ていたが、ダンサーが現金のチップを稼ぐ仕事なのに対してアメリカ社会ではクレジットカードの履歴がものを言うので、銀行からの融資を受けることができず悶々としていた。そんなある日彼は別のバイト先でアダムというボンクラな青年と出会い、彼をクラブに連れて行ったことがきっかけでアダムもストリッパーとして働くことになる。アダムの姉のブルックはそれを好ましく思わないものの、マイクとブルックは恋仲になり…というような話。 題材が題材だがチンコは出てきませんよ。アメリカのストリッパー小屋ってスッポンポンになるのは禁じられてるのかな?でもそれ以外のところはいろいろ披露されまして、体脂肪1ケタ台のおにーちゃんたちによる、軍隊とかカウボーイをテーマにしたショーやダンスがふんだんに盛り込まれている。そういう意味ではミュージカル映画に近いノリがあるかな。 でもショー
映画評 「007 スカイフォール」鑑賞 ネタバレにならないよう軽い感想をいくつか: ・純粋に楽しめる、とてもよくできた映画。前作のグデグデ感を捨てさり、スピーディでアクション感満載ながらも地に足のついた良質のサスペンス映画になっている。 ・これは監督のサム・メンデスも認めてるけど、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」の影響がかなり見て取れる。苦悩する主人公を手玉にとってあざ笑う悪役の姿はジョーカーそのまんま。 ・つうかハビエル・バルデム演じる悪役の計画が緻密すぎる!まっとうに運行してるほうが珍しいロンドンの地下鉄のダイヤまで計算して計画を立ててるんですもの。ボンド映画の悪役はカタワ者、という政治的に正しくない伝統もちゃんと継承してたな。 ・おねーちゃんがあまり出てこない、という批判は確かにその通りなのですが、「ダークナイト」同様に男同士の対決をみっちり描くためには女性を省くしかなかったんだろうな。 ・作品の大きな特徴として「懐かしの面々」の復活がありまして、Qはおろか最後にはあんな人も出てきたりして、オールドファンには十分楽しめる内容じゃないでしょうか。またボンド映画に詳しくない人でも優れたアクション映画として楽し
映画評 「Act of Faith / Jimmy's End」鑑賞 自分の作品の映画化はひたすら罵倒して呪いをかけていたアラン・ムーア御大が、初めて脚本を手がけた短編映画。監督のミッチ・ジェンキンスは彼の友人…というかフィールズ・オブ・ザ・ネフィリムのPVとか作ってた人なのね。ふむふむ。 「Jimmy's End」は30分くらいの作品で、そのプリクエルとして「Act of Faith」という同じ世界を舞台にした短編も作られていて、今後も続編みたいなのが作られていくのかな?ここらへんは情報が少なくてよく分かりません。 作品のストーリーもかなり分かりにくいものになっていて、「ウォッチメン」や「リーグ」のような冒険活劇を期待してはいけないよ。むしろ「Neonomicon」や「Fashion Beast」みたいな地味で難解なインデペンデント系のムーアの作品に通じるところがあります。いろいろ虐げられる女性とか、グロテスクな闇社会とか。背後で歌が流れるなか話が淡々と進んでいくという光景もムーアがよく使う描写だよね。 ストーリーは全然よく分からないんだが、新聞記者らしき女性フェイスが自宅のクローゼットでエロチックに首を吊るのが「Act of Faith」で、