映画評 「MEGAMIND」鑑賞 個人的に「ヒックとドラゴン」で大きく株を上げたドリームワークス・アニメーションの新作。これ日本では劇場公開されないんだよな。勿体ない。 崩壊する惑星から赤ん坊のときに両親によって脱出させられ、地球に辿り着いた異星人メガマインド。彼は到着した先が刑務所だったことから囚人たちに悪の道を教え込まれ、さらにその青色の肌とハゲ頭という外見が災いして学校で仲間はずれにされたことなどから心がひねくれ、史上最強の悪党になることを決心する。しかしその野望は同じく他の星からやってきた正義のヒーロー、メトロマンによって常に打ち砕かれ、いつもメガマインドは刑務所送りになっていた。しかしある日、メガマインドの立てた計画のなかでメトロマンの意外な弱点が明らかになり、なんとメトロマンは死亡してしまう。こうしてメガマインドは世界(というか舞台となる街)を支配することが出来たのだが、いざ目的を果たしてしまった後の生活は彼にとって空しいものだった。そんななか彼は意中のTVレポーターであるロクサーヌに変装して近づくのだったが…というような話。 映画のコンセプトが「もしレックス・ルーサーがスーパーマンに勝ったら?」とい
映画評 「FOUR LIONS」鑑賞 以前にも何度か紹介した、ドジで愉快なテロリストたちのドタバタを描いたクリス・モリスの風刺映画をやっと観たのですよ。 映画のコンセプトについてはここに書いたが、要するに一見すると不気味で怖いイスラムのテロリストたちも実は間の抜けた普通の人たちなんですよ、というような内容。話の主人公となるのはシェフィールドに住む4人のイスラム過激派の若者たちで、彼らはカッコつけてテロのメッセージを撮影し、いつか自爆テロを起こして英雄扱いされることを夢見ているものの、何を爆破すればいいのかも思いつかないような呑気な連中で、パキスタンのテロリスト養成所に召還されてもあまりの役立たなさにすぐ追い出されるほどだった。それでも彼らはめげずに昼夜せっせと爆弾作りに励み、新メンバーを迎え入れたりするものの、メンバーの1人が爆弾を抱えて転んで爆死したりと災難続き。そしてついに彼らはロンドン・マラソンで自爆テロを起こそうと決意し、ロンドンに向かうのだが…というようなストーリー。 テロリストたちをステロタイプ化して馬鹿にした内容だったら単なる差別映画になってたろうが、クリス・モリスってもっと頭のいい人なので、しっかり時
映画評 「恋とニュースのつくり方」鑑賞 震災のあとに観て楽しめるかなと思いつつ映画館に行ったんだけど、いい気分転換になった。皆さんもこういう息抜きをおすすめします。 内容はレイチェル・マクアダムス演じるTVプロデューサーの主人公が念願の全国ネットワークに就職して早朝番組を担当するものの、その番組の視聴率は最低でキャスターもやる気なし。そこで彼女は大ナタをふるって男性キャスターを解雇し、ハリソン・フォード演じるベテランニュースキャスターを夜の番組から連れてくるが、彼は堅気なニュースにこだわる頑固者で…というようなもので、働く女性ものの映画としてはまあベタな出来かな。 でも話のテンポが速くて観てて飽きないうえ、登場人物のやりとりもなかなか巧妙で面白い。風刺というわけではないけどテレビにおけるニュースと娯楽のバランスについて語られたり、頑固オヤジが徐々に心を開いていくあたりもうまく描けてるかな。ハリソン・フォードってご存知の通り演技の幅がとても狭い人で、本人ももはや演技に対する情熱があまり残ってなさそうなので主役として映画を抱えるのはしんどいところにきてたんだが、この作品では脇役にまわり、彼がいま唯一ちゃんと演じられる役であ
映画評 「127時間」鑑賞 最初に言っとくとグロ注意。切断シーンはやはり痛いよ痛いよ痛いよ。デートで観たりするとちょっとしんどいことになるかも。 これを観る人の殆どがストーリーの展開および結末を事前に知っているだろうし、場所の移動などは皆無に等しい内容でありながら(だって人が5日間岩のあいだに閉じ込められる話だぜ?)、映画としてここまで楽しめる出来にしてしまった手腕はやはり凄いなあと。普通だったらどこかのケーブル局がTVムービー化する程度だったろうに。 以前にも書いたがダニー・ボイルっていま活躍中の映画監督のなかでも抜群の映像センスを持った人で、ミュージック・クリップ出身の監督たちとも違った独特のスタイルを誇っていると思うんだけど、前作「スラムドッグ・ミリオネア」ではその映像美が行き着くところまで行ってしまったような気がしたんだよな。そして今作も基本的にはそのスタイルが踏襲されているんだけど、話の展開自体はとても地味なので、それを映像美が補うことでいい感じの相乗効果が生まれている。自分の尿を飲むシーンをスタイリッシュに描ける監督というのはそういないだろう。 自分の腕を岩に挟まれて身動きできなくなった主人公
映画評 「ALL-STAR SUPERMAN」鑑賞 DCコミックスの新作アニメーション映画。グラント・モリソンとフランク・クワイトリーによるミニ・シリーズを映像化したもので、原作はスーパーマン作品としては数十年に1度の傑作と言われるほど高い評価を得ているんだよな。 ストーリーは既存のコンティニュイティ—と関係のない独自の設定になっていて、宿敵レックス・ルーサーの策略により大量の太陽エネルギーを浴びたスーパーマンは力が増大したものの体の細胞が飽和状態となって炸裂を続けており、やがてそれが自らの死に至ることを知る。死が迫っていることを知ったスーパーマンは、この世からいなくなる前に自分に課せられた課題を解決していこうとするのだが…というような話。原作のストーリーをうまく拾ってはいるんだけど、ビザーロ・ワールドでの冒険やジョナサン・ケントの死などといったエピソードは省かれている。個人的にはユニバースQとか飛び降り自殺を阻止する話とかの細かいところも含めて欲しかったんだけど、まあ無理か。 原作は話の展開が比較的ゆっくりしていて、それがモリソンのトリッピーな話とクワイトリーの夢想的なアートにうまく合っていたんだけど、アニメーションでは各エピソ
映画評 「MONSTERS」鑑賞 こんどハリウッド版「ゴジラ」の監督に抜擢されたらしいギャレス・エドワーズの低予算映画。 NASAが宇宙に打ち上げた探査機がメキシコ北部に墜落し、それに付着していた地球外生物が繁殖してしまい、巨大なタコのような生物となって人を襲うようになってから6年。アメリカはメキシコとの間に巨大なフェンスを建設して国境を封鎖し、怪物たちの跋扈する地帯は立ち入り禁止区域となっていた。そしてメキシコでカメラマンをしているアメリカ人のアンドリューは、自分が勤める会社の上役の娘でメキシコを訪れていたサマンサという女性を、アメリカ行きのフェリーに乗せる仕事を命じられる。しかし手違いによってサマンサはフェリーに乗ることができず、仕方なく2人は立ち入り禁止区域を縦断してアメリカを目指すことにするのだが…というストーリー。 題名がそのものずばり「モンスターズ」だし、怪獣がストーリーに大きく関わってはいるんだけど、ガチな怪獣映画というよりもロードムービーのような作品であった。モンスターが姿をちらっと見せる描写とかは非常に巧いんだけど、ちゃんと姿を見せて暴れるようなシーンは殆どありません。むしろ主人公2人の旅の描写
映画評 「ソーシャル・ネットワーク」鑑賞 2003年は遠くになりけり。これ観てて連想したのが、アップルとマイクロソフトの黎明期を描いたTVムービー「バトル・オブ・シリコンバレー」だった。だからという訳ではないが、意地の悪い言い方をすれば「ものすごく良く作られたTVムービー」という感じか。世間でちらほら言われている、2時間ドラマのような映画という表現はあながち間違ってないと思う。 いやね、技術的には大変良くできた映画だと思うのですよ。役者の演技から脚本から撮影技術に至るまで(ただしセピア色のカレコレは最近みんなやってて食傷気味だが)。トレント・レズナーによる音楽も効果的に使われていたし。最後にビートルズ持ってくるとは思わなかったけどね。ストーリーテリングも非常に重厚だし見応えがあり、ハーバードという一種特殊な環境における当時の雰囲気をきちんと描写しているんだが、最初から最後までそんな感じであるため、コース料理でメインディッシュをずっと出されてるような感触だった。話にメリハリがないわけではないけど、1本の映画としては大きなうねりに欠けているというか。 まあ俺自身がフェイスブックやってなくて、マーク・ザッカーバーグのことも殆ど
映画評 「グリーン・ホーネット」鑑賞 ポスターを一瞥しただけでも、何故いまさら「グリーン・ホーネット」なのか?何故ミシェル・ゴンドリーなのか?何故セス・ローゲンなのか?何故ジェイ・チョウなのか?といろいろ疑問がわいてくる作品なのだが、映画を観てもその答えは与えられなかったよ。 確かこの映画ってもともとはケヴィン・スミス監督で主演がジェイク・ジレンホールで企画され、そのあとチャウ・シンチーの監督&出演という噂があって、それから回りまわって、それでやっと今回のスタッフに決定したんじゃなかったっけ。このように製作の時点で右往左往した作品についてほぼ100%言えることは、スタジオが完成を急ぐために製作側のクリエイティブな面が疎かにされるということであり、それに今回はハリウッドで最も独創的な監督の1人であるミシェル・ゴンドリーが関わってしまったというのは不運というか皮肉というか。 ゴンドリーの従来の作品って少なくとも1本に1度は「このアイデアすごい!」と感心させられるところがあったんだけど、悲しいかなこの作品ではそれが無いのですよ。せいぜい主人公が今までの手がかりを回想するシーンがちょっとゴンドリーっぽかったことくらいかな。
映画評 「WISH 143」鑑賞 こないだアカデミー賞の短編賞にノミネートされたイギリスの作品。オンラインで公開されていた。 末期ガンにより死期が近づいた15歳の少年が、慈善団体から何か願いをかなえてあげると伝えられたとき、彼が望んだのは「女の人とヤること」だった…という内容で、死を目前にしながらも口が達者でひねくれた少年と、彼を見守る牧師とのやりとりを中心に、どうにか女性と寝ようと悶々とする少年の姿が描かれていく。 ユーモラスな会話や描写がある一方で、テーマがテーマだけに全体的にしんみりとした内容になっているかな。「心優しい娼婦」といういかにも映画的なキャラクターが出てくるのはどうかと思うが、ラストはホロリとさせてくれるし、決して悪い作品ではないですよ。20分ちょっとの作品なので、時間のある人はぜひ観てみてください。
映画評 「DOGTOOTH」鑑賞 あちこちで高い評価を得ているギリシャの映画。 話の舞台となるのは人里離れたところにある屋敷で、そこでは3人の若者たち(娘2人と息子1人)が両親によって外界と隔離され、塀の外へは一歩も出ることができずに一家だけで暮らしていた。屋敷を出ることができるのは父親だけで、息子の性欲の対処のために父親の会社で働く警備員の女性が娼婦として連れてこられるほかは、子供たちは塀の外の世界のことをまったく知らされずに育てられていたのだ。さらに両親に都合の悪いような言葉はすべて意味を違えて教え込まれ、例えば「海」は革製の椅子で、「ゾンビ」は黄色い花、というように。また彼らは架空の第4の兄弟がいることを教えられ、彼は罰として怖い外界へ追放されたことを告げられる。それでも年をとるにつれて外界への興味を抱く子供たちに対して、父親は「犬歯(ドッグトゥース)が抜け落ちる頃には外に行く準備ができるはずだ」と伝えるのだが…というような内容の物語。 とにかくものすごくシュールな展開が続く映画で、両親がなぜ子供たちをそのように扱うのかという説明は一切なし。両親にすべてを管轄された世界における子供たちの様子を淡々と描いてい
映画評 「CATFISH」鑑賞 いまの時点でこの映画について書くことはすべてネタバレになりそうな気がするので、以下は白文字で書きます: ニューヨークで写真家をやっている青年ヤニフのところに、アビーという6歳の少女が彼の写真をもとにして描いた絵がある日送られてくる。それがきっかけでヤニフとアビーはフェイスブックを通じた交流を行うようになり、さらにアビーの母のアンジェラや姉のミーガンとも仲良くなり、特にミーガンとは遠距離恋愛めいた仲になるヤニフ。彼はアビーの一家との交流を描いたドキュメンタリーを作ろうと、兄たちとともに出来事を撮影していくのだが、ミュージシャンだと自称していたミーガンの曲が他人のものであることに気付く。これで彼女やアンジェラの言うことに疑惑を抱いたヤニフたちは、ミシガンにある彼女たちの家を訪れることにするのだが、そこで彼らを待っていたものは…というようなドキュメンタリー。音楽をディーヴォのマーク・マザーズバーが担当してた。 アートに関するドキュメンタリーっぽく始まって、中盤はサスペンスかホラーか?と思わせときながら、最後はSNSサービス時代の人間関係についてのドラマで終わるという、なかなか一筋縄では
映画評 「THE AMERICAN」鑑賞 アントン・コービンが監督した、ジョージ・クルーニー主演の映画。 プロの殺し屋で武器職人でもあるジャックはスウェーデンで何者かに命を狙われたことでイタリアに逃亡し、知人の手を借りてカステル・デル・モンテという小さな村に潜伏することになる。そこで彼はライフル銃の製作にとりかかるほか、クララという娼婦と恋仲になる。しかし彼には危険が迫っていた…というような話。 サスペンスなんだかアクションなんだかメロドラマなんだか、いまいち何をやりたかったのかよく分からない作品。いちおう銃撃戦とかカーチェイスがあるんだけどアクション映画というわけでもないし、ユーロピアンなアート映画としては世俗的すぎるというか何というか。どうもストーリーが起伏に乏しく、ダラついた感じがするんだよな。加えて音楽はヘルベルト・グレーネマイヤーという人気歌手が始めて映画音楽を担当したものらしいが、どうも扇情的というか大げさな感じがして好きになれなかったよ。 ストーリーには原作があるらしいけど、良心の呵責に苛められる殺し屋とか、心優しい娼婦なんてのは他の映画で山ほど目にしているので新鮮さはなし。仏頂面で黙々と仕事をする主人公
映画評 「EASY A」鑑賞 巷で評判が良いようなので観てみた。主人公のオリーブは男性経験のない地味な女子高生だったが、親友に見栄を張って「私、こないだ男の人とヤっちゃったのよ!」とウソをついたらその話が学校中に広まり、すぐに彼女は腰軽女として見なされてしまう。最初はそれに困惑していたオリーブも、逆にその立場を利用してゲイやデブの同級生たちとも「ヤってあげた」という噂を流すことにより、彼をカッコ良く見させるという行いに出る。しまいには授業で習っていたホーソーンの「緋文字」の主人公よろしく赤い「A」の字を胸につけて学校に行くのだが…というような話。 観ていて何がいちばん気になったかというと、ストーリーや演出とかではなくて、主演のエマ・ストーンが声にドスが効いているということでして、ハスキーボイスなんてものじゃなく、クラシック映画のヴァンプ女優のような非常にどっしりとした声をしてるんだよな。おまけに顔つきもヴァンプ女優っぽいので「男とヤったの」なんて言われても「ウソでしょ?」ではなく「何人と?」と聞いてしまいそうな雰囲気があるんだよな。演技自体はかわいらしいので決してミスキャストというわけではないんだけど、あの声は
映画評 「ジョナ・ヘックス」鑑賞 今年度最低の一本との呼び名も高い作品だが、本当にヒドい出来だったよ。 まず驚かされるのが、主人公の設定が原作のコミックと全然違うこと。ジョナ・ヘックスが顔に傷を負う過程も異なってるし、原作ではあんな死者を蘇らせるような能力は持ってないぞ。原作を知らない人のために設定を少し変えるのならまだしも、まったく別物にしてどうするんだよ。 コミック版のヘックスってクセがあるようで実はかなり汎用性のあるキャラクターで、初出誌の「Weird Western Tales」の名に恥じずにガンマンやインディアンはおろかゾンビや怪物と戦ったり、中国人と結婚したり、殺されて剥製にされたり、さらには核戦争後の未来に飛ばされて「マッド・マックス」みたいなことをやったりと(いやホントに)、どんなシチュエーションでも通用するところがあるんだけど、それでもこの映画のヘックスの姿にはかなり違和感を憶えましたね。 話の設定以外のところもみんなボロボロで、カラコレは変だしストーリーは雑だし、ピストルに撃たれた人が2メートルくらい吹っ飛ぶし、やたらと物が燃え上がるし、何でも派手にすればいいってものじゃないのよ。いちばん凄
映画評 「トロン:レガシー」鑑賞 以下いちおうネタバレ注意。あまり期待しないで観たので、まあこんなものかなという感じ。雰囲気が似てるなと思ったのが「スター・ウォーズ:エピソード2」で、CGは見事なんだけどストーリーが弱いところが同じかと。若造とヒロインにオッサンという主人公たちの組み合わせも一緒だし。 俺は世代的にオリジナルの「トロン」をテレビで(初放送時に?)観た人でして、その今まで観たこともない異世界の描写に衝撃を受けた覚えがあるのですが、あちらはプログラムの顔が変色していたり、バイクが直角に曲がったりするところでセンス・オブ・ワンダーが十分に満喫できたんだよな。それに対して今回の「レガシー」はプログラムが結構普通の人間っぽくなっていて、話が進むにつれて「光るコスプレをした人たち」にしか見えなくなってしまったよ。何でプログラムがブタの丸焼きを食べてるんだか。バイクも直角に曲がらなくなってたし。あとMCP出して欲しかったよMCP。 CGは確かに凄いし各デザインも非常に凝ってるんだが、肝心のストーリーがダメダメなので全体的に薄っぺらい印象を受けてしまう。そもそも「アイソー」って一体どういう存在で、何が特別だったの
映画評 「The Kids Are All Right」鑑賞 キャスト的にあまり興味なかったんでスルーしてたんだけど、皆が褒めてるもんで。でもあまり面白くなかったかな。邦題は「キッズ・オールライト」になるの? レズビアンのカップルであるニックとジュールズは精子銀行からの精子で妊娠して2人の子供を産み、家族4人で仲良く暮らしていた。しかし子供たちがその精子の提供者であるポールという男性を探し出したことで、4人の生活にポールが関わってくることになり…というプロット。 ストーリーの最大の特徴はもちろんカップルがレズビアンだという点だが、意外とそこはあっさりと描かれていて、差別される描写とかはないし、子供たちも結構普通にそのことを受け止めていたりする。だから内容的には普通のファミリードラマに近いかな。それでも何となく監督(レズビアン)のメッセージみたいなものがセリフのあちこちに感じられて、教育映画を見せられてるような気になってしまったよ。出てくるキャラクターがみんな真面目で、「遊び」のようなものが無いのでストーリーにもクセがなく、どうも無味乾燥な内容になってしまったような。この題材でジョン・ウォーターズが監督してたら相当面白いものが作れていただろう
映画評 「メニルモンタン」鑑賞 Dimitri Kirsanoff - Menilmontant (1925) ロジャー・イバートが「ポーリン・ケイルが最も好きだった映画」として紹介していた、フランスの1925年のサイレント映画。40分弱の作品なのでメシを食いながら気楽に観ようとしたら、その出来の素晴らしさに仰天させられてしまったよ。 いきなり農村で少女姉妹の両親が惨殺されるシーンから始まってインパクトは抜群なんだけど、実はそのシーンは話とあまり関係がなくて、身寄りをなくした2人の姉妹がパリのメニルモンタンにやってきてけなげに暮らすところからが本編。美人の妹はある男性とねんごろな仲になってついに体を許してしまうが、それを妬んだ姉によって男性を寝取られてしまう。それを知ってショックを受ける妹だったが、彼女はすでに男性の子供を身ごもっていた。姉のところに戻るわけにもいかず、生まれた赤子を抱えて妹は通りをさまようことに…というような話。 ストーリー自体は凡庸なメロドラマのように聞こえるかもしれないが、演出と編集がとにかく素晴らしいのですよ。サイレントであるうえに字幕を一切使わず、二重露光などといった当時としては斬新な
映画評 「YOUTH IN REVOLT」鑑賞 こないだ「スコット・ピルグリム」観たばかりなのでマイケル・セラ主演の映画をまた観るのはどうかと思ったんだけど、米iTunesストアで値引き販売されてたので。 カルト人気のある小説?が原作の作品で、主人公のニックは内気なティーンで当然ながら童貞。両親が離婚したので母親とその恋人のもとで暮らしていたが、避暑地に行ったときにそこに住むシーニという女の子と出会って恋に落ちた彼は、どうにかしてシーニと一緒にいようと画策し、さらに内気な自分とは違ったフランソワ・ディリンジャーという反抗的な人格をつくって周囲の困難に立ち向かおうとするのだが…というような話。 なんか可も不可もないコメディだなあといった感じ。別に悪くはないんだけど、かといって記憶に残るようなシーンもないというか。ちょっと下ネタの多い、普通のボーイ・ミーツ・ガールもののコメディといったところか。女の子とエッチしようとして女子寮に潜入し、見つかって裸で逃げ出すなんていうガチな展開もあるし。車での移動シーンが突然人形アニメになるところは「普通じゃない」を連想したけど、あっちも微妙なコメディ映画でしたね。最大の特徴であるフランソワが出て
映画評 「Exit Through The Gift Shop」鑑賞 神出鬼没のストリート・アーティスト、バンクシーを扱ったドキュメンタリー…かと思いきや、なかなか一筋縄ではいかない作品であったよ。以下ネタバレ注意! 作品の中心人物となるのはバンクシーではなく、LAで洋服屋を営んでいるティエリー・ グエッタという人物。あらゆるものをビデオ撮影したがる癖のあった彼は、従兄弟がストリート・アーティストをしていたことからストリート・アートの世界に興味をもち、やがてシェパード・フェイリー(オバマの「HOPE」ポスターで有名な人)といった著名なアーティストとも知り合いになり、彼らの行動を撮影していくようになる。そしてついに彼はイギリスの謎のアーティストであるバンクシーにも紹介され、彼のパフォーマンスに関連して警察に捕まったときも口を割らなかったことからバンクシーに信頼され、イギリスに招かれて彼の行動を撮影するようになった。さらにティエリーは彼らを撮影するだけでは飽き足らず、自らもアーティストとして活動するようになり、最初は自分のステッカーを作って貼る程度だったのが、ストリート・アートが世間的にもビジネス的にも認知されるにつれて彼のパフォーマンスは派手なものにな
映画評 「SECRET ORIGIN: THE STORY OF DC COMICS」鑑賞 DCコミックスの75周年にあわせて作られた、DCの歴史を網羅したドキュメンタリー。ナレーションは新グリーン・ランタンのライアン・レイノルズ。 1930年代の黎明期から時代を順におって会社の歴史が語られていく内容になっていて、当時の映像がふんだんに用いられているほか、デニー・オニールやジェラルド・ジョーンズ、チップ・キッド、マーク・ウェイド、ルイーズ・サイモンスン、ニール・ゲイマン、相変わらずキザな口調のニール・アダムス(地球空洞説信者)、そして相変わらず何言ってんだか聞き取れないグラント・モリソンといった関係者へのインタビューが行われている。 パルプ雑誌を出していた出版者がコミックを雑誌の形態で売り出そうとしたところから話は始まり、クリーブランドの貧しいユダヤ系のSFオタクの少年2人が、自分たちの夢を託した超人スーパーマンを生み出し(ここのくだりは何度聞いてもゾクゾクする)、ニューヨークでは派手好みのビル・ケインが闇と戦うプレイボーイのバットマンを描きあげ、男性主体のコミック界を危惧した心理学者のウィリアム・マーストンがワンダー・ウーマンを創造するあたりは、20世紀の神話が作ら
映画評 「ウィンターズ・ボーン」鑑賞 こないだの東京国際映画祭でも公開されたやつ。 ミズーリ州オザーク山地のさびれた田舎に住む17歳の少女リーは、メタンフェタミン作りをやっていた父親が仮出所後に失踪したため、幼い弟と妹、および心を病んで口もきけない母親を1人で養っていた。そんな彼女のもとに保安官が現れ、リーの父親が彼女たちの家を保釈金の抵当に入れたため、もし彼が裁判所の出頭命令に従わなければ家が没収されると告げる。家がなければ一家が生活する術がなくなるため、リーは父親を捜し出すことを決意するのだが…といったストーリー。 父親を捜すというプロットがあるものの、車を持ってない主人公の行動範囲が極端に限られてるため、ガムシュー的な要素は殆どなし。とりあえず身内に父親のことを聞き回ってみたら、彼らが気の毒に思っていろいろ助けてくれた、という展開が多かったような。特にジョン・ホークス演じるリーの伯父が準主役的な扱いになっていて、トラブルに関わるまいとしつつも彼女を助けてくれる姿の演技が重々しくて大変良かった。リーを演じるジェニファー・ローレンスの演技も良かったぞ。 田舎を舞台にしたノワールということではコーエン兄弟の「ファ
映画評 「スプライス」鑑賞 「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリの新作。 研究機関で働く科学者のクライヴとエルサは恋人同士であり、動物の遺伝子操作(スプライス)を行うことによって全く新しい人工生物を生み出し、そこから薬品の製造に必要なプロテインを採取する研究を行っていた。さらに彼らは周囲の目を盗み、人間の遺伝子が混合された禁断の人工生物を生み出すことに成功する。最初はすぐに死んだかと思われたその生物は急激な速さで成長し(これ人工生命もののお約束ね)、やがて人間の子供のような外見を持つようになったことからドレンと名付けられる。しかし成長を続けるドレンを研究所のなかで隠しきれなくなったことから、エルサの生家で現在は無人になった農場へとドレンは連れて行かれる。そこでも成長を続け、人間のごとく知性を取得していくドレンだったが、『彼女』には恐るべき秘密があった…というのがおおまかなプロット。 何というか真面目なSFとB級ホラーの境界線上にあるような作品。ドレンの謎めいた行為がリアルかつ不気味にきちんと描かれている反面、主人公2人の行動がちょっと間の抜けたものに見えなくもない。話の冒頭ではきちんと防護服を着て胎児状態
映画評 「TEETH」鑑賞 前からちょっと興味のあった、2007年のサンダンス系映画。本国だとホラーコメディとして紹介されてるんだけど、コメディ色は殆どなくて文字通り痛いシーンのあるホラーであったよ。 田舎の高校に通うドーンは病弱な母親とボンクラな義兄のいる家庭に育ちながらも、敬虔なクリスチャンとして純潔運動を説き、当然ながら自分の貞操をひたすら守る真面目な少女だった。彼女はトビーという同級生とねんごろな仲になりつつも、婚前の性行為はどうにか避けようとしていたのだが、我慢ならなくなったトビーによって半ばレイプのような形で挿入行為をされてしまう。しかし次の瞬間、トビーは股間が血みどろになって苦悶の呻きをあげていた。なんとドーンの女性器には鋭い歯が生えており、それで男性のモノを噛み切ることができるのだった。予想もしなかった自分の能力(?)に戸惑いを隠せないドーン。しかし彼女がその能力を使いこなせるようになってからは状況が変わって…というようなお話。 「歯の生えた女性器」を意味する「ヴァギナ・デンタタ」という概念は劇中でも言及されるように昔から存在してたらしいんだが、寡聞にして知らなかったよ。「ドクター・アダー
映画評 「CEMETERY JUNCTION」鑑賞 オリジナル版「THE OFFICE」(もちろんイギリスのやつだ)を作ったことで知られるリッキー・ジャヴェイスとスティーブン・マーチャントが監督した劇場映画。コメディなどではなくとても真面目なドラマだった。 舞台となるのは1973年のイギリスはレディングの片田舎。工場で働く父親(ジェヴェイス)を持ち、労働者階級の生活から逃れ中流になろうと保険会社に入社するフレディと、彼の父親と同じ工場で働く不良少年のブルース、駅で働いていて女の子にはさっぱりモテないスノークという3人の若者を中心に、彼らが親と同じ道を歩むまいとあがきつつも、貧しい家の出であるために大したことが出来ないという閉塞感を、当時の流行曲をふんだんに使いながらノスタルジックにうまく描き出している。 ジャヴェイスが育った土地と時代を描いているため、彼の体験が多分に反映されているほか、当時のイギリス映画のオマージュ(パスティーシュ?)もいろいろ含まれてるんだとか。俺はあまりそこらへんの映画に詳しくないんでよくわかりませんが。カミング・オブ・エイジものとしてはお決まりの展開が多くてクサい場面もあるんだけど、感情的なシーンとかはき
映画評 「トイ・ストーリー3」鑑賞 うーん。世間的にはたいへん高い評価を得ている作品ですが、個人的にはどうもしっくりこなかったのだよ。これは作品の良し悪しではなく自分の期待によるものなのでしょうが。 自分にとっての「トイ・ストーリー」というのは、オモチャの主人公たちがドタバタを繰り広げつつも、ホロッとさせてくれるシーンもある作品というイメージで、そのドタバタと真面目の比率が7:3くらいなんだよな。それが今回は「捨てられるオモチャ」という大真面目なテーマが最初から設定されているために、その比率が逆になって、全体的に重々しい雰囲気が感じられてしまうのですよ。 それと「2」のXXXXXに対しても感じたけど、「悪意のあるオモチャ」というのがどうも受け入れられなかった。「2」のザーグみたいに悪役として作られてるもののどこかマヌケなオモチャならいいんだが、今回は(ちゃんと理由があるとはいえ)露骨に悪者のオモチャが出てきたのが好きになれなかったな。オモチャはあくまでも無邪気で、悪いのはクソガキや強欲なコレクターの人間という図式を勝手にいだいてたので。仲間を拷問してゲロらせるオモチャというのは、どうもね。 別に「アニメは陽気であ