映画評 「EASTERN PROMISES」鑑賞 傑作!「AVクラブ」では「ヒストリー・オブ・バイオレンス」ほどではない、というような評がされていたけど、個人的には原作からあらすじを事前に知っていた「ヒストリー」に対し、こちらのほうが見応えは多分にあったと思う。 第一印象としてはまず作り方が非常に手堅い。良い意味でメインストリーム的というか、無駄な部分をそぎ落とした良質のサスペンスになっている。またクローネンバーグ作品に共通する「肉体の変化」というテーマ(今回は体に経歴書として刻み込まれるイレズミ)に加え、「ヒストリー」で扱われた「生きる術としての暴力」および「アイデンティティの変化」というテーマが非常に巧みに昇華されている。ヴィゴ・モーテンセンが再び主演ということもあって「ヒストリー」の続編的なイメージがある作品だが、あちらで開拓されたアイデアが、さらにこの作品で実を結んだという感じ。そして数々のテーマをすべて担った主人公としてモーテンセンが相変わらず見事な演技を見せてくれる。今回は文字通り身体はってまっせ。ナオミ・ワッツは可も不可もなし。ヴァンサン・カッセル演じるドラ息子はちょっとステロタイプすぎたかな。あとタイトルにも関連してい
映画評 「Battlestar Galactica: Razor」鑑賞 やっと日本でも放送が決定した「バトルスター・ギャラクティカ」のDVDムービー「RAZOR」を鑑賞。久しぶりに観た「ギャラクティカ」だけど、やはりその出来の良さと面白さは他のテレビ作品を遥かに超えていることを実感できるような作品だった。 ストーリーは最近流行りのプリクエルとなっていて、シーズン2に登場した宇宙空母ペガサスのケイン艦長やその部下の新米士官を中心に、サイロンによる最初の襲撃の光景や、ギャラクティカと出会う前のペガサスでの出来事、リー・アダマ指揮下のペガサスが遭遇した謎のサイロン艦、さらには40年前のサイロン戦争における若きビル・アダマの活躍などが描かれていく。つまり複数の時期の物語がフラッシュバックで次々と紹介されるわけだが、ストーリーテリングが巧みなので観ていて混乱するようなことはない。ビル・アダマの戦闘シーンなどではオリジナル・シリーズ版のサイロン兵士なんかも登場するので、オールド・ファンの人は嬉しいんじゃないでしょうか。 予算が多かったのかSFXも見事で、特にサイロンのバトルスター基地に対する襲撃のシーンは圧倒的。下手なSF映画よりもずっと出来はいいよ。またミシェル・フ
映画評 「Futurama: Bender's Big Score」鑑賞 来た!観た!「フューチャラマ」の復活DVDムービー第1弾。ここに辿り着くまでは長い年月だったなあ。トレーラーがショボかったのと、冒頭で下ネタとグロがちょっと多かったことからあまり期待してなかったんだけど、なんのなんの見事に期待以上の出来を誇る作品になっていた。 話の舞台となるのはTVシリーズが終わってから2年後の3007年。プラネット・エクスプレスの面々はヌーディスト・ビーチで出会ったエイリアンたちによってオンライン詐欺にあい、事務所の資産をすべて奪われたほか、ベンダーはエイリアンの作ったウィルスをダウンロードしたことで彼らの言いなりになってしまう。さらにエイリアンたちはフライの尻になぜかあったイレズミに、時間旅行を可能にするコードが隠されていることをつきとめ、このコードを使ってベンダーを過去に送り、歴史上の財宝をごっそり奪い取らせてくるのだった。すべての財宝(エディ・ヴァン・ヘイレンのギターとかもある)を奪ったエイリアンは、もう誰も過去に戻れないようにフライを抹殺しようとするが、間一髪のところでフライはコードを使って2000年に逃亡する。そこでエイリアンたちはベンダーを過去に送り、彼
映画評 「Gayniggers from Outer Space」鑑賞 そのあまりにもな題名からカルト人気を博しているデンマークの短編映画「Gayniggers from Outer Space」をYouTubeでチマチマと観る。 内容はタイトルそのまんま。男だけが住むアヌス星からやってきたゲイの黒人の宇宙人たちが、宇宙を旅行中に地球を発見。そこの女性の存在に驚愕した彼らは、地上に降り立って光線銃で女性たちを抹殺していき、地球の男性たちを解放するのだった…。というだけの話。一見ブラクスプロイテーション的な内容ながら、ロシアや中国、ドイツなんかも一緒にコケにしていたりする。チープながら味のある特殊効果や、内容はバカみたいなのに変にダウナー系の音楽が鳴り響いていてまったりしてるところなんかは、ジョン・カーペンターの「ダーク・スター」を彷彿させる。 何の意図を持って作ったのかがまるで分からないけど、それなりに良く出来た作品。デンマーク映画侮りがたし。
映画評 「イカとクジラ」鑑賞 やっと観た。 いろんなところでこれをコメディと呼んでいるのを目にするけど、コメディじゃねえよなあ。どうにもならない陰気な状況において、いかに人々が「痛い」行動をとるかをきちんと描ききっているだけだろう。ジェフ・ダニエルズ演じる父親なんて実にリアリスティックにサイテーだし、じゃあ逆にローラ・リニーの母親はちゃんとしてるかというとそうでもなくて、次々に若い男とつきあってるばかりだし。脇役ながらウィリアム・ボールドウィン演じるテニスのコーチも実にサイテーでいい感じ。ローラ・リニーは薄幸な役柄が本当に身に付いてきましたね。あの甘ったるいラブコメ「ラブ・アクチュアリー」でも唯一恋が成就できないキャラだったのは伊達じゃないな。 両親に翻弄される2人の子供たちの振る舞いも実にリアル。離婚とまではいかなくても、親のケンカを2階で聞いてたような経験は誰にでもあるよね。高校でピンク・フロイドとかにハマって、「ブルー・ベルベット」を親の前で観て気まずい思いをするなんてとても他人事とは思えない。崩壊家庭において気が変になっていく弟の描写も見事。痛々しいけど。 気になった点を挙げるとすれば、ハンドカメラによる揺
映画評 「偉大なるアンバーソン家の人々」鑑賞 たまには古典も観るべえ、ということでオーソン・ウェルズの監督第2作「偉大なるアンバーソン家の人々」を鑑賞。 名家を舞台にした愛憎うずまく物語ということで昼メロ的な展開が多分にあるものの、一家の栄光と没落がドラマチックに描かれていてそれなりに面白い。惜しむらくは主人公のドラ息子があまりにも愚直すぎて、「市民ケーン」にあったような幅広い性格描写ができていないことか。それでも長廻しや引きのドリーショット、影を多用したライティングといった撮影のテクニックが1942年の段階で確立され、物語を語るにおいてきちんと使われているところなんかは興味深い。というか最近の映画における過度なBGMやカメラワークなんて殆どの場合ストーリーからむしろ観客の興味をそらす結果になっていると思うんだけどね。話の内容をしっかり伝えるにはむしろ映像が白黒のほうがいいんじゃないかと、ボグダノヴィッチ的なことも考えてしまうんだが。 ウェルズ作品なら次は「黒い罠」を観てみたいところです。
映画評 「ローズ・イン・タイドランド」鑑賞 テリー・ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」をやっと鑑賞。俺まだ「ブラザーズ・グリム」はまだ観てなかったりする。昔はギリアムの新作が出れば劇場に真っ先に足を運んだものだがのう。いや、別に嫌いになったとかじゃなくて、他に観る映画がいっぱいありすぎて時間がないだけの話ですけどね。 んでこの「ローズ・イン・タイドランド」。結論から言うと明らかな失敗作。でもギリアムの失敗作だからただの失敗作とは1つも2つも違うけどね。雰囲気としては「バンデットQ」と「ラスベガスをやっつけろ」を足して2で割ったような感じかな。「バンデットQ」はあくまでもファンタジーの世界の話だったけど、「タイドランド」は舞台がずっと現実世界なので話に救いがないのが痛々しい。最初から最後まで変人ばかりが出てきて気色悪いことをやってる映画というのは全然ありだとは思いますが、ギリアムにはもうちょっと別のものを期待してたんだけどね。なんかむしろティム・バートンや最初期のデビッド・リンチが作りそうな作品だったな。俺にとってギリアム作品といえば「未来世紀ブラジル」のような毒々しさとファンタジーが絶妙にブレンドされたものを期待してしまう
映画評 「NOTHING ナッシング」鑑賞 ヴィンチェンゾ・ナタリの2003年の映画「NOTHING ナッシング」を観た。まあ可も不可もなし。 同監督の「CUBE」や「カンパニー・マン」とかに比べると拍子抜けするくらいに脳天気な作品ではある。「何もないところ」を舞台にした物語なんだけど、話のネタになるようなものが本当に何もないので、90分の作品なのに冗長的に感じられるかも。コンセプトはむしろ短編アニメーションに向いていると思うんだけど、それを実写の長尺で見せられてもねえ。悪い作品ではないですが。 ちなみに撮影場所はトロント。舞台となる家が建っている場所の比較的近所に俺は住んでいた。
映画評 「ATROCITY EXHIBITION」鑑賞 J.G.バラードの小説「残虐行為展覧会」を映像化した作品「ATROCITY EXHIBITION」を観た。監督はジョナサン・ワイス…って誰だ。音楽はジム・フィータスことJ.G.サールウェルが担当。 俺が原作を読んだのはもう10年以上前だから、内容はまるで覚えていない。そもそもプロットらしきものが存在しない実験小説なんだけどね。映画版でも確固としたストーリーはなくて、失踪した科学者とその上司、およびフェム・ファタール的な女性を軸に、いかにもバラード的な車の衝突、コンクリートの構造物、整形手術の光景、戦争の犠牲者、そして無機質なセックスなどの映像が重ねられていく。もちろんロナルド・レーガンもちょっと顔を出してます。 とにかくこれらの映像の使い方が非常に素晴らしいんですよ。一歩間違えればアート気取りのスノビッシュな作品になりかねなかったはずだが、印象的な風景やストック映像を巧みに混ぜ合わせ、独特な雰囲気をもった音楽をのせることで低予算の映像作品とは思えない出来になっている。観ていてものすごく不穏な気分になるんだけど、それでも目を離すことができない映像美だとでも表現すればいいのかな。あと原作に
映画評 「NEW ROSE HOTEL」鑑賞 クリストファー・ウォーケンとウィレム・デフォーという2大個性派俳優を主人公に、ウィリアム・ギブソンの短編小説をアベル・フェラーラが映画化した「NEW ROSE HOTEL」を鑑賞。他にもアーシア・アルジェントや(なぜか)天野喜孝が出演してるほか、坂本龍一やジョン・ルーリーなどもチョイ役で出てる。なぜこんなキャストが揃った映画が日本未公開なのかはよく分かりません。IMDBをはじめいろんなところで酷評されてる作品だけど、個人的にはかなり面白かった。 2つの巨大企業がしのぎを削る近未来、天野喜孝演じる天才科学者をライバル企業から引き抜くため、ウォーケンとデフォーはアーシア・アルジェントの色仕掛けを使うことにするが…というのが話のプロット。ギブソンの小説ってあの体言止めだらけの文体が苦手で「ニューロマンサー」しか読んだことないんだけど、全編モノローグである(らしい)原作にちゃんとセリフをつけ、チープなSFXなどを使わずに低予算ながらもエキゾチックな(舞台は日本)雰囲気を醸し出してるのは巧い。さすがに終盤の20分ちかいフラッシュバックは長すぎると思うが、深夜に酒でも飲みながら観るには格好の映画か
映画評 「SUPERMAN DOOMSDAY」鑑賞 観たぞ。キャラクターデザインと声優がアレだったので、ダメかと思って観てたら結構面白かった。以前にも書いたように「スーパーマンの死」のストーリーラインはドゥームズデイとの戦いよりもその後の復活劇のほうが面白いわけだが、このアニメ版でも「SUPERMAN DOOMSDAY」と名乗っておきながら実はドゥームズディが刺身のツマのような扱いであり、その後の展開に重点を置いているところが製作陣よく分かってらっしゃる、といった感じ。PG13で内容が暗めになっているのは賛否両論あるだろうが、テレビシリーズ版との差別化という意味では成功してるかと。 不満としては冒頭にも挙げたように、スーパーマンの顔のデザインがなんかヤダ。アメリカでもいろいろ文句言われてるけど、あの頬の線は余計だよな。ヤンキースの松井みたいだ。あとルーサーも「ジャスティス・リーグ」のほうが良かったかと。声優はロイス役のアン・ヘッシュがキャラクターにあまり合ってない。日本の才能なきタレントと違ってハリウッドの役者が吹替をやることにそんなに異議はありませんが、アン・ヘッシュってのは微妙だな。あとペリー・ホワイトがなんかイヤな編集長になってる
映画評 「注目すべき人々との出会い」鑑賞 ロシアの神秘思想家グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を鑑賞。グルジェフなんて学生時代にちょっとかじったくらいで著作も思想も殆ど知らないんだが、とりあえず観てみた。 どこぞの宗教団体の映画みたいな「うちの師匠はこんな偉いんだぞ」的な描写はまるでなく、啓蒙を求めて謎の「サルムング教団」を探し求めるグルジェフの半生が淡々と描かれている。むしろロードムービーに雰囲気は近いかな。逆に内容があまりにも地味すぎて、グルジェフがなぜ教団を求め、教団から何を学んだのかといったことには殆ど触れてないため、この映画を観てもグルジェフの思想はよく分からなかったりする。 アフガニスタンで撮影されたという映像はなかなかエキゾチックで興味深い。セットもそこそこ凝ってるし、テレンス・スタンプが出てたりするからそれなりに製作費はかかってるみたいだ。残念なのはDVDの画質がものすごく悪いこと。粗悪なテレシネをしたVHSマスターからそのまま起こしたんだろうけど、字幕が映像に焼き付いてるDVDって初めてみたぞ。 なお終盤における舞踏(ムーヴメンツ)のシーンは短いながらもなかなか圧倒的。これだけでも観る価値のある
映画評 「NAPOLEON DYNAMITE」鑑賞 あまりにも非道くてここには名を出すことも憚られる邦題を持った映画「NAPOLEON DYNAMITE」を鑑賞。やはりダメ男が主人公の映画は他人事とは思えんなあ。 まずあのユルさが素晴らしい。近所のビデオ屋で安売りされてた20年前の無名映画をVHSで観ているような、80年代フレーバーに溢れたあの感覚は何なんだろう。カッコ悪い主人公に感情移入させつつも、変に心の葛藤とかを描いてウェットな内容にせず、絶妙な距離をおいてキャラクターを眺めているところが巧いな。主人公や仲間たちだけでなく、学校の人気者たちも結局はみんなチープな田舎者だというのが異様に斬新でもある。去年青森に行ったときも思ったんだけど、車がないとどこにも行けない土地に住む高校生の青春というのはいろいろ面白い題材になるんじゃないのかな。 あの邦題のために日本ではイロモノ扱いされてる作品だけど(俺も同僚に見せたら笑われた)低予算ながらも優れた作品なので多くの人に観てもらいたいもんです。ちなみにアメリカでは人気が高じて今度TVゲーム化されたらしいぞ。何だそりゃ。
映画評 「ストーリーテリング」鑑賞 トッド・ソロンズの「ストーリーテリング」を鑑賞。冒頭からセルマ・ブレアーのおっぱいが拝めてラッキー、といった感じ。もっと豊満なイメージを俺は勝手に抱いてましたが。「ダーティ・シェイム」のせいかな。 まあ確かに観ててかなりシンドイところのある作品ではあった。2部構成になってて、第1部は大学における理想と現実の冷酷な衝突という内容が「アートスクール・コンフィデンシャル」に通じるものがあるな。現実をもとにした小説なのにフィクションとしてしか見なされない、というポイントはなかなか興味深い。 そしてポール・ジアマッティがドキュメンタリー作家を演じる第2部は、こないだの「AMERICAN MOVIE」へのアンチテーゼとして作られたという話を聞いたんだが、あまりそれらしきメッセージは感じられなかったかな。マーク・ボーチャートの相棒を出演させてるあたり、かなり意図的なものがあるんだろうけど。撮影の対象をドキュメンタリー内でバカにすんな、ってことですかね。 キツい内容を絶妙なブラック・ユーモアで包んでいた「ハピネス」に比べると直球勝負に出過ぎているような感があるけど、希少価値を持った作品であることは間違
映画評 「AMERICAN MOVIE」鑑賞 「素晴らしき映画野郎たち」こと「AMERICAN MOVIE」をやっと鑑賞。ウィスコンシンに住むアマチュア映画監督のマーク・ボーチャートが、何年もの時間と労力をかけてホラー映画を作ろうとする姿を追ったドキュメンタリー。 田舎者まるだしの訛りでしゃべるボーチャートが、誰も映画なんて観ないような小さな町で予算とスタッフをかき集め、何度も障害に出くわしながらも自分なりに目標を持って映画を作ろうとする姿は、最初のころはとても微笑ましい光景に見えるのですよ。それがいつまでたっても本人の変なこだわりによって製作が進まず、幼い子供を3人も抱えてるのに老齢の叔父に予算を無心し、母親や恋人にカメラを回してもらいつつも一向に作品が完成に近づかないのを見てると、自分のはかない夢のために周囲の人を犠牲にするのはどこまで許せることなのか、そもそもボーチャートは熱意がカラ回りしてる「痛い人」なんじゃないかという気がしてしまう。彼がようやく完成させた映画「THE COVEN」を観てみたけど、雰囲気の醸し出し方とか撮影テクニックとかはそこそこの出来になっているのに、ボーチャートの性格そのまんまな偉ぶった台詞が延々と続
映画評 「Harold & Kumar Go to White Castle」鑑賞 数年前にアメリカで公開されてカルト的人気を博したストーナー(ラリパッパ)・コメディ「Harold & Kumar Go to White Castle」を観た。 これはニュージャージーに住む韓国系のハロルドとインド系のクマーが、マリファナをキメてハイになったあと「腹がへったぜ!」ということでアメリカ最古のファストフード・チェーン「ホワイト・キャッスル」まで遠路はるばる車をとばすものの、道中でさまざまなトラブルに見舞われ…といった内容の作品。日本でいえば船橋に住む在日韓国人とイラン人がドムドムハンバーガーを食べに出かける、といった感じになるのかな。 主人公ふたりが白人のにーちゃんだったらフォックス・サーチライトあたりが好きそうな人畜無害のコメディになっていただろうけど、黒人やヒスパニックといったメジャーなマイノリティ(なんだそりゃ)ですらないコンビを主人公にしたことで、人種差別のテーマがかなり前面に出されているのがポイント。銀行員のハロルドは上司に「アジア人は数字が好きだろ」といって大量の仕事をおしつけられ、クマーは「(シンプソンズの)アプー」呼ばわりされながら、白人のゴロツキどもに一晩
映画評 「HOTEL CHEVALIER」鑑賞 アメリカで今週末公開されるウェス・アンダーソンの「The Darjeeling Limited」のプロローグ的短編映画「ホテル・シェヴァリエ」がiTunesストアで公開されてた。 プロローグといっても物語の導入の手助けになるような内容ではなく、パリのホテルを舞台に男女(ジェイソン・シュワルツマンとナタリー・ポートマン)の語り合いが描かれてるだけ。この前にもう一つプロローグが必要じゃないの?と思ってしまう。ポートマンのずいぶんヒワイな姿が拝めますんで、そっちのほうが価値がある(?)短編かもしれない。 ちなみにウェス・アンダーソンといえば「オニオン」の記事で「彼の作品はかなり型にはまっている」というのを読んだばかりなんだけど、この作品も無表情の会話&凝ったセット&60年代のブリティッシュ・ミュージックとまあアンダーソンらしさが満載の内容になっていた。まああの監督の場合それがいいんだけどね。
映画評 「捜索者」鑑賞 ジョン・フォード&ジョン・ウェインのコンビによる「捜索者」を鑑賞。ジョン・ウェインってあんまり好きじゃないんだけど、この映画についてははいい評判をよく目にしていたので。 最初は頼れるタフガイだったウェインが、コマンチェ族への憎悪のあまり、彼らに「汚された」自分の姪を殺そうとするあたりから、観る人に「もしかしていちばんヤバいのはインディアンでなくウェインじゃないか?」と考えさせる展開は見事。ただし重厚なテーマが根底にあるだけに、ところどころに出てくるコメディ・タッチの描写がえらく気になってしまうんだよな。インディアンのカミさんとか、結婚式での殴り合いとかを省いていればもっと傑作になったと思うんだが、どうよ?やはり50年代の活劇大作ってこういう娯楽的要素を含まないといけなかったのかしらん。フォード作品の最高傑作の1つとして語られる映画だけど、俺は「駅馬車」とか「怒りの葡萄」のほうがずっと好きだな。 それにしてもこの作品のヴェラ・マイルズといい、「静かなる男」のモーリーン・オハラといい、フォード映画に出てくる気の強い女性たちは本当に魅力的ですね。芯は強いんだけどアバズレじゃなくて、ワガママそ
映画評 「HOT FUZZ」鑑賞 アマゾンに注文してから1ヶ月半、やっとDVDが到着。 いやあ評判通りの大傑作。コメディとして秀逸なのはもちろんなんだが、それ以上にアクション映画として異様に出来が良かったりする。ほのぼのとしたコメディかな?と思わせておいて、後半は怒濤の「ショーン・オブ・ザ・デッド」的展開になっていくのが素晴らしい。いろんな展開が凝縮された内容ながら、ジェリー・ブラッカイマー的編集とはまた違う、素早いカッティングを効果的に使った編集によって観る人を引き込んでいく。あの編集テクニックに俺はイギリス映画の底力を感じましたよ。話の合間に挿入される細かいギャグにも感心。 「ショーン」だと典型的なダメ男を演じてたサイモン・ペッグが、今回は有能で真面目な警察官を立派に演じているほか、マーティン・フリーマンやスティーブ・クーガン、スティーブ・マーチャントといった俺好みの役者たちがちょろっと出演しているのもナイス。日本ではなぜか公開未定らしいけど、どうしてでしょうね。ただ英語の言葉遊び的なジョークが多いんで、そこらへんのニュアンスを伝えるのは難しいかもしれない。「Decaffeinated?」とか「Judge Judy
映画評 「小人の饗宴」鑑賞 ヴェルナー・ヘルツォークの出世作(だよな?)「小人の饗宴」を鑑賞。 板東英二みたいな顔した「縦方向に挑戦された人々」が収容所を乗っ取り、ケタケタ笑いながら乱痴気騒ぎをひたすら繰り広げる映画、というのは文章だとひどくアートでアバンギャルドな作品に思えるかもしれないが、実際に観てみるとあんまり面白くない、というよりも正直つまらない映画だった。だって本当に小人たちがチョコマカ騒いでるだけなんだもん。小人だからってお互いに結束力が強いわけじゃなく、盲目の小人をよってたかってイジめたりすんのはあまりにも子供じみていて面白かったけど。 このときの経験がいずれ「アギーレ」や「フィッツカラルド」という傑作を生んだんだな、ということ以外はあんまり印象に残らない作品であった。
映画評 「死霊のはらわた」鑑賞 まだみてなかったので鑑賞。「キャプテン・スーパーマーケット」は先に観てるんだけどね。 徹底的な低予算映画ながら、カメラワークが非常に巧妙なので最初の30分くらいは非常に怖い。最近のCGバリバリのホラー映画なんかよりもずっと怖い雰囲気を醸し出しているんじゃないか。ただし怪物が登場してくるあたりになると、いかんせんメイクがチャチなのでちょっと滑稽な感じがしてしまうかも。まあこのホラーとコメディの微妙なバランスが、「ダークマン」とかにも通じるサム・ライミのセンスなわけですが。あとこの頃のアッシュ(ブルース・キャンベル)って意外と弱々しかったんですね。2度も軽そうな本棚の下敷きになって苦しんでやんの。 ちなみにこうしたゾンビ映画を観て思うのは、主人公って最後には銃(特にショットガン)に頼るんだよね。イギリスが舞台の「ショーン・オブ・ザ・デッド」もそうだったけど、銃規制の厳しい日本だとゾンビに襲われても銃で対抗はできんよなあ。銃の出てこないゾンビ映画というのは作ってみる価値があると思うんですが、もしかしたら既にあるんでしょうか。
映画評 「ガタカ」鑑賞 今更ながら「ガタカ」を初見。期待してたほどではなかったかな。 「知的な近未来SF」というくくりで、どうしてもこないだ観た「トゥモロー・ワールド」と比較してしまうんだが、あちらは世界の状況や主人公の過去とかが非常に巧妙かつささやかに説明されていたのに対し、こちらはなんか全体的に説明くさい感じがしてしまう。SFとしてもフーダニットとしても中途半端なところがあって、「頑張っているんだけど目標に届いていない作品」という気がするのは、やはり「トゥモロー・ワールド」のような傑作を先に観てしまったからかなあ。 それと別人になり変わるのなら、何よりもまず顔を変えるべきじゃないのか、という考えは作品のテーマに相反してるのか?ジュード・ロウになり変わるという点だったら「リプリー」のマット・デイモンのほうがずっと積極的だったぞ。主人公がクールすぎて、星にいきたいという熱意が感じられないのもどうかと。悪い作品ではないんだが、頭でっかちになりすぎてるんだよな。 ちなみにイーサン・ホークやユマ・サーマンといった美形キャラを使ってハイソな雰囲気をふりまいておりますが、アーネスト・ボーグナインやトニー・シャローブ、エ
映画評 「DOCTOR STRANGE」鑑賞 マーヴェル・コミックスのオリジナルDVDムービー第4弾「DOCTOR STRANGE」を鑑賞。「HOT FUZZ」よりも後に注文したのに先に届いた。今までの3作品の出来がどれも非道いものだったので、まるっきり期待しないでみたけど、やはり内容には失望させられた。 アニメの出来が悪いのは今に始まったことじゃないんで何も言わん。ただストーリーに関しては、前作の「IRON MAN」 のときも感じたことだけど、主人公のオリジン(ヒーローになるまでの話)を長々と描いているために、主人公が終盤間際まで自分のパワーを使いこなせずにオロオロしてるのは観てて何かまどろっこしいんだよな。アイアンマンやドクター・ストレンジをよく知らない人向けの配慮だろうけど、そもそもそんな人はこうした作品を観ないだろうに。俺らみたいなオールドファンは、自らのパワーを最大限に駆使して悪と戦うヒーローの姿が観たいのにさ。その一方でドクター・ストレンジの従者ウォングの設定が原作と大きく異なっていて、ファンを裏切るような内容になっているのにはガッカリ。むしろスティーブ・ディッコ時代の作風に忠実に、ヒッピーっぽいサイケさを出したほうが
映画評 「Little Dieter Needs to Fly」鑑賞 こないだやっと劇場公開されたヴェルナー・ヘルツォークの映画「RESCUE DAWN」のもととなった、ヘルツォーク自身によるドキュメンタリー「Little Dieter Needs to Fly」を鑑賞。 これはディーター・デングラーというドイツ生まれのアメリカ人に関する作品で、子供の頃に目撃した飛行機の素晴らしさにとりつかれたディーターは18歳のときに単身アメリカへと渡り、夜学で勉強しながら大学を出て空軍に入り、念願のパイロットとなる。しかし折しもアメリカはベトナム戦争に突入しており、ディーターも戦地へ向かわされて戦闘機に乗るが、ベトナム軍に撃墜されて捕虜になってしまう。そこで地獄のような拷問を半年にわたって受け続けた彼は、ある日ほかの捕虜たちと脱走を決行する…。というのがおおまかなプロット。 いちおう戦争ドキュメンタリーなんだけど、むしろ空を飛ぶという夢にとりつかれたディーターの姿に話の焦点はあてられており、この1つの夢に向かって突き進んでいく男の姿というのは「アギーレ」や「フィッツカラルド」に似たところがなくもない。もっともディーター本人は温厚にベトナム人たちとも会話するような老人
映画評 「麦の穂をゆらす風」鑑賞 ケン・ローチの「麦の穂をゆらす風」を鑑賞。時代設定とテーマ的にはローチの「大地と自由」に近いものがあるが、実質的にはニール・ジョーダンの「マイケル・コリンズ」の裏話的作品といった感じか。アイルランドの歴史に詳しくない人は「マイケル・コリンズ」を先に観といた方が背景を把握しやすいかもしれない。 1916年のイースター蜂起から1922年の内戦にいたるまでのアイルランドの歴史は波乱の連続なので、何をどう映画化したって面白くなるわけだが、この作品では田舎の若者たちの観点からとらえた独立戦争の姿がうまく描かれていて秀逸。ときどきプロパガンダっぽくなるけど、まあそれはローチ作品のお約束ということで。あとローチ作品にしては集団シーンとか先頭シーンがずいぶん凝ってる(金がかかってる)んじゃないかな。気になったのは主人公の扱いで、ノンポリの医学生が義勇軍に加わって殺人を平気で行うようになり、しまいには兄をもしのぐラジカリストになるまでの描写がえらく希薄ではないかと。 あと当時アイルランドがイギリスと結んだ協定が正しかったとは口が裂けても言わないが、あれがそのまま国のバックボーンとなって今日まで続いている