映画評

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「ザ・バットマン」鑑賞
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「ザ・バットマン」鑑賞

感想をざっと。ネタバレ注意。 * マット・リーヴスが監督した「猿の惑星: 新世紀」は個人的にSFアクションの教科書的作品だと考えてまして、猿の側にも人間の側にも良い奴と悪い奴がいることを紹介したうえで、両側の衝突が不可避となってテンションが高まっていくさまを丁寧に描き、クライマックスの後に題名通り夜明け(DAWN)を迎えるところが本当に素晴らしい出来だったのです。 * それでもって今回の作品だが、ほぼ3時間という長尺でありながら同様のテンションの高まりを築くことはできず、スーパーヒーロー作品としてはカタルシスを与えてくれる内容になっていなかったと思う。 * いちばん引っかかったのはバットマンの圧倒的な未熟さで、犯罪と戦うにあたって最後までリドラーに翻弄されて彼の計画を防ぐことができない。格闘においてもやたら脇の開いたパンチを繰り出して、防弾スーツに頼って銃弾をモロにくらってぶっ倒れる次第。事件の捜査も警察にかなり頼ってるなど、まだ経験不足で衝動的という設定とはいえ、「さすがバットマン!」と思わせる展開が皆無だった。 * このように肝心のクライマックスが欠けたことで、話としては
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「AFTER YANG」鑑賞
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「AFTER YANG」鑑賞

デビュー作「Columbus」が素晴らしかったコゴナダ監督の長編2作目。アメリカでは劇場公開とあわせてSHOWTIMEで配信という変則的なリリース形態で、仕方なしにゴニョゴニョしてSHOWTIMEに加入することに。以下はネタバレ注意。 舞台は未来。テクノと呼ばれるヒューマノイドが普通に家庭で暮らす時代。ジェイクとキラの夫妻は、中国から養子に迎えた娘のミカの兄代わりとして、中国文化に詳しい「ほぼ新品」のテクノであるヤンを家族の一員として迎えていた。しかしある日ヤンが作動しなくなり、ジェイクは彼を元に戻そうと奮闘することになる。元の売り場でヤンを直せないことを知った彼は非正規の修理人に頼み込むが、そこで彼はヤンが今までの生活のメモリーバンクを備えていることを知る。そのメモリーバンクを開いたジェイクは、ヤンの意外な記録を知るのだった…というあらすじ。 原作となった短編小説があるそうで、内容は「Columbus」に比べると意外なくらいにSFしているのだが、派手なアクションなどがあるわけではなく、家族の一員の喪失とその思い出を中心にしたしんみりとした話になっている。家族に迎えられたヒューマノ
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「OLD HENRY」鑑賞
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「OLD HENRY」鑑賞

前知識なしで観た、ティム・ブレイク・ネルソン主演のウェスタン。以下はネタバレ注意。 舞台は1905年のオクラホマ。人里から遠く離れた荒地に息子と住む農民のヘンリーは、瀕死の男が倒れているのを発見し、さらにその近くに大金が入った袋があるのを見つけ、男と袋を家に持ち帰る。男を拘束しつつも息子とともに介抱するヘンリーだったが、彼を探して保安官と称する三人の男が彼のもとにやってくる。男のことは知らないとヘンリーは答えるものの、彼を疑う男たちによってヘンリーの家は襲撃される。こうしてヘンリーは銃を手に取って戦うことになるのだった…というあらすじ。 ヘンリーが謎めいた過去を持っていることは最初から示唆されていて、まあいわゆる「銃を捨てた老ガンマン」っぽいな、というのは大体察しがつく。妻が亡くなり子供とともに細々と暮らしているものの、やがてまた銃を持って戦うことになる…という展開はイーストウッドの「許されざる者」まんまでクリーシェじみているとは思うものの、そういう話の展開って個人的には嫌いではないですよ。そして肝心のヘンリーの過去についてはちょっと意外な事実が明かされ、設定の巧みさには関心してし
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「TITANE」鑑賞
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「TITANE」鑑賞

昨年のカンヌでパルムドールとったそうな。邦題「TITANE/チタン」で4月公開。「RAW」のジュリア・デュクルノー監督作品。以降はネタバレ注意。 プロットはあってないようなものだけど、子供の頃に事故によって側頭部にチタンのプレートを埋め込まれたアレクシアは、大人になってショウガールとして人気を博していたが、その一方では近寄ってきた男性を刺し殺す連続殺人鬼でもあった。ある晩、目の前に現れた車に乗り込んだ彼女はその車と性行為をして、子供を身籠ることになる。やがて彼女は指名手配されることになり、逃避行中に彼女は髪を切って性別を偽り、長らく行方不明になっていた男性のふりをする。そしてその男性の父親である消防団長は何も言わずにアレクシアを受け入れ、消防署における彼女(彼)の奇妙な親子生活が始まるのだった…というあらすじ。 たぶんあらすじ読んでも意味わからないと思うし、実際に映画を観てもプロットが把握できないので、あまり深く考えないほうが良いでしょう。車とセックスという要素はクローネンバーグの「クラッシュ」を必然的に連想させるもので、腹の大きくなったアレクシアが乳首から母乳の代わりにモーターオ
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「KIMI」鑑賞
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「KIMI」鑑賞

引退発言は遠い昔のスティーブン・ソダーバーグによる、「NO SUDDEN MOVE」に続くHBO MAXオリジナル映画。 まんまアマゾンの「アレクサ」である架空のスマートスピーカー「KIMI」をテーマにしたもので、KIMIはAIのアルゴリズムとかで人の音声による命令を認識するのではなく、実際に人間が音声を(あとから)聞いて、適切な修正を加えることでより正確さを高めている、スタートアップベンチャーの主力製品ということらしい。当然プライバシーもへったくれもないのだけど、顧客は満足しているそうな。 主人公のアンジェラはKIMIに修正を施す敏腕プログラマーだが、女性が襲われている現場のものと思わしき音声をKIMIの録音データから聞いてしまう。同僚から機器の識別コードを入手した彼女は被害者の身元を特定し、このことを会社に報告しようとする。しかし警察と関わることを嫌った会社の社長により、逆にアンジェラの身が狙われることに…というあらすじ。 アンジェラはある理由により広場恐怖症(外出恐怖症)になっており、人とのやりとりはできるものの自分の部屋(すんごくデカい)からは出ることができないという設定
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「ナイトメア・アリー」鑑賞
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「ナイトメア・アリー」鑑賞

日本では3月25日公開。これアメリカではiTunesのようなTVODで出る前に、HULUおよびHBO MAXのようなSVODで配信されるという実に珍しい提供ウィンドウになってるのは何故だろう?すいませんが以降はガッチリネタバレするので注意。 全く前知識を持たずに観たのだが、これギレルモ・デルトロのオリジナル脚本ではなくて1946年の小説が原作で、1947年にいっかい映画化されてるのか。ホルマリン漬けの胎児などが飾られた、旅する見世物小屋の物語、というのはいかにもデルトロが好きそうな題材だが、いわゆるフリークス的な人たちは出てこないで、せいぜい小人のパフォーマーくらい。前作「シェイプ・オブ・ウォーター」で見せ物ではないにせよ半魚人が出てきたのに比べて、ちょっと控えめにしてるのかなと思ったよ。 そして話のキモとなるのは降霊術というか読心術の見せ物だが、これも勝手に心霊ホラーになるのかな…と思ってたら全く違って、トリックを用いて上客を騙すイカサマ男が主人公の物語であった。だから内容はホラーでなくサスペンスになるのかな。デルトロにしてはずいぶん地に足のついた設定だな、と思ったらimdb情報
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「THE FALLOUT」鑑賞
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「THE FALLOUT」鑑賞

HBO MAXのオリジナルムービー。SXSWに出品されたものを買い付けたらしい。 アメリカ名物となった学校の銃撃事件をテーマにしたもので、高校生のヴァダは学校のトイレにいたところ、何者かが学校で銃を乱射するのを耳にする。同じトイレにいたインフルエンサー女子のミア、そして逃げ込んできた男子生徒のクイントンたちと一緒に個室に逃げ込み、彼女たちは難を逃れるものの、クイントンの兄を含む多くの生徒たちが犠牲になってしまっていた。そしてヴァダたちは事件のトラウマを抱えながらも日常生活に戻ろうとする…というあらすじ。 学校の銃撃事件を扱った映画といえばガス・ヴァン・サントの「エレファント」などがあるが、あれが事件に至るまでの過程を描いていたのに対し、こちらは銃撃事件が冒頭で(画面外で)起き、題名通りその後遺症(fallout)を描いたものになっている。 いちおうヴァダはセラピストのもとに通ったり、破裂音に対して過敏になったりしているものの、事件に対して真正面から向き合うようなことはなく、ミアの家に遊びに行ったりクイントンと遊んだりしてまったり過ごし、家族も気を遣ってくれるもののやっとこさ学校に
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「WHAT DO WE SEE WHEN WE LOOK AT THE SKY?」鑑賞
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「WHAT DO WE SEE WHEN WE LOOK AT THE SKY?」鑑賞

良い評判を目にしていたジョージア(アメリカじゃないよ)の映画。 舞台はジョージアの街(クタイシ?)。ワールドカップの放送に人々が期待するなか、ギオルギとリサという男女が街中で出会う。1日のうちに何度か出会ったふたりは、次の日にカフェで会いましょうと約束をして別れる。しかしその晩、ふたりは悪い呪いをかけられ、外見をまったく違う人のものにされてしまう。それでも約束通りカフェに向かうふたりだったが、お互いの外見が異なっているために気づかず再会はできなかった。さらに呪いの影響で職を変えることになったふたりは、ごく近くの場所で働くことになるものの、それでもお互いの正体には気づかず…というあらすじ。 あらすじだと災厄がふりかかってきた恋人の物語のように聞こえるが、全くそんな内容ではなくて、外見が変わった(異なる役者が演じている)ギオルギとリサがそのまま普通に暮らし、また接近していくさまが淡々と描かれている。呪いをかけたのは誰かとか、解くにはどうするのかといった展開は全くなし。 2時間半の長尺だが、子供たちがサッカーをして遊んでいる光景とか、野良犬がサッカー中継を観る話とかに多くの時間が割かれ
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「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」鑑賞
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「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」鑑賞

観た人はご存知のようにこれ出オチが重要な映画なので、出演者について語るとネタバレになってしまうのよな。というわけで以降は完全にネタバレがあるものとして注意してください。そして感想をざっと。 * 前作の終わり方からも想定されてたように、話のベースになってるのは原作の「ONE MORE DAY」のストーリーラインか。以前に書いたようにあれコミックは評判悪くてライターのJM・ストラジンスキー自身も不満を述べてるような代物だが、あれが映像化されてクレジットで謝辞も捧げられているストラジンスキーの心中はいかなるものだろう。尤も原作と違ってドクター・ストレンジを使うことで「オールリセット!」の過程はもっとマイルドになってたけど。 * あとはマルチバースの概念が登場することから、原作の「スパイダーバース」に負うものも大きいな。ライミ版とアメイジング版だけではなく、アニメ版「スパイダーバース」も観ておいたほうが楽しめますね。 * 個人的に、現在のアメコミ映画の(長い)トレンドはサム・ライミのスパイダーマン3部作から始まったと考えているので、あの潤沢な資産をきちんとリスペクトしたうえでリソースと
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2021年の映画トップ10

今年は去年に比べると劇場に足を運ぶ回数も多くなり、いわゆる大作映画を大きなスクリーンで観られる機会も多かった一方で、そんなに心に残った作品はなかったような…「DUNE」とか「ノー・タイム・トゥ・ダイ」とか。むしろ例年以上に(あの手この手を使って)配信で視聴したインディペンデント系の小品のほうが記憶に残るものが多かった年でした。その一方でオチどころか観たこと自体も忘れてる作品もあったりして、これ自宅で「ながら視聴」してしまう弊害かなあ。来年はもうちょっと気を引き締めて映画を観ようと思うのです。 以下は順不同。 「The Climb」 1月に観た作品は内容を忘れがちなのでこういうリストで損をするのだが、中年男ふたりのバディコメディとして楽しめる出来になっていた。 「Judas and The Black Messiah」 邦題「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」。これ日本では劇場公開しなかったんだっけ?史実をどこまで正確に描いているかは置いといても、主役のふたりのパワフルな演技が見られて満足。 「Never Rarely Sometimes Always」 邦題「17歳の
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「AZOR」鑑賞
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「AZOR」鑑賞

アルゼンチン・フランス・スイス合作の映画。いろいろ高い評価を得ているので観てみた。 舞台は1980年、軍事政権下のアルゼンチン。銀行家のイヴァンは、謎の失踪を遂げた同僚の後任として妻とともにブエノスアイレスを訪れ、国の富裕層を相手に金融の話をしていく。人や物資だけでなく競走馬までもが消え失せるこの国において、イヴァンは金持ちたちの欲と闇を目にするのだった…というあらすじ。 いちおうスリラーという立て付けだが派手なアクションがあるわけでもなく、一見きちんと管理されているような社会の裏側で蠢く人々の欲望を主人公が目にしていくという内容。主人公に紹介される運転手の名前がダンテというあたり、地獄めぐりを示唆しているのかしらん。聖職者のオッサンが敬虔なようでいちばん強欲だったりします。 右も左も分からないままブエノスアイレスにやってきたイヴァンは、失踪した同僚の残した手がかりをもとに物事の本質に迫っていくわけだが、同僚が普通の銀行員だったのに対してイヴァンはプライベート・バンカーなのでクセのある顧客の取り扱いに慣れている、という設定だったかな? スイス出身の監督アンドレアス・フォンタナは
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「Mother/Android」鑑賞
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「Mother/Android」鑑賞

クロエ・グレース・モレッツ主演の米HULUオリジナルムービー…のようだけど来月にはNETFLIXで日本でも観られるみたい。 舞台は近未来、人間そっくりのアンドロイドが開発され、召使いとして人間に奉仕している世界。しかしある日世界中を怪電波が襲い、アンドロイドたちは自我を持って人間たちを襲い始める。その直前にボーイフレンドのサムとの子供を妊娠してしまったジョージアは、臨月の身になりながらもボストンを目指してサムと危険地帯の横断を試みるのだった…というあらすじ。 人間に敵対するアンドロイド、ということでSF的な要素があるかと思いきや意外なくらいに無し。ありがちなサバイバルもので襲ってくるのはゾンビでも怪物でも宇宙人でも差し替え可能、といった内容。いちおうアンドロイドが人間の感情を学んでうんたら、という展開もあるものの大して面白くない。せめて「ターミネーター」ばりのアクションがあれば良かったのだが、悲しいかな予算のなさが顕著で顔に機械をひっつけたくらいの役者が追いかけてくる程度。 主人公が妊婦という設定もあまり活かせてなくて、せっかく安全なキャンプに一度はかくまってもらったのにサムの身
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「マトリックス レザレクションズ」鑑賞
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「マトリックス レザレクションズ」鑑賞

おれ「マトリックス(無印)」好きなのよ。社会人なりたての時にワーナーの試写で何の前知識もないまま観て、これグラント・モリソンの「THE INVISIBLES」じゃん!と勝手に興奮し、メカニックデザインがジェフ・ダロウで、ストーリーボードがマーベルでコミック描いてたスティーブ・スクロースだったりと、MCUもDCEUもライミ版スパイダーマンも無かった時代にアメコミ映画にいちばん近い映画だったんじゃないかな。続編の展開はちょっとアレでしたが。 それで今回の18年ぶりの新作、いわゆるネタが尽きたあとのリサイクル的な作品かな…と思っていたらかなり楽しめる作品だった。ラナ・ウォシャウスキーに好き勝手やらせたような内容で、リメークでもソフトリブートでもなくガチの続編として作られており、約20年前の役者が若々しかった頃の映像をふんだんに使うことも厭わない。前半は特にメタな出来で、三部作をゲームとしてカジュアルに批評し、ついでにワーナー・ブラザースにも言及する悪ノリっぷり。20年前は仮想現実というと「コンピュータープログラムの世界」というイメージだったが、最近は「フリー・ガイ」もそうだけど「ゲームの世
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「ラストナイト・イン・ソーホー」鑑賞
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「ラストナイト・イン・ソーホー」鑑賞

エドガー・ライト、次作は60年代のブリティッシュ・ホラーにオマージュを捧げた作品になる、みたいなことをずっと言っていて、まさにその通りの作品を作り上げたという感じ。前作「ベイビー・ドライバー」の元ネタがライトの監督したミント・ロワイヤルのミュージックビデオだとしたら、こっちの元ネタは「グラインドハウス」用に作ったフェイクのトレーラー「DON'T」になるのかな。 いろいろ現代的な味付けがされているとはいえ、かなり率直に「60年代ポップカルチャーにオマージュを捧げたホラー」になってるので、他に何を読み取れば良いのか…。冒頭はファッション業界を舞台にした女性同士のドロドロした物語になるのかな、と思ったら舞台が60年代に移ったことで前半は「パフォーマンス」「狙撃者」っぽいギャングスターもの、後半は「赤い影」のようなサイコサスペンスものになっていた。 役者も60年代に活躍した面々を揃えていて、相変わらず渋いテレンス・スタンプとか、これが遺作となったダイアナ・リグとか。リグは「EXTRAS」とか「ドクター・フー」に出演したときは結構老けちゃったなと思ったけど、今作では重要人物を元気に演じていて
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「FOR MADMEN ONLY」鑑賞
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「FOR MADMEN ONLY」鑑賞

個人的に興味深いドキュメンタリーを観たので、忘備録的に感想を書いておく。 インプロビゼーション・コメディ(即興コメディ)の草分けとして知られるコメディアン、デル・クローズの生涯を紹介したもので、俺もこの人については全く知らなかったのだけど、ビル・マーレイやボブ・オデンカーク、ジョン・ファブロー、アダム・マッケイ、ティナ・フェイ、エイミー・ポーラーなどといった現代のアメリカン・コメディを代表する人々の多くは彼の教えを受けて育ったのだそうな。 カンサス出身のクローズは若くして家を出て、セントルイスでマイク・ニコルズやエレイン・メイなどと一緒に即興劇団で演じるようになるが、ニコルズとメイが売れてニューヨークに移ったために、それからシカゴを経由してサンフランシスコに移る。そこの即興劇団「ザ・コミッティー」において長時間に渡る即興コメディを発明し、それを「ハロルド」と名付ける。それからシカゴの有名なセカンド・シティでジョン・ベルーシなどをコーチするものの、彼らは「サタデー・ナイト・ライブ」に引き抜かれてしまう。酒もドラッグもやってた破滅型芸人であるクローズはセカンド・シティの管理人とケンカし
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「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」鑑賞
映画評

「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」鑑賞

かなり期待しないで観に行ったつもりだが、やはりダメだったでござる。以降はネタバレ注意。 カーネイジが登場することは前作のラスト、というかヴェノムの映画が作られた時点で確定路線だったのだろうが、おれあのキャラ嫌いなのよな。元来ヴィランだったヴェノムが1990年代初頭に、当時のグリム&グリッティなコミックの流行に乗って人気が出たために「リーサル・プロテクター(劇中でも言及されてましたね)」としてのアンチヒーロー的な立場になってしまい、ヴィランとして使えなくなったので代わりに登場したのがカーネイジ。当時の流行を反映した残虐キャラで、あまり深みのあるキャラでは無かったと思うが当時のマーベルは大々的に売り出して、12パートのストーリーライン「MAXIMUM CARNAGE」とか打ち出してたけど長いだけでグデグデになってた覚えが。このバブル末期的なイベントが、数年後のマーベル倒産の予兆だった、と見なすのはそんなに間違ってないと思うのです。 んで映画の方はちょっと不思議な構造をしていて、こういうスーパーヒーローものというかアクション作品の続編って、とくにバディ要素がある場合、以下のような話の流れ
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「ZOLA」鑑賞
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「ZOLA」鑑賞

みんな大好きA24が今年配給した映画。ゾーラ・キングという女性が実際にフロリダで経験したという一連の出来事をツイッターで148連投(!)したところバズって、「ローリング・ストーン誌」の記事になって、それがこの映画の元ネタになったものらしい。 デトロイトのレストランで働いていたゾーラは、客として来ていたステファニと意気投合し、彼女に誘われてフロリダのクラブでストリッパーの仕事をして一儲けを計画する。ステファニの彼氏のデレク、および彼女の友人の「X」とともに車に乗ってフロリダに到着したゾーラだが、Xは実はステファニのポン引きであり、ストリッパーだけでなく売春の仕事をゾーラとステファニに強制してくる。最初は断ったゾーラだが、Xに脅されて仕方なしに客の待つホテルにステファニとともに向かうことに…といったあらすじ。 上記のローリングストーンの記事によるとXのモデルになった人物はのちに人身売買の容疑で逮捕されてるようで、話の展開はサスペンス的ではあるものの、映画の作りはもっと「アフター・アワーズ」みたいな夜のドタバタを描いあブラックコメディっぽいものになっている。35ミリフィルム(たぶん)で撮
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「エターナルズ」鑑賞
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「エターナルズ」鑑賞

思ったことを雑多に書いていく。以降はネタバレ注意。 * 個人的に原作コミックにあまり思い入れはない。ジャック・カービーの作品としてもキャリア的にどちらかといえば後期のもので、60年代〜70年代前半に狂ったようなペースで名作を創出していたのに比べれば少しトーンダウンした作品、という印象があるかな。 * いきなり話はずれるが、ジャック・カービーの神話というか神に対するアプローチは非常に興味深いものがあって、「ソー」は北欧神話のアスガルドの神々をSFテイストを加えて描き、それらの神々にとって代わる新しい神々としてユダヤ教の影響が色濃い「ニュー・ゴッズ」をDCで作った。そのあとインカ文明のアートの影響を受けつつ「エターナルズ」を創作した、ということになるのかな。キャリアを通じて神とは何か、を問いただした作家であった。 * 原作の「エターナルズ」の重要なキャラクターはやはり、人類を裁くために地球にやってきた巨大な創造主ことセレスティアルズだが、映画版では話をもっと人気的なスケールにするためかセレスティアルズは1〜2体しか登場せず、エターナルズにより焦点をあてた内容になっている。まあ超巨
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「THE SHOW」鑑賞
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「THE SHOW」鑑賞

自分のコミックの映画化はことごとく貶していたアラン・ムーア先生、ついに自ら脚本を書き上げたのでございますよ。以降はネタバレ注意。 ムーア作品なので舞台は当然の如くノーサンプトン。そこに潜伏しているらしいジェームスという男を探しに、フレッチャーという探偵が街へとやってくる。しかし前日にジェームスはパブの階段から落ちて死んでいた。彼が持っていたネックレスをフレッチャーは探していたのだが、ジェームスの死体には見当たらなかったことからフレッチャーはノーサンプトンに滞在して捜査を続けることにする。そして彼は街の奇妙な住人たちに次々と出会っていく…といったあらすじ。 以前に公開された「SHOW PIECES」の続編というか本編的な扱いだが、あっちを観てなくても大丈夫、というか全部観ててもストーリーが分からないっす!まあ短編でいろいろ意味不明だった点についてこちらで一定の解答が出されていて、それについては満足する結果にはなっていたが。ジャーナリストのフェイスは死んだわけではなく臨死体験をしていて、一方のジェームスは実際に死亡している、彼らの辿り着くナイトクラブは一種の地獄のようなところで、夢の中
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「SHOPLIFTERS OF THE WORLD」鑑賞
映画評

「SHOPLIFTERS OF THE WORLD」鑑賞

日本では「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」の題で12月に公開。日本の宣伝では実際にあった事件に基づいた映画であるように書かれてるところもあるが、冒頭でも「Based on true intentions」と出てきて実話とは書いてない。おそらくちょっとした事件をいろいろ脚色したものなんだろう。 舞台は1987年のコロラドはデンバー。イギリスのニューウェーブバンドのファンであるクロエは、なかでも一番好きなザ・スミスが解散したことを知って大きなショックを受ける。そんな彼女の友人で、レコード店で働くディーンはクロエのためにとその晩に地元のラジオ局に向かい、ヘビメタばかりかけてるDJに銃をつきつけてスミスの曲を流し続けるように命令する。そして友達とパーティーに出かけていたクロエはディーンのやったことを知って…というあらすじ。 ストーリーは比較的シンプルで、ラジオからスミスの曲がずっと流れるなか、クロエたちティーンの一晩の出来事が描かれる内容になっている。将来のこれからの進路に悩んだり、自分のセクシャリティに気づく若者とか、まあありがちな登場人物ばかりですかね。スミスのファンはベジタリ
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「DUNE/デューン 砂の惑星」鑑賞

俺はデビッド・リンチ版「デューン」が好きである。批評家ばかりか監督自身、さらにはホドロフスキーまでがディスってる作品だが、冒頭のお姫様が物語を語り始めるところからトトのサントラから最後のクレジットまで、唯一無二の雰囲気を持ったSF映画だと思ってるし、アラン・スミシー名義(だっけな)の延長版とかも楽しんだクチである。リンチの映像をほかの監督の作品と比べるのも野暮だと思いつつも、今回の映画化はついリンチ版と頭のなかで比べつつ観てしまったよ。リンチ版はアトレイデス公爵の歯が抜かれるシーンとか、子供の自分にはずいぶんトラウマになりましたが、今回のはそこらへんがずいぶんソフトな表現になってましたね。 そして以下はネタバレ注意…と言いたいところだが原作をかなり忠実に映像化してるので、どこがネタバレになるのか判断が難しいところである。原作に比べて違うのはダンカン・アイダホの活躍シーンが多いとか、あるキャラが女性になってるといったところくらいか。原作を読んだのはかなり前とはいえ(石森章太郎の挿絵だったころ)、次はどうなるんだろうと思いながら観たというよりも、あーここはこう撮ったのね、と確認しながら観
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「HELP」鑑賞
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「HELP」鑑賞

「キリング・イヴ」でブレークして、「フリー・ガイ」が大ヒット、そして今度は「最後の決闘裁判」に出演と絶好調のジョディ・カマーが主演したチャンネル4のTVムービー。以下はネタバレ注意。 イギリスでのCOVID-19パンデミックをテーマにしたもので、粗野な家庭の出身のサラはリバプールのケアホームで介護士として働くことになる。そこは主に老人たちが住むケアホームだったが、若年性認知症のトニーも住んでおり、サラは彼と仲良くなっていく。しかしイギリス全体にパンデミックが襲いかかり、ケアホームにおいても感染者が増えて介護士の手がまわらなくなり、サラは絶望的な状況に置かれるのだった…というあらすじ。 ロックダウン下での家族生活を扱った「Together」もそうだったが、イギリスのテレビは時事ネタを映画化するのが早いよな。これは業界全体が小さいからなのか、あるいは脚本家に劇作家が多いので、少人数の物語ならすらっと書けてしまうのだろうか(この作品の脚本家は「ワンダー 君は太陽」などいろいろ書いてるジャック・ソーン)。 この作品も三幕劇のような構成になっていて、前半はサラがケアホームでの仕事に慣れてい
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「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」鑑賞
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「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」鑑賞

題名、「死んでる時間はない」よりも「死ぬ時ではない」という意味だった。以降はネタバレ注意。 * ダニエル・クレイグ版ボンドの最終作品ということで、007映画にしては珍しく彼の今までの4作のストーリーをかなり引き継いだものになっているほか、「ドクター・ノオ」を意識したオープニング・クレジットからあの曲が流れるエンドクレジットまで、今までの007映画のオマージュが散りばめられた内容になっている。終盤の敵基地でのアクションは「2度死ぬ」か「私を愛したスパイ」、「ダイ・アナザー・デイ」あたりを連想させましたね。 * そもそも前作「スペクター」でクレイグが降板する見込みがあったわけで、「アストン・マーティンに乗ってボンドは女と去る。あとは知らね。」というあの結末に、無理して続きをつけた感がなくもない。よって今回も続けてレア・セドゥがボンドガールを演じるという異例の展開になっている。以前は作品ごとにヒロインを取り替えてもお咎めなしだったのが、映画業界的にそれはどうよ、という流れになってきていて、「ミッション・インポッシブル」もそれの辻褄あわせにやけに時間を割いていたな。まあ前作のヒロインが続
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「クライ・マッチョ」鑑賞
映画評

「クライ・マッチョ」鑑賞

HBO MAXが半額セールやってたのでまた加入した。まあ「デューン」も「マトリックス」も劇場に観に行くつもりなのであまりメリットはないのだが。クリント・イーストウッドの映画って個人的に波長が合わないところがあって、最近の「リチャード・ジュエル」とか「運び屋」は観てません。 91歳にしてイーストウッドが監督・主演を務めた作品だが、早撮りのスタイルは相変わらず健在で、特に冒頭はガンガン話が進んでいく。元ロデオの花形選手だったマイク→友人の依頼を受けて友人の息子ラフォを探しにメキシコに行く→息子の母親は裕福だがズボラで息子の居場所を知らない→マイク、すぐさま息子を見つけ出す→マイクとラフォの旅が始まる、という流れ。そもそも91歳の爺さんがそんな危なっかしい依頼を引き受けるか?と言ってはいけないのでしょう。息子の母親がマイクに色目を使ってきたりするので、劇中のイーストウッドというかマイクは60歳くらいの気分でいるのかもしれない。 ドワイト・ヨーカム演じるマイクの友人は冒頭から説明口調でメキシコ行きを依頼するし、ラフォの母親もテレノベラに出てきそうな紋切り型の金持ちメキシカン、ラフォは育った
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「MY SON」鑑賞
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「MY SON」鑑賞

地上波放送では史上最低の視聴率を叩き出した東京オリンピックに続いて、米PEACOCKが送る(って前に書いたね)オリジナル映画。クリスチャン・カリオン監督がフランスで撮った「凍える追跡(Mon Garcon)」を自分でリメークしたものだそうな。 舞台は荒凉としたスコットランドの山間部。別れた妻から、彼らの息子がキャンプ場で行方不明になったとの連絡を受けたエドモンドはひとりスコットランドに戻り、元妻や警察から現場の状況や捜査の具合などを聞く。しかしロンドンの警察本部からの謎の圧力により地元の警察の協力が得られなくなったことから、エドモンドは自分で捜査を行い息子を見つけ出そうとするのだったが…というあらすじ。 実のところサスペンスとしてはかなり凡庸なつくりで、TVシリーズの刑事ドラマのほうがもっとプロットが面白くないか?と感じてしまう。主人公が中東で石油ビジネスに関わってることが明かされて、息子の誘拐がそれに関連してるのではないかという話も出てくるものの、なんか中途半端に終わってたし。 じゃあこの作品の特徴は何かと言うと、予告編でも紹介されてるが、主人公のエドモンドを演じるジェームズ・
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